サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

ISO26000にみる企業の社会的責任の範囲の拡張

2011年10月04日 | 環境と経済・ビジネス

 

 企業経営分野では、「トリプルボトムライン」という観点で持続可能性を捉える考え方が定着してきた。これは、GRIの持続可能性報告ガイドラインで示されている考え方で、企業の環境報告書を持続可能性報告書に発展させたキーコンセプトである。ボトムラインとは企業の決算報告書の最終行を指し、最終行に収益・損失という経済面だけを書くのではなく、社会面の人権配慮や社会貢献、環境面の環境汚染や資源枯渇への配慮についても記述することが、経済・社会・環境のトリプルボトムラインの考え方である。

  

 さらに、ISO26000(国際標準機構による社会的責任に関する手引き)が2010年に作成された。なお、同手引きでは、「社会的責任は組織に焦点を合わせたもので、組織の社会及び環境に対する責任に関わるものである。」とし、「組織の社会的な責任の包括的な目標は、持続可能な開発に貢献することであるべき」と記して、持続可能な開発と社会的責任の整理をしている。

  

ISO26000では、組織の社会的責任の中核課題として7つを示した。組織統治、人権、環境、公正な事業慣行消費者課題コミュニティ参画及び開発である。ISO26000の特徴は、多様なステイクホルダーを特定し、配慮することにある。つまり、ISO26000において配慮する他者は、環境であるとともに、従業員を含めて、消費者、取引先、コミュニティといった多様なステイクホルダーである。

  

 つまり、企業経営における持続可能性では、主体の中心は経営にあり、配慮すべき他者は社会と環境である。この際、ISO26000では配慮すべき社会的側面を多様なステイクホルダーのすべてと定義している。

 

  企業経営だけでなく、地域や国といった主体にとっても多様なステイクホルダーという観点から配慮すべき他者を特定し、それらのステイクホルダーへの配慮という観点から、持続可能性を考えることもできる。

  

 ISO26000の考え方は、国際政治で提案されてきた持続可能な発展あるいは企業の持続可能性報告にあるトリプルボトムラインという考え方をさらに進化させたものであり、特に配慮すべき社会的側面の多様性を強調しているといえる。

 

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