写真:キバナコスモス
環境配慮行動や、環境配慮商品の購入はできるだけ多くの市民が取り組む必要がある。
しかし、実際にはおおよそ10数%の人たちが採用しているだけの取り組みが多く、ロジャーズの普及理論で言う「マジョリティ」にまで普及できていないのが現状である。
これは、キャズム理論における初期市場はほぼ普及し終わったが、キャズムに陥りメインストリーム市場に入ることができない状況である。
キャズム理論によると、これを超えるためには、それぞれの市場が物事を採用するときの「目的」が大きく異なっていることをよく理解し、それに相応する戦略を立てなければいけないという。
■革新者や初期採用者の採用
初期市場に属する革新者や初期採用者はイノベーションを採用するとき、どのような目的を持っているのか。
新しいイノベーションを採用するのは研究者や高度な趣味を持った革新者である。彼らは冒険的な性格を持ちえているため、どのようなイノベーションであっても、それが本当に効果を発揮するのかどうか「(技術を)試してみたい」と思う。
この冒険心を満たすことが革新者の目的であるため、このカテゴリーを開拓するのは比較的容易である。しかし、革新者は「事実」を非常に重視し、高い評価能力を持っているため、最初に支持を取り付けるべき重要な相手となる。
しかし、革新者はあくまで先行事例であり、他のカテゴリーの人たちが採用する際に大きな影響力を与えるわけではない。大きな影響力をもつのはオピニオン・リーダーとなりうる初期採用者たちである。
彼らは、イノベーションの「技術」への興味ではなく、生活や社会やビジネスにとっての「ブレイクスルー」を見出すことである。
これは現状の単なる改善ではなく、新たな突破口を見つけたい、他者との違いを見出したい、ビジネスで大いなる飛躍をしたい、というような夢や希望をかなえることを目的としている。
そのための投資は惜しみなく行い、その行動も早いのが初期採用者であるので環境配慮商品の生産者にとっては重要な資金源となる。
また、外交的な性格であると同時に目立ちたがりでもあるので、先行事例として紹介されることを好む。その結果、彼らはメディアの注目を集め、次なる顧客カテゴリーを開拓するための下支えともなる。
■メインストリームの採用
さて、問題はメインストリーム市場である。メインストリーム市場は、前期多数採用者と後期多数採用者から成り、70%近くを占める。前期多数採用者は圧倒的な数を占める顧客グループである。
前期多数採用者の特徴は、用心深く、自らテストを買って出ることもない。彼らがイノベーションを採用するときの目的は「リスクの少ない着実な進歩」である。
そのため、今までにどのように採用されているのか、他者の評価はどうなのかという、先行事例と信頼性に関わる情報を求める。メインストリーム市場における採用者たちは、その行動や商品とじっくりと長い付き合いをしようと考えているからだ。
よって、初期市場が終わった時点では、まだ先行事例も少なく、信頼性も低いため、前期多数採用者に採用させるのは困難である。イノベーションの普及が進まなくなり溝に陥るという意味で、これがキャズムと呼ばれている。
このキャズムを超えて、前期多数採用者に採用されるようにならないと、普及の波には乗れない。
キャズムに陥らないようにするためには、あるいはキャズムから脱出する方法として有効とされているのは、前期多数採用者の中のごく限られたところに焦点を絞り込んで、一点突破をすることである。
ここで、前期多数採用者の中に、「採用の先行事例」を作ることで、残りの前期多数採用者たちが信頼を寄せ採用を始める。
次の後期多数採用者は保守派とも呼ばれ、本質的に「不連続なイノベーション」を受け入れず、これまでの「慣習」の存続を重視する。後期多数採用者がイノベーションを取り入れる目的は、「みんなが使っているから」である。
後期多数派は注目されることが少ないが、数学的には顧客の3分の1を占めている。前期多数採用者と違い、可能な限り今まで使ってきたものを使いつづけたいと考えており、その延長線上でイノベーションを取り入れたいと考えている。
そして、特にメインストリームの採用者で後期になればなるほど、マスメディアからの情報よりも、身近な人の体験のような個人間ネットワークから生じるような強い影響力を必要とする。
ロジャースによる採用者分類-----------------------------------------
革新者
・新しいアイデアや行動様式を最初に採用する人々。彼らは社会の他の大部分のメンバーが新しいアイデアや行動様式を採用しない前に採用に踏み切る。したがって彼らは社会の価値からの逸脱者であり冒険者である。
初期採用者
・進取の気性に富んでいるが、革新者に比べて社会の価値に対する統合度が高く、新しいアイデアや行動様式が価値適合的であるかどうかを判断したうえで採用する。社会の平均的メンバーとは、革新者ほどにはかけ離れていない。そのため彼らは、最高度のオピニオン・リーダーシップを発揮する。
前期多数採用者
・社会体系において、平均的メンバーが採用する直前に新しいアイデアや行動様式を採用する。その点では、社会での新しいアイデアや行動様式の採用を正当化する機能を果たすが、完全に採用するにいたるまで慎重に行動する。
後期多数採用者
・社会の平均的メンバーが採用した直後に採用する。彼らは新しいアイデアの有用性に関して確信を抱いても、採用へと踏み切るためには、さらに仲間の圧力によって採用を動機づけられることが必要な、大勢順応型である。
遅滞者
・イノベーションを最後に採用する人々であり、彼らの大部分は孤立者に近い。伝統志向的で、過去に注意の眼を固定している。
【参考文献】
E.M.ロジャース「イノベーション普及学」(1990)、産能大学
ジェフリームーア「キャズム」(2002)、翔泳社
