korou's Column

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松浦亜弥ディスコグラフィー 68 「ひとり」

2016-06-26 | 松浦亜弥

2006年11月29日に発売された

企画アルバム「Naked Songs」の収録曲。

その後、20枚目のシングル「きずな」(2008年5月21日発売)の

カップリング曲として

アレンジを変えて収録された。

さらに、2010年11月24日に発売された企画アルバム「Click you Link me」にも

今度はホーンセクションを加えた別バージョンのアレンジで収録された。

作詞・作曲・編曲:中野雄太。

ただし「Click you Link me」のみ編曲は斎藤悠弥、ホーンアレンジ:竹上良成。



上記アレンジの聴き比べは

現時点ではyoutubeなどのネット動画では不可能である。

せめて「Click you Link me」くらいは入手してから

この曲についてコメントしたかったのだが

1年前に地元のCDショップで「Click you Link me」を見かけた際は

あまり魅力を感じないままスルーしてしまったので

今手元にないのである(アマゾン等でも入手していない)。

よって、以下は、この曲を語るには不十分な立場での

コメントであることをお詫びする他ない。

 


さらに、お詫びついでに言えば

この曲の歌詞は意味深で

ファンならば妄想全開となるところだが

それについても、ここで詳しく書く余裕がない。

妄想とはいえ、特定の歌についての亜弥さんの心境を推察することは

少なくともこの曲の場合かなり重要なことと思っているが

都合により端折ることにする。

 


とはいえ、不思議な歌いっぷりのオンパレードである。

一筋縄ではいかない。

いかに簡潔に書こうと思っても

端折れない映像が2,3存在するから

厄介でもあり面白い。

亜弥さん本人の感想を聞きたいという点では

この曲が一番かもしれない。

 

例えば、このケース。

マニアックライブ5では

昼公演の冒頭でこの曲が歌われたのだが

これが何とも表現しがたい出来で

言葉に詰まってしまう。

この頃にはもう亜弥ヲタを終了している人には

「なんだ、全然声が出てないじゃないか。本来の松浦亜弥はこんなもんじゃない」

と一言で片づけられそうな歌唱だが

今回じっくりと聴いてみて、それだけではない何かを感じてしまった。

強いて言えばビギナーズラックに近い、何かの運に恵まれたような歌唱。

もちろん、この時点での亜弥さんはビギナーではないのだが

1年半近く歌手活動を停止していて

その間歌のレッスンなどもせず、この日もリハもろくに行わず

言ってみれば、状態としては再デビュー、極端に言えば

ビギナーみたいな感じだろう。

でも、それにしては、声が全盛時ほど出ていないという点だけ除けば

これほど感動的な歌を聴かせることができたのだから

奇跡に近い。

 

楽器をアマチュアレベルで続けている人なら

分かってもらえると思うのだが

楽器の演奏ではよくこういうことが起こる。

久しぶりに楽器を取り出して

恐る恐る演奏してみると

意外なほどスムーズに音が出て驚くという体験。

何とかして良い音を出そうと

時間をかけて熱中していた時期には

その気持ちとは裏腹に思ったとおりの音が出ないことが多いアマチュア演奏家にとって

この「久しぶりなのに、何だ?このいい感じは」という瞬間は

その「いい感じ」が全く説明不能であることに

逆説的に自分が本当の意味でアマチュアだなと認識してしまう瞬間でもある。

そして、説明不能のまま、いつしか久しぶりの演奏らしく

すぐにグダグダな感じに戻ってしまうことも「アマ演奏家あるある」なのである。

 


このマニアックライブ5の「ひとり」はそんな感じを連想させる名唱だ。

久しぶりで、かつトレーニングもしていないのに

かつてうまく歌えていたという感覚だけで

意外とうまく歌えてしまったという感じ。

たしかに本当の意味での声は出ていないが

サビでの声の出し方は全盛時の亜弥さんを彷彿させる感動的なタッチだし

何よりも、その声をバックで引き立てる桜井さんのキーボードが素晴らしい。

マニアックライブ5全体としては

その「ラック(幸運)」を最後まで引きずれなかったと(個人的には)思うが

少なくとも、この「ひとり」は聴くべき何かを持っているように感じる。


ひとり

 

(注:書き終えてからこの部分を読み直してみて

 あたかも自分と同じレベルのアマチュア音楽家のような扱いで

 亜弥さんのことを書いていることに気付いた。

 もちろん、そうではなく、少なくともこのときの亜弥さんは

 自分の歌唱の出来不出来について、その原因が的確に判断できていたはずだ。

 出来不出来の理由が分からないと思い悩むような

 低レベルな話ではない。

 そこはアマチュアではなくプロ歌手として分かっているはずである。

 ただし、そこまで出来不出来が激しいライブになったことについて

 プロ歌手として十分な準備ができていなかったのも事実だろう。 

 そして、そうした事実を踏まえた上で考えれば

 そんな状態なのに、なお「ひとり」をこのようにきちんと歌えたその才能に

 瞠目せざるを得ないのだ)

