”どちらかの”アサダさんとは、一体どういうことだろうか。
いきなりこの美しい丘の中腹につれてこられたり、そこでリンとおばあちゃんの姿が突然現れたりと、立て続けに起こる現象についての整理がつかないまま、私はとりあえず一番気になり、引っかかったその言葉について聞き返す。
「2重になってしまったアサダさんの意識の、かたわれ…」ヒカルは静かにそういった。
リンも、おばあちゃんも、ヒカル含めて私以 . . . 本文を読む
唖然とする私を横目に、ヒカルは昇ってきた丘の頂きから見えるおばあちゃんとリンに向かって小走りに駆け出した。
風がそよいで足元の草花が優しく揺れている中、ヒカルは軽やかな足取りで進んでいく。
その様子を見たリンは、手を振りながらピョンピョンとその場で元気よく跳ねた。
青空に浮かぶ太陽の光に照らされた二人の髪の毛が、はらりはらりと踊っている。
ほどなくヒカルがリンの元にたどり着き、互いの手 . . . 本文を読む
足がもつれそうになりながら、私たちは駆けた。
森の中に何があるのか判らないが、今私たちに出来ることは先に進むことだけだった。
気がつけば、草花が足元にまとわりつき、木の枝が頭上をかすめる森の中をかき分け進んでいた。
同時に、地面を踏みしめる音や木の枝葉が風で擦れる”森の音”が聞こえ始めた。
まるで、テレビドラマで急に場面が変わって森のシーンが始まったように。
相変わらずモヤが立ち込め、 . . . 本文を読む