告別式、故郷の空は穏やかで青く高く澄んでしました。
(何故だか火葬場へ向かうマイクロバスの運転手がいなくて、親戚縁者を載せたバスを私が運転する羽目になってしまいました)
火葬場
お別れの時、小さな棺に蓋をしなければなりません。
弟は大声で「ごめんね・・ ごめんね・・」と泣き崩れます。
4人の子供たちも一緒に遊ぶはずだった小さなちいさな妹を泣きながら見送ります。
いよいよ出棺の時、
弟は「アニキ、○○は熱くないよね?絶対熱くないよね?苦しくないよね?」と痛いほど私の手を握りしめました。
私は「・・・・ 大丈夫、熱くないよ・・・ 大丈夫だ!」と握り返しました。
これしかなかったのかと思うくらい小さな骨を兄弟で泣きながら拾って弟宅へ戻り、遺骨を祭壇に置いて改めて御坊様にお経を上げて頂きました。
(帰りのマイクロバスの運転も私でした・・・)
皆一息ついて、部屋には私と弟の二人になりました。
そこに御坊様がやってきて静かに話し始めました。
「あなたは喪主のお兄さんですか?あ、そうですかぁ、やっぱりそうですよね。喪主の弟さんとはずっと離れていたのですか?兄弟仲違いとかしていたのですか?」
「・・・・・・」
「さっき出棺の時にね、お兄さんと喪主の弟さんの間に2~3歳くらいの可愛い女の子がいて、ふたりの喪服の裾を引っ張りながら、ふたりを見上げてニコニコと笑っていたんですよ・・・」
「・・・・・・」
「お兄さんが、喪主の弟さんの手を握り返した時に、その女の子はホッとしたように微笑んで、ゆっくり消えて行ったんですよ・・・」
「・・・・・・」
「兄弟で今まで何があったのか知りませんが、その女の子はおふたりのことをとても心配していたんだと思いますよ。」
「・・・・・」
「命を授かって、僅か2週間で○○ちゃんは亡くなってしまい、産まれたことに何の意味があるかとその不条理さに泣きくれることもあるでしょう・・・」
「・・・・・」
「でも、こうやってお兄さんがすぐに駆けつけて、喪主の弟さんもお兄さんに頼って、一緒に泣いて・・・・。こう言っては何ですが、私はあなた達兄弟がお互いを許し、認め合って、昔のように
仲の良い兄弟に戻れるきっかけを作ってくれるために産まれてきたのかもしれないと思うのです。」
御坊様のお話の途中から僕らはもうその答えに気付いていました。
気づいていたから涙が止まりませんでした。
気づいていたけれど、僕らの出来の悪い兄弟を仲良くさせるためだけに産まれてきたなんて本当は認めたくなかったのです。
それじゃあまりにも可哀想すぎるじゃありませんか・・・。
あれから20年が経ちました。
僕ら兄弟は藤沢と北海道と遠く離れて暮らしていますが、姪が命をかけて気づかせてくれたおかげで、
この歳になって兄弟らいいことが一緒にできるようになりました。
両親共々の介護や葬儀はしんどかったけれど、弟と一緒に乗り切りました。
両親はもういないけど、弟が私の故郷なんだなぁって彼に感謝しています。