シュラ吉旅日記

定期更新型ネットゲーム「DARK KINGDOM3」のキャラクター視点日記。プレイヤーの呟きもたまにあるかモ。

バルバシア勢力圏

2008-01-19 17:10:58 | キャラクター視点
イブラシル歴689年07月



少し前にオレ達はバルバシアの領内へと入った。
軍事力を見ても国力が強い事が分かるだけに、国内はそれなりに人もいて物の流通も
盛んであろうと思っていた。

だが・・・

街には誰もいない。
人影1つ見つからぬ静寂の街。
オレは少し拍子抜けだったが、他の面子は何も言わない。
アルトやリーゼは親が過去にこの国で闘った事があるようなので、そういう話を事前
に知っているのだろう。
だが、この国に漂う異様な雰囲気は一体なんなんだろうか?
異国人のオレには今一つ理解が出来ない。



街には誰もいないバルバシア。
しかし、さすがに城内には兵士達が陣取って護りを固めていた。

最終防衛線を護る者達だけに、その攻撃力は高い。
一撃を喰らうとごっそり体力を持って行かれてしまう。
それでもニコ爺とウーお嬢の罠とアルトの魔法に対しては少々弱いらしく、こちらの
攻撃で相手の体力を奪い倒す事は出来た。

今回、何よりも恐ろしいと思ったのは「アラーム」という敵の自爆だ。

その自爆のダメージは敵味方関係無しで喰らっちまうんだから洒落にならん。
オレの攻撃と同時に爆発して敵味方同時にダメージを喰らったから、どれがオレの
攻撃で、どれが自爆のダメージなのかも把握しきれなかった。
全くもってとんでもない相手だ。
自爆させずにアレを倒す方法があるのなら、その方法で倒す方が良いだろうな。



暫くはこの城内で様子を見る事になりそうだ。
この辺りの敵で手こずっているようでは、王の首を獲る事も出来まい。



確実に 旅の終わりが近づいている。
この旅の後、オレはどうすればよいのか。そろそろ真剣に考えねばならない。
いつまでもこのままではいられないのだから。

出来れば知られたくなかった事も…リーゼには話さなくてはならないだろう。
この国を去るか、留まるか。彼女次第でオレの道は決まる。
オレに寄り掛かってすやすや眠っているリーゼの髪をそっと撫でて、オレは覚悟を
決める。

バルバシア王と闘う前に、彼女に全てを打ち明ける事を。




そして、受け入れられなくともこの闘いが終わるまでは仲間として共に闘う事を。


今年もヨロシクお願いいたします。

2008-01-09 02:17:36 | プレイヤー雑記

地味にちまちま稚拙な文章を綴っているこのブログですが、意外にも来訪して下さる方が
いらして嬉しく思います。
昨年の後半は、リアルの事情であまりマメに更新が出来ずアレでしたが(遠い目)
今年も色々とバタバタしそうで更新もそうマメに出来ないような気が・・・。

とりあえず地味に物語を綴って行くつもりでおります。
楽しみにして下さっている方がいるかは分かりませんが、読んで下さる方がいる限り
頑張って書き続けて行きたいと思います。どうぞヨロシクお願いいたします。


今回アップした落書きは、去年落書きしたものに色を簡単に付けたものです。
泉で眠りこけていたリーゼさんを抱えるシュラ吉さん。

この2人、今後どうなっちゃうんでしょうかねぇ?
お互い恋愛事には相当鈍いみたいだしなぁ(笑)

カレー奉行・青年の主張

2007-12-01 20:51:33 | キャラクター視点
イブラシル歴688年11月



ディアスの兵士として登録された者は一定のレベルに達した時に「肩書き」を登録して
その肩書きを名乗る事が出来ると話に聞いた。
オレ達のパーティも全員そのレベルに達する事が出来、ウーお嬢とアルト、そして
リーゼの3人がディアスにある本部に登録を済ませて名乗りを上げている。