 

 

もう1つのケース。

それは、2010年9月のコットンクラブでの「ひとり」。

このコットンクラブでの歌唱は

声の伸び、表現の丁寧さにおいて

屈指の名唱揃いなのだが

この「ひとり」だけはどうも不可解である。

まず、いきなり手拍子を誘うような動作が不可解。

そんな曲調ではないはずなのだが。

そして、出だしの4つの音 E-D-C-Gについて

音程を外してしまうという不安定さも不可解。

声が出なくなった最後のほうのライブでは

歌っているうちにブレスが苦しくなり音程もおかしくなるということはあったが

この全盛期の頃に、こんな簡単なフレーズを間違うというのは解せない。

その後も、何か所か音がフラットに聴こえる箇所があり

なぜこの曲だけそうなるのか、私にはさっぱり分からない。

そして、あくまでも楽しそうに歌う亜弥さん。

歌詞の内容は、別れた恋人にまだ惹かれていて

未練たらたらの女心を歌ったものなのに

そんなにニコニコして歌っていいものなのか?

さすがに、要所要所では声の伸びも素晴らしく

ある意味リラックスした歌いっぷりの良さも出ているのだが・・・

 

松浦亜弥 『ひとり』 LIVE at COTTON CLUB

 

 

その意味では

「Aya the Witch」ライブDVDで視聴できる「ひとり」が

最も自然に心に入ってくる歌唱かもしれない。

   溢れてく涙を隠して
   遠ざかってく背中を見て
   言えなかった言葉 ささやく

この部分の歌詞にクライマックスを持ってきて

感情をガツンとぶつける歌い方は

聴いていて胸を打たれる。

 

ひとり 松浦亜弥コンサートツアー2008春~AYA The Witch~

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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
異議なしです (aiseki)
2016-06-26 21:15:40
『Aya The Witch』の『ひとり』は

私がファンでい続けられる神テイクです

条件反射で泣いてしまう(;_;)

記念すべき日にこの更新感謝です。
返信する
ひとり (mago_emom)
2016-06-26 23:25:21
マニアックライブ5でのひとりは
私が最初に触れた彼女の生の歌声でした。
CD音源と 2010年のコットンクラブ、Aya The Witcで視聴はしておりましたが、
とにかくわけもわからず滑り込みでこのライブに参加できた私としては、
どんなライブ展開・曲展開になるものか見当もつかず
当日券で最後部席に捻じ込んで貰って聴いたものです。

分析するような心の余地もないのですが、
私にとっては、このときのひとりが今でも最高と思っています。
返信する
神テイク! (korou)
2016-06-27 21:50:48
>aisekiさん

記念すべき日は、
普通に考えると
この記事を書いた日の前日ですね。
まあ、25日は身内の皆で祝ったことでしょうから
お祭り気分のまま実感が湧きようもなく
本当の意味で30歳を意識するのは
多分6月26日からでしょう・・・ということで
お許しを。

この歌唱を「神テイク」として
条件反射で泣いてしまうとは
さすがですね。
私は、この記事を書くまで
これほど素晴らしい歌唱であることに
気付いていませんでした。

まだまだ奥が深いです、松浦亜弥の世界は。
返信する
やはり生歌を聴かれているのには勝てません(^^) (korou)
2016-06-27 22:41:27
>mago_emomさん

マニアックライブ5ほど
評価の難しいライブはありませんが
実際にそれを聴かれているとなると
話は別でしょうね。

ということで
私としてはmagoさんには「何も言えねえ(©北島康介)」ということになります。
むしろ、その時の様子を
「ひとり」に限らず
他の曲についても教えて頂きたいくらいです。
返信する
どんな生き物だろ? (アヤまる)
2016-06-28 10:32:00
マニアックライブ5あらためて聴き鳥肌でした。

それにして1年半ぶり、その間ボイトレしないどころかカラオケにすらほとんど行かずリハ1日だけという中でのステージ。

そのオープニングの曲を1回もリハしないでぶっつけ本番というのはどういう神経なんでしょう。

そのうえ最初の部分で亜弥さん「大丈夫ひとりって曲は覚えてるから」と言ってますが、ということはほかの曲は覚えてもいないんかい!

