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地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

豊岡視察 ~地域における環境経済戦略

2010年09月18日 | 環境と経済・ビジネス
写真:コウノトリのお酒(コウノトリ農法で作られたお米を原料にしたお酒)


兵庫県の豊岡市をようやく訪ねることができた。

コウノトリをシンボルとした地域づくりが目立つ地域であるが、私は「環境経済戦略」を作成している数少なき地域として、注目していた。

この戦略は、コウノトリの保護・放鳥を進めるなかで、生息環境づくりとしての農業のあり方が問われ、有機農業を進めることととなり、この有機農業を振興させることで環境と経済の統合的発展を目指すというものである。

農業だけでなく工業も含めることで、全産業的な展開としている点も、興味深い。

当初は、コウノトリ共生課(農業と環境政策を進める)の手で環境経済戦略が作成された。現在は、新たな産業戦略が作成されて、環境経済戦略はこれに内包されることになった。このため、担当は産業課に移っている。

短時間の調査で、すべてを理解するつもりは毛頭ないが、環境面と経済面、社会面での効果をヒアリングしてきた結果をメモにしておく。

・環境面の効果では、コウノトリの放鳥数は40強、野生繁殖が20強、野生の飛来1羽となっている。飼育ゲージ内に100羽程度いるが、豊岡での最大生息数は100羽程度で、現在の放鳥は慎重に行っている。毎年の放鳥は数羽程度とか。また、ゲージ内の100羽は近親交配にもなるのであまり繁殖させていない。

・経済面の効果は、有機農業、エコツーリズム等の面にある。慶応大学の大沼先生は15億円と試算しているらしい。コウノトリをテーマにした商品開発は盛んで、コウノトリにちなむ数多くの商品がある。コウノトリの生息に配慮した農法で生産されたおコメは、コウノトリ舞(米)として売られている。

・コウノトリの施設への年間来場者数は40万人。ドジョウを養殖し、コウノトリの餌として販売するベンチャー企業もある。

・社会面の効果は、確実にあるだろうと実感。コウノトリが優雅に空を飛ぶ様子、あるいはコウノトリを商店街のシンボルにしたり、コウノトリが何かにつけ地域のイメージシンボルにされている様子である。しかし、住民意識は調査されていない。住民の家計面でのメリット、対外的な注目を集めることの自己組織化等の効果はどうなのか。今度、住民アンケート調査を提案してみたい。

・豊岡は、台風23号の被害が大きかったように水害の町でもある。このため、新たにできたエコハウスは治水対策にも配慮している。床下を高くし、排水設備も完備。コンセントの位置を高くしたり、塗り壁も下部分だけ別のつくりにして浸水上に塗り替えを容易としている。昔は2Fの軒下に船をつるした。水害を前提にした適応があったという。現在も、区長を通じた避難体制など、防災をテーマにした社会関係資本が高い地域だと思われる。


とりあえず、ざっとした情報しか整理できないので、これくらいで。

なお、太陽光パネルを生産しているカネカさんが、環境と共生する街というイメージを、商品(太陽光パネル)の付加価値にしていることに注目している。

同社は、薄膜アモルファス・ハイブリッド方式の太陽光パネルを開発し、日本市場での販売を開始したばかりである。

薄膜アモルファスは、発電効率が通常の結晶型シリコン方式に比べて悪く、屋根面積の制約下では不利というデメリットがあるが、ハイブリッド方式としたことで発電効率を高め、日本市場に投入された。

この方式では、シリコン、インビジウム等の消費量が少ないという利点がある。同じ発電量を確保するには、設置面積が2割増しだが、意匠性、建築との一体性による安全・安心性がウリである。

今後は、商品の技術力だけでなく、メンテナンス、関係性マーケティング、発電ナビ等の付加価値も重要ではないかと思う。また、コウノトリをイメージ的に活用するだけでなく、より能動的にコウノトリの地域づくりと連携することが期待される。

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