
兎 と カ ラ ス
この世は陰陽の調和によってなりたち、自然との関わりによって私たちは生かされています。これをうまく意味づけたのが陰陽五行(木火土金水)の教えです。月と太陽は陰陽一対といわれ、月は兎を連想します。月の中の模様は兎が餅をついている姿だ、といわれてきました。
平安時代の『今昔物語』にも、兎のことが出ています。森に猿と狐と兎がいて、前世は財を蓄え、困っている者のために施しをしなかったために、獣になってしまいました。そこで施しに努めてまた人間に生まれ変わろうとしています。これを知った帝釈天は、餓えた老人に変身して森に姿を現します。早速猿は木の実を運び、狐も餓えた老人に食べ物をせっせと運ぶのですが、兎は猿や狐のように智慧が働きません。そこで焚き火の中に自ら身を投じて、老人のために身をささげました。老人は帝釈天の姿に戻り、身を犠牲にしてまで他のために尽くした、兎の尊い志を他に教えるために、兎の焼けた煙を月に写したのだ、と書かれています。この説話から、兎は月の象徴として昔から名高いのですが、太陽の方はあまり知られておりません。太陽の象徴は実は烏なのです。
天皇の即位式である大嘗祭の庭に飾られる幟には、必ず月に兎、太陽に烏が描かれます。中国、朝鮮半島の古い遺跡にも月と太陽の中に、兎と烏の絵や文字が描かれています。法隆寺の玉虫の厨子にも見え、大陸からわが国に流入された兎と烏の文化が、注意すればあらゆる所に描かれていることに気づきます。
枚岡神社 宮司 中 東 弘

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