サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

花粉のでないスギ

2007年11月10日 | 環境と森林・林業
環境情報科学会のサロンにはじめて参加した。テーマは「東京から始まるスギ花粉症対策」。東京都の森林課の担当者の話であった。

花粉症対策として、多摩地域において、毎年100ha強のスギ林を伐採し、10年で1200haを、花粉のでないスギに植え替えるという事業。

私の第一の関心は、花粉症対策で一気に伐採しても、その需要があるのかということ。多摩地域では、既に1万m3の木材供給がなされている。それを毎年3万m3も供給することになって、その用途が確保できるか、既存の市場を圧迫しないか。

講演者の回答は、合板やパルプにするということであった。そうか、そう言えば、森林課のMさんがそんなことを言っていた。既存の木材供給は建材だから、バッティングしない。

その時はそれ以上考えなかったは、今思うとやはりわからない。花粉のでないスギに植えかえる花粉症対策事業は皆伐。既存の木材供給は一定の助成のもとに間伐。間伐だって、合板需要等を開拓して、さらに推進されるべき。間伐の合板材需要の開拓を阻害することにならないのか。

建材調達の側からみれば、需要があっても、なかなか多摩材の確保が難しいとも聞く。一斉伐採をする資金があるなら、もっと本格的に建材調達をして、市場形成をすればよい。

さて、私以外にも、会場からいくつか質問があった。それらを踏まえ、この事業の課題を整理すると次の点があげられる。

・花粉症の原因となる花粉は、東京の場合、静岡県の天竜からも飛来するという。花粉症対策の森林伐採は、林道に近いところを優先的に伐採するが、それでどれだけの効果があるのか。10年の伐採で多摩のスギ林の10分の1、花粉のでないスギは現在のスギより、花粉の量が10分の1。ということは、10年の計画を完璧に実施して、減る花粉の量は9%である。これで、充分な効果があるのか。

・造林の目的は、花粉症対策だけではない。木材供給からいえば、林道に近い森は手入れや搬出もしやすく、長伐期施業が望ましい。景観づくりやレクリエーション利用からいえば、広葉樹林化が望ましい。オプションを整理し、複数の評価項目で評価するというプロセスで、施策を検討する必要があったのではないか。森林という長期的ストック、インフラを、一時に知事の一声で決めてしまってよかったのか。

もう少し、都の説明を聞くべきかも知れないが、疑問の備忘録としておく。

都民に十分に説明せずに、選択肢を十分に比較検討せずに進めていることだけは
よくわかった。。。
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