サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

「居ごこち学会」第1回研究交流会に参加して

2012年12月28日 | 環境と教育・人づくり

 

 少し前のことだが、11月8日に東海大学で開催された「居ごこち学会」の研究交流会に参加した。

 「居ごこち」という言葉の持つ意味や奥深さを理解するよい機会になった。持続可能な地域づくりのチェックリストの開発研究を行っている私は、地域の持続可能性と個人の幸福との関係についても分析を行っている。幸福と「居ごこち」との関係等、今後の研究に役立つヒントをいただいた。

 ここでは、「居ごこち学会」の趣意書や研究交流会での発表をもとに、「居ごこち」という言葉の意味、意義を整理し、私なりの解釈や展望を書いてみる。

 

●「居ごこち」という言葉の持つ2つの側面

 趣意書では、「居ごこち」の言葉を2つの側面で整理している。

 1つは、「居ごこち」とは「私のもの」として、「自分だけの、唯一、自分を自分らしくさせてくれるかけがえのない」気分や心持を総合的に表す言葉であるいう点である。

 もう1つは、「自分が出会う何かから何かを「受けて」抱かれる気分」であるという捉え方である。つまり、「居ごこち」は、私の気分や心持を表すだけでなく、自分以外の何者か(他者)との関係を含んだ言葉である。

 

●「居ごこち」という言葉から考える意義

 趣意書では、「居ごこち」の言葉の2つの側面に対応して、この言葉を用いることで、「居ごこち」を与えてくれる「環境(=具体的な生活空間)」と、「居ごこち」を「受ける」主体である自分自身(あるいは自分自身と「環境」との関わり)を見つめなおすことができるという趣旨のことを記述している。

 特に、「受ける」ことの見つめなおしは、「供給側やつくり手側の論理にしばれない」確かな市民であること、「自分を超えた偉大な何か」に対する謙虚さを取り戻すことにつながると説明している。

 

●「居ごこち」と「快適」の違い

 学会会長の安原喜秀先生は、「快適」と「居ごこち」との違いを研究交流会で説明された。「快適」とは、身体的、瞬間的、部分的であることに対して、「居ごこち」とは、総合的、蓄積的、全体的であるというような説明であった。そして、「快適」を追い求めることに何かが違うと思う気づかせてくれ、ブレーキをかけてくれるのが「居ごこち」である説明された。

 「快適」だからといって「居ごこち」がよいわけでない、あるいは経済活動により提供されてきた「快適」を求めることで本当の「居ごこち」の良さに蓋をしている面があるというのである。

 

●「居ごこち」について私なりの解釈

 私なりに言葉を置き換えれば、「居ごこち」とは、主体と環境との関係の結果として得られる主体側の心の落ち着きの程度である。ここで心の落ち着きとは、主体と環境との関係において、主体が環境に対して自己を解放することで得られる状態であろう。

 「居ごこち」のよい場所や暮らしをつくることは、主体がより深い精神レベルにおいて、落ち着きを得ることができるように、①環境の状態、②主体の意識、③主体と環境との関わりを見直し、再構築することに他ならないだろう。

 

●「居ごこち」に関する私なりの研究課題

 私の現在の研究テーマは、「居ごこち」の研究と関連する点がいくつかある。1つは、「居ごこち」と持続可能な地域づくり、地域に暮らす主体の幸福との関係である。昨今の研究では、人間活動や政策の最終目標は主体の幸福であるとして、その幸福を規定する要因の分析がなされている。では、幸福と「居ごこち」とはどう関係するのか。また、持続可能な地域づくりの各要素と、地域の「居ごこち」とはどう関係するのか。

 また、私は温室効果ガスの増大に起因する気候変動の地域への影響とそれへの適応策に関する研究に参加している。気候条件と「居ごこち」は当然、関係するが、気候変動は「居ごこち」にどのように影響を与えるのか、「居ごこち」を守る・高めるために、気候条件の変化に対してどのような適応を行うことが考えられるのかという点の研究課題となるのであろう。

 なお、研究とは別に、学会に参加して、「居ごこち」がよい場所とそこで過ごす時間をもった人でありたい、と思うようになった。そう思って、居ごこちのよい場所探しをしてみるのは楽しいことのように思える。

 

 以上は、私なりの解釈を交えており、文責は私にあることをお断りしておく。

 

参考:http://www.igokochilab.com/

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