ウーお嬢とアルトの肩書きはまぁ…己の技能をまんま表した物で特に問題はない。
が!
リーゼの肩書きは少しとんでもない代物だった。

「カレー奉行」

・・・・・・全くもって訳が分からん。
肩書き申請が通って正式に名乗れると決まった時のリーゼの誇らしげな顔ときたら。
アルトまで
「ほれ、見てみろ。自らカレー奉行とか名乗っているあの誇らしげなこと。」
と 半ば呆れながら苦笑していた程だ。

姐さんやオレが料理の手ほどきをしているのも関わらず、今でもリーゼは料理が
全くダメダメで、カレーすらまともに作れない。
ナニをどうやったらあんな恐ろしい料理になってしまうのかは謎だが・・・。
とりあえず カレー奉行を名乗るのは万人が食えるカレーを作れるようになってから
にするようにとリーゼに苦言を呈する事にする。

オレの言葉を聞いて、リーゼはムッとした顔になり口を尖らせてこう反論した。

「な…カレー奉行の精神は心の中にあるのです!
 鍋奉行だって別に全員が料理の達人じゃないですから!
 カレーを愛する心が、私をカレー奉行たらしめるのです!」

……なんだその論点がズレまくった主張は???


らしいといえばらしいのかも知れない。
だが、随分長く色々手ほどきしているのに料理が全く上達しないのは何故だ?
味音痴なのか、不器用者なのか、粗忽者なのか、いい加減なのか、代用マニアなのか、
それとも私流アレンジ好きなのか?

アレを矯正するのはオレ1人の手には余る。
いや パーティ全員でも多分出来ないような気がして来た。
何か良い方法はないものだろうか?


アムスティアの医者にも呆れられてしまったオレの腹具合が良くなってくれるのは
何時の日の事か。
耐性がついたのかして、以前程酷い状態にはならないものの・・・やはり腹の調子は
良くはない。
姐さんの知り合いが言っていた「よ~ぐると」
(姐さんの話だと身体に優しい、動物の乳を使って作られる発酵食品だそうだ)
とやらを一度買って食べてみようかと思っている。
問題は価格がいかほどで、日持ちする食料なのかどうか。



リーゼと付き合うにはまず、自分の腹を自分で護らねばならないのかも知れない。


自分の中の恐れ

2007-11-12 18:13:44 | キャラクター視点
イブラシル歴688年09月



渓谷での闘いで懐が暖かくなった事もあり、一旦パラスという街で
一休みする事になった。
ここで装備の見直しをし、リリ姐さんのツテを頼って前衛2人分の
防具を作成してもらう。
防御力が高く、なおかつ魔妨の下がらぬなんともステキな装備だ。
手元に届いたときは思わず踊りそうになってしまった。
リリ姐さんから何かを聞いていたのか防具を作ってくれた職人が

「腹痛はーっ ヨーグルトでかもすのがイチバンなのだーっ 
 おなかの菌をたいせつにーっ 」

というメッセージまでくれた。
・・・よ~ぐると? なんだそれは? 聴き慣れぬ言葉に一瞬固まって
しまったが、今度リリ姐さんに聞いてみるとしよう。


まだ先に進むには少し無理もあるかもしれぬという事で、また渓谷で
闘い、経験と資金を稼ぐ事になった。

ここでの敵と闘うのにも慣れて来たのか、大きなダメージを受ける前に
アルトの魔法が敵を打ち砕き、お嬢とニコ爺の罠が敵の足を止める。
その隙にオレとリーゼが攻撃技を叩き込む・・・。

ここまでは順調だった。


だが2戦目でオレはラルヴァのテラーをまともに喰らってしまい、
最後まで身動きが出来なくなってしまった。


闘いの後、リリ姐さんに頬をぺちぺちと叩かれてようやく我に返ったが
手の震えは暫く止まる事が無く……。

野営地を設置して、飯を食った後も何処かまだ震えが残っていて困惑して
しまう。リーゼが心配そうにオレの横に座りオレを見ている。
心配をかけたくなくて、何でもないからと言ってその場を取り繕った。



