CATS NO POWER!

aibaさんとショウコさんと純に好評のCATS NO POWER!
(不定期更新です。)
(頑張ります。)

春、別れ3

2008-01-03 23:05:00 | 春、別れ
ラーメンを食べ終え、再び東京国際フォーラムの中に入ると、卒業式はすでに終わっていた。

仕方ないので卒業式会場を後にし、僕は、潤と卒業証書を貰いに行くことにした。
卒業証書は各学部毎に用意された部屋で、業務的に配られていた。
学生証を見せ、卒業証書を貰う、というだけで、なんとも素っ気ないものだった。

見たことある顔が次々と卒業証書を受け取っている。
しかし、見たことはあるが、話したことのない顔ばかりだった。
僕は、学部に友達が極端に少なかった。しかし、その事に対して後悔はなかった。
何故なら、もし僕が、同じ学部の同じクラスの人と仲良くなっていたら、僕はアールに入っていなかったはずだからだ。
しかし、一人寂しく授業を受けていたあの日々を思い出すと、悲しくなるのも事実だった。

しばらくその風景を眺めた後、僕も卒業証書を貰うため列に並ぶことにした。
本音を言えば全く欲しくない。
僕には、卒業証書が社会行きの切符にしか見えなかった。
皆、何の躊躇いもなく卒業証書を貰い、帰って行く。社会に出ることの不安など微塵も感じさせずに。

遂に僕の番がやって来た。
受付の人に学生証を見せると、受付の人は僕の卒業証書を探し始めた。
どうやらなかなか見つからないらしく、手こずっている。
僕は、受付の人が卒業証書を探している間、学生証の写真を見た。そこには、高校三年時分の僕が映っていた。この時の僕は知らない。まさか僕が、こんなに東京にしがみついて往生際の悪い奴になってしまうなんて。

「卒業おめでとうございます。」
その言葉で僕は我に返り、差し出されてた卒業証書を受け取った。
それを受け取ることで、卒業する、という実感がジワジワと湧いてきた。
しかし、手にした卒業証書は、どうしたって社会行きの切符にしか見えなかった。

こうして社会行きの切符を手にした僕は、大学を卒業した。

春、別れ2

2008-01-03 02:20:18 | 春、別れ
僕は東京駅でショウコさんを待っていた。
東京駅には、それらしい格好の人が沢山いて、卒業式会場の東京国際フォーラムに向かって歩いているようだった。
東京国際フォーラムへ向かうそれらしい格好の人達は、僕とは違い、希望で満ち満ちている、そんな風に見えた。
と、その人達の流れに逆らい、僕の方に向かってくる人一人。それらしい格好をしたショウコさんだった。
滅多に着ることのない晴れ着を着たショウコさんは、とても嬉しそうだった。
未練の塊である僕とは大違いだ。

ショウコさんと合流し、僕らも東京国際フォーラムへ向かうことにした。
上京して四年。東京国際フォーラムに近い東京駅に何度も足を踏み入れたが、結局慣れることはなかった。
初めて東京駅に訪れたときは、驚いたもんだ。まるで迷宮じゃないか、と。これが東京砂漠なのか、と。
そんな迷宮さながらの東京駅で、最後の最後まで迷うのか、と思ったが、周りの流れに身を任せることで容易く東京国際フォーラムまで到達できた。いや、ショウコさんがそこまで導いてくれたんだっけ。

卒業式は、非常に呆気ないものだった。
途中で昼食を食べラーメン屋に行ってしまうほど、本当に呆気ないものだった。「飯食いに行こう」って、タケルが言ったんだっけか。
入学式の時のような高揚や期待などは、皆無だった。母親がサークル勧誘のビラを多量に抱えてくる、そんな恥ずかしさも当然なかった。
あるのは、あの入学式からもう四年も経ってしまったのか、という驚きと断ち切ることのできぬ大学生活への未練、そして、消えることのない不安だけだった。
未練はともかく、大学生活の終わりと共に僕らを隔てる距離と時間、それらへの不安だけはどうしようもなかった。

僕は、そんな不安を吐き出さないよう、必死にラーメンを啜った。

卒業式の最中にラーメン屋というのも、案外悪くないかもしれない。
(ただ、卒業式に出るのならちゃんと出た方が良いのは確かだぜ!出ときゃ良かったってちょっと思うもん笑)