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誰も知らない、ものがたり。

オリジナル小説「Quiet World」 28

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


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 ―防護服を身につけていない見知らぬ若者が集落の検疫棟に現れた。―

 そう博士とユリに伝えたダイ自身も、にわかには信じがたいという表情をしていた。

 人類の免疫が急激に低下した宇宙災害以降、コロニーを中心とした新世界の常識として、人は屋外で生身で生きることはできないという事があたりまえの事実であった。

 ここ、Quiet Worldにたどり着いたごく僅かな人々は、柊博士が突き止めた免疫不全の原因を根本から取り除くための独自の自然食療法プログラムを、数ヶ月間続けることで、防護服から開放された暮らしを営むことができる。

 しかし、新世界秩序を管理し、裏から支配を目論む連中からしたら、このことは不都合な真実であり、決して認められないことだった。

 『人類は宇宙災害によって自然免疫機能を永遠に失った』

 その前提を"維持”しなければ、コロニーを中心とした新世界秩序は成り立たない。

 だから、免疫不全はあくまで何者かが意図して計画した人災であり、治す手立てがあるという真実を”突き止めてしまった”柊博士は、マザーAIを管理する中枢委員会に巣食う悪意に気づいてしまったユリとともに命を狙われることになり、このQuiet Worldの集落のあるこの場所に身を隠すように落ち延びてきたのだった。

 

 Quiet Worldはその存在自体が、新世界にとってのタブーなのだ。

 

 都市伝説と揶揄されるその事実を信じ、Quiet Worldに接触を試みようとするコロニーの住民は、地下深くの精神病棟か犯罪者の濡れ衣を着せられ投獄されてきた。

 カヲリもケンも、その支配者たちの牙を、身をもって体験した。

 したがって、この集落の外からやってくる人間が、防護服を着ていないということは、通常では考えられない出来事だった。

 

「博士、防護服を着ていない若者って、どういうことかしら・・・」

 ユリは博士に意見を求めた。

 

「そうだなあ・・・」

 博士が宙を見るように色々と考えを巡らせている様子を見せてから話し出した。

 まず、やつらの免疫不全の”仕込み”は人類の遺伝子レベルに干渉するために高度に設計されているため、現状の考えられるテクノロジーでは解除ができないということ。

 人類の自然免疫を破壊するためのDNAへの干渉とは、長年にわたる大気汚染物質や農産物に使用される農薬類、食材への添加物、水道水へ用いられる薬剤、ウィルスの頒布、そして、特殊な遺伝子工学を用いたワクチンの接種。これらによって人類は自己免疫疾患の元となる異物を自らの体内で作り続けるというDNAレベルでの身体の変異が起こっていった。

 これらすべての条件が揃えられた上で、宇宙放射線を浴びた時にスイッチが入ったように人類は倒れていったのだ。

 宇宙放射線の災害を事前に予見したやつらが10年以上、下手したら30年ほど掛けて用意周到に行った、事前の仕込みであったという。

 このQuiet Worldの住民であったとしても、徹底した自給自足の自然食の暮らしを続けない限り、免疫力は再び失われてしまうという。

 もし、この計画し尽くされた難を逃れ、防護服で暮らしている人間がQuiet Worldの外にいるとしたら・・・

 

「・・・それは、あるいは人ではないかもな」

 

 博士は、最後にボソリとつぶやいた。

 

・・・つづく。

 

 

 


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主題歌 『Quiet World』

うたのほし

作詞・作曲 : shishy

唄:はな 

 

 

 

 

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