皆が寝静まり、1人火の番をしながら自分の手を見つめた。
まだ少し震えが残っている。

オレが最後まで身動き出来なかった訳。

それは・・・。

オレが一番今恐れている事をあのテラーという術で見せられてしまったから。
あのオレに向けられている笑顔と、真っ直ぐな感情が…一瞬で崩れ去り永遠に
消えてしまう事。
真実を知った彼女がオレを拒絶して、手にした武器をオレに向ける光景が頭に
こびり付いて離れないのだ。


こんなにもそれが辛く、恐ろしいとは思わず…
オレは1人で声を殺して泣いていた。


覚悟はしていた筈なのに。何故こんなにも辛い。
何故オレは泣いている。
何故こんなにオレは………


 

野営地の焚き火は明々と燃えさかり・・・渓谷には少し冷たい風が吹いていた。


人の温もり

2007-10-23 20:20:57 | キャラクター視点
イブラシル歴688年06月



天に向かって大きく振り上げられた剣が、オレに向かって勢いよく振り下ろされた。

鈍い音がして足に痛みが走る。
振り下ろされた剣は身体には当たらなかったがオレの左足に当たり、足の骨を見事に
砕いてしまった。
足の骨を折り、バランスを崩した所にもう一体のデスが剣を振り上げ…


その剣が振り下ろされた時、オレの視界は真っ赤になってそのまま意識を失った。




ここは第一砦から北上した所にある「ヴァルグ渓谷」
バルバシアの首都の間近にある自然が創り出した要塞。足場も随分と悪い上に狭い。
第一砦から先に進む頃合いだろうと皆で話し合い、先に進んだものの・・・
ここにいる連中は厄介な技を使う者達ばかりだ。


気がつくとリーゼが側にいて、リリ姐さんが簡単な治癒術を使ってオレの身体を癒して
くれていた。足と頭に傷が出来ているが動けない訳ではない。
それにゆっくりと休んではいられない、新手の敵が迫って来ていた。
オレは慌てて流星を引っ掴み敵の方へと向かう。


第2戦ではリリ姐さんがギリギリの所で癒しの術を使ってくれたおかげで、倒れる事も
なく終える事が出来た。
ここでの敵は第一砦の連中よりもタチの悪い連中のようだ。毒だの吸血だの…。
何よりもオレが昏倒しちまった「アルティメットスラッシュ」とかいうあの技。
あれを2連発で喰らっちゃ立っている事も出来ねぇ。
ディフェンシブで防御力を上げているとは言え、そろそろこのスケイルアーマーでは
辛くなって来ているのかもしれない。良い防具を付ければ魔法防御が下がる事もあり、
ずっとこのスケイルアーマーを使っていたが…。防具の良い職人がいれば1つ鎧を
作ってもらいたいものだ。



夜になって一休みしようかという時にリーゼがやってきて、オレに袋を差し出した。
中にはオレが倒れた時に敵に毟られたバルディッシュとリングと石。
・・・わざわざ回収していてくれたようだ。

オレの頭と足の傷が気になるらしく、リーゼはオレの側に座り色々と世話を焼き始める。
喉は乾いてないか? 傷は痛まないか? リリ姐さんが処方したであろう薬湯まで持って
きたぐらいだ。
そして、そんな事をオレに聞きながら、ふとこんな質問をオレに投げかけた。

「故郷… そういえばシュラさんの故郷とか、
 昔のシュラさんってどんな様子だったんですか?」

突然のそんな質問にオレは少し驚きつつ、くりくりした瞳でオレをじっと見つめている
この少女がオレに向けている気持ちが少し嬉しかった。
あの時から、リーゼはオレを理解しようとしてくれている。そして何よりも今大切に
思ってくれているのだ。
ちょっと返答に困ったが、少しずつ話してやろうと思う。


