サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

持続可能な地域づくりのチェックリストの試行から学んだこと

2013年03月10日 | 環境と教育・人づくり

 地域の持続可能性のチェックリスト(45項目)を開発し、山間集落で住民による地域診断を試行してもらった。対象とした山間集落は2地域で、各々の人口は数千人規模である。

 チェックリストは、他者への配慮、リスクへの備え、主体の活力といった持続可能性のあるべき規範をもとに、設定し、統計的な有為性の検定を経て、絞り込んだものである。

 回答においては、地域の現状ではなく、10年前と現在を比較してもらい、45項目における10年間の変化の程度を5段階で回答してもらった。

 この結果は別途、学会論文に投稿する予定であるが、2つの地域の持続可能性は、多くの側面で低下しているという結果であった。ただし、10年間で高まっている側面もある。その側面は2つの地域で異なる傾向にある。

 

 このことから、次のような示唆を得ることができた。

 

(1) 2つの地域は、合併して政令指定都市になった都市の山間地域である。市行政の方針で、行財政の効率化や一元化等を進める傾向があり、山間集落の行政機能の縮減を加速させていると考えられる。このことが2地域の持続可能性における10年間の低下の原因だと推察される。合併して大規模な都市に吸収された山間集落は多く、合併後の集約・分散の施策の違いにより、山間集落の栄衰の差があるとすれば、異なる合併都市の比較による検証が課題となる。

 

(2) 2つの地域では、10年間で伸びている面(強みの面)がある。この強みをどう生かすかが、今後の地域づくりにおいて重要である。SWOT分析の考え方でいえば、強みを活かして、弱みを克服しいていくような戦略的な考え方も必要である。こうした強みと弱みの分析を、各集落の住民で共有し、目標やその達成戦略を共有化していくことが必要だろう。

 

(3) 人口数千人規模の地域で、環境、経済、社会面のすべての持続可能性をフルセットで整備し、向上させなければいけないというものでもない。地域間で連携し、分担していくなかで、自らの地域の役割を定めていくことも必要であろう。この場合、連携先の地域をどことするか、連携関係の中で何を分担するかについて、住民参加による議論が必要である。

 

(4) より広域的な連携を進める一方、従来の地域という単位で何を守っていくかを定めることも重要である。従来の地域のまとまりにおいて共有する地域の固有性とは何か。それは、地域の自然とそれに退治する暮らしや生業により長い月日により形成されてきたものであろう。この地域の固有性として従来の地域という単位で守り、育てるものと、医療や教育、産業等のように他地域との連携な中で再構築していくものの区別をすることが必要であろう。

 

 なお、開発したチェックリスト及び今回の試行における課題も明らかになった、2点を記述しておく。

 

 (1) 今回の試行では、地域住民による地域診断を行ったが、より多くの地域の関係者の意見も聞きたいところである。地域に移り住んできた人、地域と交流する人、地域の出身者、地域の行政関係者など、様々なタイプの地域ステークホルダーによる地域診断も実施し、主体による相違点を明らかにすることも有効である。

 

(2) 今回、使用したチェックリストは、地域のあるべき持続可能性について、10年間の変化を問うものである。一方、地域の持続可能性の計測においては、将来世代の持続可能性を担保する意味で、活動の基盤であるストックを測ることが重要という疑問もある。ストックの計測という観点から、今回用いたチェックリストを改良することも考えられる。

 

 

 

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