昔から、「ところ違えば、品違う」といわれてきた。
まさに、この言い伝えをあらわすものが「身土不二の原則」である。
いかなる農産物も、その原産国では「適食」であるが、外国へ輸出されると、それは「身土不二の原則」に反する「不適食」となる。
例えば、熱帯の産物であるバナナは、その原産国では「適食」であるが、温帯の日本へ輸出されると「不適食」となる。
日本産リンゴとミカンは、日本では「適食」であるが、熱帯地域では「不適食」となる。これが、「身土不二の原則」というものである。まさしく「甲の薬は乙の毒」(諺)である。
◆「食は命なり」
食物という生命体が、人間という生命体へ変化する。
この転換は、「生命の鉄則」というべきもの、あるいは「宇宙の法則」といってもよい。
それが、今日では、蹂躙されている。
例えば、農産物貿易である。
これは、別名、「食物を用いた、生命に対する蹂躙と冒涜の経済行為」とでもいうべきものである。
◆農産物貿易は戦争である
農産物貿易は、武器によらない戦争である。
農産物貿易は、血を見ない戦争である。
農産物貿易とは、人間による「環境への反逆」である。
「環境と食物と人間」の関係をいまいちど述べておこう。
ある環境(例えばアメリカ大陸)では「薬ともいうべき食物」が、別な環境(例えば日本列島)へ移動(輸出)されると、「毒」へと変化する。当然のことながら、この逆も成り立つ。
「生命と健康」へと変わるべき食物が、その産地から他へ移動されると、その正反対のもの(病気)へと変化する。
農産物貿易とは、「食物の移動」による経済競争である。
この経済競争は、「身土不二の原則」から云えば、生命を害するものとならざるを得ない。
「身土不二の原則」は、原理的に競争と云うものを否定している。
したがって、食糧危機のときは別として、食物の移動は、とりわけ国外へはすべきでないことになる。