遠い遠い東の果てにある、オレの生まれ故郷の話を・・・。



飲んだ薬湯が効いて来たのか、瞼が重くなってきた。
ウトウトと眠りに落ちながら…
リーゼがオレの隣で肩に寄っかかったような温もりを感じる。



人が隣に寄り添うというのは……暖かくて…いいものだ。




遠くでアルトとリリ姐さんの声が聞こえた。

…ったく………誰がアツアツだ。そんなんじゃ・・・ねぇ…よ。
(そのまま意識を失ってしまったようだ)


理より外れしモノ

2007-10-01 15:49:37 | キャラクター視点
イブラシル歴688年03月



オレは運が良かった。
見知らぬ土地の見知らぬ国に着いて、どうしたものかと思っていた時に
闘い慣れていそうな奴に声をかけられた事。
共に旅をする連中が皆とても良い奴だった事。

東方の異邦人であるオレを皆あるがままに受け入れてくれた。


時にはヘマをして倒れる事も多かったが、それでも皆が助け合ってここまで
やってきた。



砦の向こうはもう敵国バルバシア。
この先オレ達はどう進むのだろうか?
そして闘いが終わった時・・・オレはどうするだろうか?


迷っている。


鳶色のあの瞳がオレに向けてくる真っ直ぐな感情に。
オレの心は揺れている。
慕われ頼られる、そのくすぐったくなるような心地よさに。
側に誰かがいてくれるその暖かさに。




このまま…ずっとこの時間が続けば良いと。







わかっている。
この時間が永遠ではない事は・・・

時間は流れ、国も人も時代も変わってゆく。
人は老い、次の世代に命を繋ぎ大地へと還る。
それが世の理。


そして オレは いつも只1人取り残される。




世の理から外れてしまった"人ならざるモノ"になったあの時から・・・。


第一砦再び。

2007-09-27 13:35:04 | キャラクター視点
イブラシル歴688年02月



長い休養期間を終え、皆で第一砦へと向う。
今度はどれだけの期間、ここに留まるのかそれは分からない。
もう1人の前衛であるリーゼの調子次第って所だろう。
槍を弓に持ち替えて闘いに挑むも、まだ少し震えが出るようだ。
移動中もなるべく側にいる事にする。何かあった時に支えてやれるように…。


以前程大きなダメージを喰らう訳ではないとは言え、やはり第一砦の兵士達
の攻撃力は大きく、油断は出来ない。
新調した杖のおかげでアルトの魔法の威力が上がっていて、闘いは随分と楽に
はなっていた。お嬢やニコ爺の罠の威力にも助けられているだろう。
皆の攻撃を合わせて、耐久の高い敵を倒して行く。
途中リーゼがデカイダメージを喰らったが、リリ姐さんの癒しで何とか無事に
闘いを乗り切る事が出来た。

闘いの後、リーゼはまた少し蒼い顔をしていたのでそっと肩を抱いてやる。
リーゼは何も言わずオレの身体にもたれ掛かって目を閉じた。
小さな肩が微かに震えていた・・・。



季節は冬。山から吹き下ろす風も身を切るように冷たい。
闘いを終えた後は足早に砦を離れ、風の当たらぬ場所を探す。
砦を少し離れた所に打ち捨てられた建物があった。随分と古い物であちこち
ボロボロだったが、結構頑丈に出来ているようで雨や風を凌ぐには丁度良い
場所だった。今回の野営地をここに定め、各々が設営を始める。

多分、昔は砦として使われていた物なのだろう。いくつかの部屋には朽ちた
武具や防具が転がっている。

オレは外の国から来た人間なので、このイブラシルの事は何も知らないが
一体何時から戦火が続いているのか・・・。
建物内に危険がないか見て回っている間、視界に入る朽ちた武具を見てそんな
事を思っていた。


食事の後、リーゼがやってきてオレの側にちょこんと座った。
オレの顔を見上げて

「ありがとう、シュラさん。」

簡単に礼を言い、自分が今まで恐れを知らずに闘ってきた事が危険な事で
あっただろうと真面目な顔をして言った。
その言葉と真剣な顔に、何かを吹っ切って決意を固めたような意思を感じる。
今回の経験が良い方向に向う事となったのなら、それはそれでリーゼにとって
良かったんじゃないかと思う。