環境配慮行動や、環境配慮商品の購入はできるだけ多くの市民が取り組む必要がある。
しかし、実際にはおおよそ10数%の人たちが採用しているだけの取り組みが多く、ロジャーズの普及理論で言う「マジョリティ」にまで普及できていないのが現状である。
これは、キャズム理論における初期市場はほぼ普及し終わったが、キャズムに陥りメインストリーム市場に入ることができない状況である。
キャズム理論によると、これを超えるためには、それぞれの市場が物事を採用するときの「目的」が大きく異なっていることをよく理解し、それに相応する戦略を立てなければいけないという。
■革新者や初期採用者の採用
初期市場に属する革新者や初期採用者はイノベーションを採用するとき、どのような目的を持っているのか。
新しいイノベーションを採用するのは研究者や高度な趣味を持った革新者である。彼らは冒険的な性格を持ちえているため、どのようなイノベーションであっても、それが本当に効果を発揮するのかどうか「(技術を)試してみたい」と思う。
この冒険心を満たすことが革新者の目的であるため、このカテゴリーを開拓するのは比較的容易である。しかし、革新者は「事実」を非常に重視し、高い評価能力を持っているため、最初に支持を取り付けるべき重要な相手となる。
しかし、革新者はあくまで先行事例であり、他のカテゴリーの人たちが採用する際に大きな影響力を与えるわけではない。大きな影響力をもつのはオピニオン・リーダーとなりうる初期採用者たちである。
彼らは、イノベーションの「技術」への興味ではなく、生活や社会やビジネスにとっての「ブレイクスルー」を見出すことである。
これは現状の単なる改善ではなく、新たな突破口を見つけたい、他者との違いを見出したい、ビジネスで大いなる飛躍をしたい、というような夢や希望をかなえることを目的としている。
そのための投資は惜しみなく行い、その行動も早いのが初期採用者であるので環境配慮商品の生産者にとっては重要な資金源となる。
また、外交的な性格であると同時に目立ちたがりでもあるので、先行事例として紹介されることを好む。その結果、彼らはメディアの注目を集め、次なる顧客カテゴリーを開拓するための下支えともなる。
■メインストリームの採用
さて、問題はメインストリーム市場である。メインストリーム市場は、前期多数採用者と後期多数採用者から成り、70%近くを占める。前期多数採用者は圧倒的な数を占める顧客グループである。
前期多数採用者の特徴は、用心深く、自らテストを買って出ることもない。彼らがイノベーションを採用するときの目的は「リスクの少ない着実な進歩」である。
そのため、今までにどのように採用されているのか、他者の評価はどうなのかという、先行事例と信頼性に関わる情報を求める。メインストリーム市場における採用者たちは、その行動や商品とじっくりと長い付き合いをしようと考えているからだ。
よって、初期市場が終わった時点では、まだ先行事例も少なく、信頼性も低いため、前期多数採用者に採用させるのは困難である。イノベーションの普及が進まなくなり溝に陥るという意味で、これがキャズムと呼ばれている。
このキャズムを超えて、前期多数採用者に採用されるようにならないと、普及の波には乗れない。
キャズムに陥らないようにするためには、あるいはキャズムから脱出する方法として有効とされているのは、前期多数採用者の中のごく限られたところに焦点を絞り込んで、一点突破をすることである。
ここで、前期多数採用者の中に、「採用の先行事例」を作ることで、残りの前期多数採用者たちが信頼を寄せ採用を始める。
次の後期多数採用者は保守派とも呼ばれ、本質的に「不連続なイノベーション」を受け入れず、これまでの「慣習」の存続を重視する。後期多数採用者がイノベーションを取り入れる目的は、「みんなが使っているから」である。
後期多数派は注目されることが少ないが、数学的には顧客の3分の1を占めている。前期多数採用者と違い、可能な限り今まで使ってきたものを使いつづけたいと考えており、その延長線上でイノベーションを取り入れたいと考えている。
そして、特にメインストリームの採用者で後期になればなるほど、マスメディアからの情報よりも、身近な人の体験のような個人間ネットワークから生じるような強い影響力を必要とする。
ロジャースによる採用者分類-----------------------------------------
革新者
・新しいアイデアや行動様式を最初に採用する人々。彼らは社会の他の大部分のメンバーが新しいアイデアや行動様式を採用しない前に採用に踏み切る。したがって彼らは社会の価値からの逸脱者であり冒険者である。
初期採用者
・進取の気性に富んでいるが、革新者に比べて社会の価値に対する統合度が高く、新しいアイデアや行動様式が価値適合的であるかどうかを判断したうえで採用する。社会の平均的メンバーとは、革新者ほどにはかけ離れていない。そのため彼らは、最高度のオピニオン・リーダーシップを発揮する。
前期多数採用者
・社会体系において、平均的メンバーが採用する直前に新しいアイデアや行動様式を採用する。その点では、社会での新しいアイデアや行動様式の採用を正当化する機能を果たすが、完全に採用するにいたるまで慎重に行動する。
後期多数採用者
・社会の平均的メンバーが採用した直後に採用する。彼らは新しいアイデアの有用性に関して確信を抱いても、採用へと踏み切るためには、さらに仲間の圧力によって採用を動機づけられることが必要な、大勢順応型である。
遅滞者
・イノベーションを最後に採用する人々であり、彼らの大部分は孤立者に近い。伝統志向的で、過去に注意の眼を固定している。
【参考文献】
E.M.ロジャース「イノベーション普及学」(1990)、産能大学
ジェフリームーア「キャズム」(2002)、翔泳社