史上最強の上司山口さんと私が当時働いていた米系投資顧問会社のオフィスは帝国ホテル内にあり、ランチはよく近くの銀座のコリドー街に出かけました。
ランチ時は山口さんと一緒に居たくないので巻こうとするんですが、警察犬並みの嗅覚で付いてくるわ、汗は凄いわ、ご飯はこぼすわ、ウェイトレスをねーちゃんと呼ぶわ、まあ恥ずかしい恥ずかしい。そんなある日。
僕達はしつこく付いてくる山口さんを巻けずにランチ後のコーヒーを銀座コリドー街のIrish Pubのhubに行ったのでした。
腰高のstallにずり落ちそうに腰掛ける山口さん。短い足は床に届かず所在なく空気を蹴っています。
完全なopen café風で剥き出しの天井にオシャレにfanがゆっくりと回っています。
そんな店内、山口さんは足元がどうにも気になるようで、少し強めに足を蹴るような仕草を始めます。
「山口さん、どうしたんすか?」
「いやいや、さっきから足に何かが当たるようで引っ張られてるような気がするんだけどね。いや~気のせいかもね~」
とか、山口さんは言うのですが、私、ちょいテーブル下を覗いてみると、な、なんと。
超デカイどぶネズミが山口さんのズボンの裾をガチガチと噛んでいるんです!
え~⁉︎ マジかよ!
ま、コリドー街は上は高速道路、その高架下の飲食街。食糧豊富、冷暖房完備ですから、どぶネズミがいたって不思議じゃありません。
「や、や山口さん、どぶネズミっす!足元!」
あわわわわ、と山口さん椅子からひっくり返ってしまいました。
その超デカイどぶネズミも慌てて逃げ出します。
混雑した店内、客の足元を抜けて壁を伝い、梁や鴨居を伝いみんなが見守る中、女性用トイレの天井に消えて行きました。
床に転がってる山口さんもそれを見守ります。
女性用トイレの天井にどぶネズミが消えて10秒後です。
トイレのドアを開けてモデルのような超美人が出てきたのです。本当、超美人。
その美人が転がってる山口さんの横を通り過ぎ流時です。
山口さん、
「あ、あんた魔法にかけられてネズミにされてたの? いやいやびっくりしたぞ!いやいや、あなた別嬪さんですねー、びっくりしました。」
と話しかけたのです。
うん、確かにそんなタイミング!
山口さんロマンティックや。
でも、あんた転がったままですって!
写真は本編と全く関係ない茅場町の名店の夏に合う美味しい料理の数々です。