「わたし、きっと…シュラさんがいなければ…生きられない…」

え?
リーゼの言葉にビックリしてしまい、リーゼの顔を凝視してしまった。
その言葉の後、リーゼはハッとした顔になって慌ててこう続ける。

「い…いや、シュラさんがいないとご、ご飯も食べられない駄目な子なんです…!」

リーゼはどもりながらそう言うと、視線をオレから逸らした。
建物の中は灯りがあるとは言え、やはり暗いのでハッキリは見えないが・・・
心無しかリーゼの顔が赤くなっているように見える。

その様子があまりに可愛い。
思わず笑ってしまい、オレはリーゼの頭を軽く撫でる。


まだまだ幼いリーゼ。
オレに今向けている感情は、愛ではなく恋。
移ろい、薄れ何時かはその気持ちは無くなってしまうのかも知れない。

それでも、彼女がオレを必要とする限りオレは側にいようと思っている。







だが… 彼女がもし真実を知ってオレの元を離れ、他の男の物になってしまったら。
その時 オレは平静な気持ちでいられるだろうか?


大切な人

2007-09-18 21:33:15 | キャラクター視点
イブラシル歴688年01月



「誰だって闘う事は怖い。何かを失う事も怖い。
 それで武器を持てなくなる奴だってたくさん居る。」

ベッドの端に腰を下ろし、リーゼの顔を見てオレはそう言った。
1人にしないでと 不安な顔をしているリーゼに、オレだけでなく仲間の
皆がリーゼを必要としていて誰も見捨てるような事はしないと。

「だからそんな情けない顔をするな。いつものように笑ってくれ。」

そして、リーゼの肩にゆっくりと手を伸ばし、その細い肩に触れる。
リーゼは一瞬驚いた顔をしたが、何も言わずに瞳を閉じた。

「何時どんな時でもオレはお前の側にいよう。お前の不安と恐怖をそれで
 祓う事が出来るのなら…お前がそれを望む限り ずっと・・・。」

そのままリーゼの身体を抱きしめる。
華奢で小さな身体。少しでも力を入れれば壊れてしまいそうだ。
こんな華奢な身体で頑張っていたんだな と思った瞬間……

「ぎゅるるるるる!」

リーゼの腹から盛大な音が聞こえた。
熱も下がってきていたせいだろう、食欲が戻ってきたようだ。
大慌てでリーゼはオレから身体を離して俯き、チラと上目遣いでオレを見ると

「うう… シュラさん、やっぱりごはん… 今は手が動かないので、
 あの… 食べさせてくださ、い…」

顔を赤くしてポソリと呟いた。



宿の食堂からスープと果物を部屋へと持ち帰り、リーゼに食わせる事にする。
オレが声をかけるとリーゼは口を開け、その口へとスプーンを運んで一口一口
食べさせる。一生懸命に食べる様がちょっとかわいいなと思いつつ、その様子
を見ていると、昔巣から落ちたスズメの雛を育てた時の事を思い出してしまった。

は イカン!
リーゼとスズメの雛を同列に見る等と…こんなんだから朴念仁と言われてしまう
んだよな。(大きな溜め息を1つついてしまった)


リーゼは食事をしながら、自分の気持ちを少しずつ吐き出す。

「今はもう何が何だかわからないです。女だから弱いなんて事はないけど…
 私はまだまだ子供だった。そして、女としての弱点を持ってしまった。

 でも、それでも…私は前に歩いていきたいんです」


小さなその身体で、リーゼは家族の為に闘いに身を投じた。
「恐怖」も「恐れ」も全て家族の為に押し殺して。
その華奢な手に槍を持ち闘ってきたのだ。
今まで何一つ弱音も吐かずに頑張ってきた。その心をオレは支えてやれるだろうか?
出来る事なら支えてやりたい。心からそう思う。