小心者の私には想像もつかない世界ですが、少なくとも横着とか手抜きとかいう話でなさそうです。

それがアーティスト松浦亜弥流のコンディションの整え方なんでしょう。

ますます興味がわいてきました。う~んなんというか文化人類学的興味ですが。
返信する
嫉妬と羨望 (beginner)
2016-06-28 14:32:32
aya the witch と maniac live 5

ヘビロテしている私としては、生歌を味わったという
皆さんの書き込みを見て激しい嫉妬心で一杯です。

1年半のブランク、リハもそこそこという maniac live 5。
実は虜になるキッカケとなった1つがコレ。
今ではたくさんの音源を聞いた私になりましたが、
それでもしばらくして舞い戻るようにして聞いています。

声の調子は良い訳がない。
でも、魅力を感じるのがココ…不思議な歌手ですよね。

aya the witchでの完成されたステージの出来は最強
であるのは疑いようがありませんが、不完全な時も含め
生歌を実感してきたという経験談は、私にとっては取り
戻せない青春時代をを大人になって振り返り胸苦しく
なるのにとても似ており…。

こうして私の修行はまだまだ続くのだという実感です。

返信する
(素敵で)無敵な亜弥さん (korou)
2016-06-28 20:40:58
>アヤまるさん

やはり、トップアイドルとして3,4年は君臨した歌手の強みなんでしょうね。
そうでなくても、強い精神力を持っているのに
成功体験がそれに加われば鬼に金棒でしょう。
(いや、亜弥ちゃんを「鬼」と言ってはいけませんがw)

その上に、芸能界のドンである長良じゅん氏の後押しを得て
病気と闘って精神的な強さを一層身につけて
そんな向かうところ敵なしの状態でステージに向かうわけですが
客席はと言えば、ほとんど亜弥さんの奴隷状態ともいえるドMの皆様。。。
怖いものは何もないはず。

・・・ということで、まあ、あんなもんでしょう(爆)
返信する
今回のコメントではmagoさんだけが生歌経験者です (korou)
2016-06-28 20:49:57
>beginnerさん

>ヘビロテしている私としては、生歌を味わったという
>皆さんの書き込みを見て激しい嫉妬心で一杯です。

ここは「皆さん」ではなく
「magoさん」だけですね。
私の勘違いでなければ
アヤまるさんもaisekiさんも生歌を味わっていないはずですので。
もちろん、私も、亜弥さんの長い沈黙が始まってから
ファンになった一人で
生歌など夢のまた夢です。

マニアックライブ5に舞い戻ってしまう、というのは
驚きですね。
そこまでこのライブに愛着がある方は
そう居られないと思うので。

>声の調子は良い訳がない。
>でも、魅力を感じるのがココ…不思議な歌手ですよね。

私もそう思います。
客観的に分析して出来が良いからOK、悪いから×と
単純に言えないところに
松浦亜弥を聴く愉しみが存在するのですね。
少なくとも、私の知っている限りの日本人歌手で
こんな方は他にいません。
返信する
ブランカーズ・ラック? (大sansan)
2016-06-29 00:21:55
 マニアックライブ5のオープニングですね。
ブランカーズ・ラックとでも云いましょうかw
伴奏は、ピアノのみ、
ちょっとエコーを強めにかけて、少し照れながら、悲しげに歌い上げる。
久しぶりのライブの1曲目の演出としては、これ以上のものはないと思います。
 この後、このテイクがノーリハーサルであるという発言があります。
本来、プロの歌手が、こういうことを云うのは、客に失礼というものですが、
グダグダであったのなら、恥ずかしくってこんなことも云えないでしょうから、
本人としても、思いの外に手応えがあった証だと思います。
 歌唱だけを取り上げれば、2008年の方が優れているのでしょうけど、
歌っている姿まで含めたライブテイクとして見た場合
僕的には、こちらを評価したいです。

COTTON CLUB については、
後打ちのリズムが軽快なこっちのアレンジのほうが好きなので、
こちらも評価させていただきます。
若干のお手振りは、ライブだということで・・・w
ニコニコ手を振っていたかと思うと、
次のフレーズでは切なく歌い上げているという変わり身の凄さが、
(アイドル時代から続く)彼女の魅力の1つと云えるのではないかと・・・・。
返信する
妄想全開でレスします(笑) (korou)
2016-06-29 21:42:47
>大sansanさん

「ひとり」という曲に焦点を合わせたら
どうしても”Aya the Witch”のほうがまっとうな名唱だと思いますが
亜弥さんのビジュアル込みの歌唱に注目したら
マニアックライブ5も捨てがたいものがありますね。

コットンクラブについては
実はこの記事を書くまではマイベストの「ひとり」でしたが
今回聴き直して、ぐっと評価が下がりました。
気分が入っていないように思うのですが
これは、この歌詞の内容がその時の気分と正反対だったことが
影響していると「妄想」しています。
これを歌い始めたときは
慶太サンと一時的に疎遠になったときだったので
歌詞の内容通りの心境だったのに
コットンクラブのときにはもう復活していて
とてもそんな気分じゃないという感じで・・・

ただし「Click you Link me」にこの曲を入れたのは
その次に「みんなひとり」を入れたかったからではないかと
「妄想」しています。
で、新アルバムに入れたからには
その時期のライブで歌わざるを得ず
あのような感じの歌いっぷりになったのではないかと。
返信する

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