
「環境コミュニティ」という概念を提案したい。
まず、コミュニティの定義は多彩であるが、「コミュニティの共通要素として、①地域性、②共同性(相互作用)、③社会的資源、生活環境施設の体系、④共通の行動を生み出す意識体系」等が一致点として確かめられてきた(山崎、2006)。
そして、コミュニティは、安定や秩序の維持、知識・観念・信念等の伝達、ルールや規範の作成と施行、相互作用の機会提供等の役割を果たしており、「地域問題の解決機能を高めるためには、住民のつながりの強化による共同性をどれだけ取り戻せるかにかかっており、コミュニティ形成の現代的意義もそこにある」(山崎、2006)。
従来型の環境問題の解決もまた、コミュニティの機能発揮によって解決されるべき問題とされてきた。例えば、廃棄物減量化のための地区レベルでの話し合いと学習は、住民のつながりを高めながら、ごみ分別への参加を促してきた。地球温暖化問題への取組みは、地域課題となりにくいものの、問題解決にはライフスタイルの改善や環境配慮の普及が必要である。
中央行政主導の規制や経済政策による技術普及支援等に留まらずに、あらゆる主体の問題認知と行動意図に基づく主体的な環境配慮の採用とそれを共同化するコミュニティの機能発揮が期待される。地球温暖化問題を共同課題として捉える、環境をテーマとしたコミュニティ活動(「環境コミュニティ」)の形成こそ、低炭素社会ひいては持続可能な地域づくりが目指すべき根幹的目標となろう。
以上のような視点から、「環境コミュニティ」の形成を、環境政策の目標に掲げることができればと考えている。
なお、時代を遡ると、コミュニティは、自治体や町内会の旧来の自治組織の課題を解消し、「市民としての自主性と責任を自覚した個人」を重視する未来志向の概念として提示された(国民生活審議会調査部会報告、1969年)。
この精神は「「理想的概念」であり、実際には、自治会や各種の地縁的団体等が活動している現実実態を地域コミュニティとする「現実的概念」や、住みよい地域をつくろうという目標を目指して活動することがコミュニティづくりだとする「実践的概念」に基づく取り組みが成されてきた(金子、2006)。
つまり、コミュニティという理想は、新たな組織形態として具現化されたのではなく、地区公民館活動等に吸収されてきた。「環境コミュニティ」の実現と普及にあたっては、新たに整備されるコミューンのようなものではなく、居住している地域にあって、これまでのつながりを発展・変容させることで実現していく道があるのではないかと考えている。
参考文献: 金谷信子(2008)市民社会とソーシャル・キャピタル:地“縁”がつむぐ信頼についての一考察,コミュニティ政策6,124~143. 国民生活審議会調査部会コミュニティ問題小委員会 山崎丈夫(2006)地域コミュニティ論―地域文献への協働の構図.自治体研社,283pp.