「シュラさんは私の太陽だった。導かれるように、背中を追うように…
 ずっとずっと私の目標だった。あなたがいたから、ここまでこれた。」


リーゼがオレの方を見て微笑んだ。
今までに見た事のない程綺麗な、暖かな表情をして。

「そしてきっと、これからもそう。ありがとう、私の大切な人…」


リーゼは左手をオレの右手にそっと絡めて、顔を近づけてきた。
小さな吐息が顔にかかり、オレは一瞬混乱してしまって身動き出来なかった。
そのままやわらかく熱いリーゼの唇が頬に触れる。




大切な人


こんなオレにそう言ってくれた。
その一言が どうしようもない程嬉しかった。
今まで得る事の出来なかった言葉。今まで背を向けてきた立場。

決して手に入れる事の出来ない物。
また 儚く失ってしまう事になるだろう物。




それでも オレは・・・。



震える心

2007-09-11 15:13:14 | キャラクター視点
イブラシル歴687年12月



熱の下がらぬリーゼの世話をする為に、空いている時間なるべくリーゼの
側にいる事にした。 さすがに身体を拭いてやったり着替えさせるのは
リリ姐さんの担当だ。オレに出来るのは額のタオルを替えてやったり、
食事の時に介添えをしてやったりぐらいのもので・・・

まだ食事は普通に出来ないので、リーゼが食べるのは果物やスープばかり
だが、少しずつ食べる量は増えている。
後は体力を戻して行くだけのようなので、オレも少しホッとした。

買って来た桃の皮を剥き、皿に乗せてリーゼに手渡す。
その後 皮の始末やらをしていたら

ガシャン。

食器の落ちる音が部屋に響く。床に桃が散らばり、金属で出来た皿は
カラカラと音を立てて床の上を舞っていた。
ベッドに上半身を起こしたままリーゼは青い顔をしている。
慌ててベッドの側へと行き、オレはリーゼの様子を伺った。

「シュラさ…ん…わたし、緊張すると、なんか右手が…おかしいんです…」

リーゼはぷるぷると震えている右手をオレに見せた。
筋が強張り、指が不自然に震えている。

「普通にしていれば、何ともないんです… でも戦いの事を思い出すと、
 大きな武器を振るって…大切なものを奪うあの「重さ」を思い出すと、
 こんなになっちゃう…」

いつの間にか右手だけでなく、リーゼの身体が震えていた。
不安そうな表情で己の右手を見つめて・・・。


「シュラさん…わたし足手まといにならない様に付いていきますから、
 どうか私をおいていかないで、シュラさんにもみんなにも

 見捨てられたくない…」

リーゼは大きな瞳を潤ませてオレをじっと見ている。
そして 震えているその手でオレの服の袖を握って離そうとしない。



脅える子供だ。

大切な物を失う恐怖に、孤独になる事への恐怖に足が竦みどうすればいい
のか分からず脅えている・・・。

リーゼはまだ幼い。
その重みに耐えられる程に心が強くない。



ならば 1人でその重みを受け止める事が出来るようになるまで側にいてやろう。
そんな事しかオレに出来る事はないだろうから。



オレはそっとリーゼの肩に手を伸ばした。


槍は折れてしまうのか?

2007-09-04 16:43:02 | キャラクター視点
イブラシル歴687年11月



第一砦で倒れたリーゼの受けた傷は思いのほか酷かった。
街へ戻る時も自力で歩く事は出来ず、オレが背負って連れて行ったが
街に着いてからも調子が戻らぬまま宿で寝込んでしまったのだ。

傷が塞がるのも遅く、そして傷が原因で発熱していた。
街の医者に診てもらい、医者の指示通りに安静にしている。そのおかげ
で傷の方は随分と良くなった。

だが、熱は一向にひかないままだ。

リリ姐さんが、日に何度もリーゼの部屋へと足を運び癒しの術を使って
いる。それでも熱はひかない。

リーゼの部屋から出て来た姐さんが俺にそっと耳打ちする。

「んー……身体の傷の方は良いんだけど、心の傷がね……。
 こっちは法力で簡単にどうこうってワケにはいかないから。
 まぁ、後はあの娘自身の問題。

 下手したらここで折れるかもね、ヴェーゼンドルファの槍は。」


心の傷。

何がリーゼの心を傷つけているのか。
リリ姐さんのオレを見るジト目や、アルトの溜め息を見ていればいくらオレ
でも分かる(それが無くても大体の見当はついているが)

他の面子と違って、特に街で済ませる用事もなかったので、出来るだけ
リーゼの様子を見るようにした。
そっと部屋に入り、ベッドの横に座って眠っているリーゼの額のタオルを
替えてやる。熱がまだ高いのだろう、リーゼは赤い顔をして何かを呟いて
いる。

「…ごめんなさい、ごめんな…さい。」

タオルを替えたオレの手をリーゼの小さな手が握りしめた。
とてもか細い力で・・・

「これ、以上、シュラさんが…傷、つくのイヤ…だった、前に第二砦で…
 シュラさんが何度も倒れたのは、私をかばってくれた、から…

 だから今度は、わたしが…わたしの大切な人のため、に…」

その言葉を聞いてオレはもう何も言えなくなっていた。
とても真っ直ぐな気持ちが自分に向けられている。その気持ちをどうして
無視する事が出来よう。
…自分にその気持ちを受ける資格等ない わかっている。
それでも・・・オレは

そっとリーゼの顔を覗き込み様子を見ようとした瞬間

「ぎゅるぎゅるぎゅるるるるー!」

盛大にリーゼの腹から大きな音が聞こえ、同時にリーゼが飛び起きた。
リーゼの顔はモロにオレの顔面を直撃して、オレはそのまま後ろにひっくり
返ってしまった。

「いってぇ~っ!いきなり起き上がる奴があるか!」

何やら柔らかい物が唇にブチ当たったような気がしたが、それよりも何よりも
痛い。どんだけ勢いよく起き上がったんだ? そんな元気があるなら大丈夫
じゃねぇのか?
それでもリーゼの顔はまだ赤くて息も早い。身体の調子はまだ良くないようだ。

「ちょ…いま、シュラさん変な所に口をくっつけませんでしたか!?
 っていうか、何で人が寝てる所に…」

視線を逸らしながらリーゼがぶちぶちと文句を言いはじめた。が、またその
途中でリーゼの腹が鳴る。 唖然とした顔をしていたら、リーゼは毛布で顔の
半分を隠しながら上目遣いでオレを見て

「それより…おなか、すきました…」

ポソリと一言そう言った。

その様子があまりに可愛かったので、笑いながら鞄から桃缶を出してリーゼに
食わせる事にした。
(街に入ってすぐに雑貨屋で買っておいて良かった…)

桃を食べた後、リーゼはベッドの横に立てかけてあった槍をオレに手渡そうと
したが、熱のせいで力が入らないのだろう、バランスを崩して倒れそうになり
慌ててオレはリーゼの身体を抱いて支えた。
何故無茶をする。そんな物オレに一言「持って行ってくれ」と言えば済む話じゃ
ないのか? リーゼの身体をベッドの上に寝かせた後、槍を自分の座る椅子の横
に立てかけてリーゼの顔を見る。

「駄目なんです… わたしもうこんな大きな武器持て…ませ…ん…」

言葉を詰まらせて リーゼは小さな声でそう言った。
大きな瞳から涙が溢れていた。

リリ姐さんの言葉が頭をよぎる。
「ここで折れるかもね、ヴェーゼンドルファの槍は。」

そんな事…あってはならない。
リーゼはパーティにとってなくてはならない存在だ。リーゼがいなければオレ達
は皆困り果てる事になるだろう。戦力としてだけではない。その存在がパーティ
に必要なのだから。


どうすればいい。
リーゼは何を望んでいる?
オレが彼女の為に出来る事は何だ?



腹を括らねばならない。
彼女の望みを叶える事。その気持ちを受け止める事。






…真実を知られた時に拒絶され、オレの心が傷ついたとしても。