さてさて、
予約時間を30~40分はオーバーして、
まるで人生の一大イベントに遅刻したかのごとく、
必死の形相で駆け込んだ東洋のサル軍団…、もとい我々を
“リッツ・パリのエスパドン”のスタッフは、
全くもって“ノープロブレム”といった感じで、
それはそれは拍子抜けするくらい穏やかに、にこやかに、
迎え入れてくれました。
そうですよ。
考えてみたら “リッツ” ですよ!
同じテーブルに、時間をずらして次の客を…なんて、
せこいことするわけないですよ。
一晩に同じテーブルに着くのは一組の客だけ。
我々が遅刻しても何ら問題はなかったわけですよ。
はあはあ、ぜいぜい…。
席に案内されて、やっと一息。
あたりを見回す余裕ができたのでキョロキョロすると…、
“なんだ、こりゃ!?”
の世界が展開してましたよ。
豪華さは言うまでもなく、天井が…、天井が…、
高いなんてもんじゃない…、
どどーーーーーーーん と、頭のはるか上。
しかも、ヨーロッパのお城によくある天井画まで描かれている。
その中にいると、一瞬にして中世の貴族社会に紛れ込んだよう…。
おもわず、
あのう…、
私たち、
ほんとうに、
ここに、
いても、
いいんでしょうか?
って気分になる。
その日の午前中に観光に行った
“ヴェルサイユ宮殿”を思い出しましたよ。
それもそのはず、あとで検索したところ、
やはり“リッツ”の室内装飾は、
ヴェルサイユ宮殿やフォンテーヌブロー城から着想を得てました。
さて、問題はここからですよ。
料理はフルコースでいいとして、
問題は、ワイン…ですよ。
ワイン選び!!
“エスパドン”には、
料理に合わせて、最高級のグラン・クリュ(特級ワイン)から
選りすぐられた1000本以上のワインが備えられている。
ここはひとつ、酒豪の奉行を頼りにしたいところだが、
なぜか奉行はワインにはいっさいキョーミなし。
私は下戸だし、とにかくメンバーの中に
ワイン通は一人もいない。
そんなわけで、ソムリエとの応対は、
後学のためにと息子にさせることにする。
ほんとのところは、
大人たちはびびって逃げ腰だっただけ。(笑)
だって、
こんなすごいお城のようなホテルにいるソムリエとなんて、
恐れ多くて口なんて聞けませんよ。
でも息子には、
「人生、何事も勉強だからね」と、親として諭す。
まず先に、料理のメニューからオードブルとメインを決め、
それに合わせたワインをソムリエに選んでもらう。
息子には、
最初にソムリエが薦めるワインはかなり高額のものだから、
絶対断るようにと教える。
ソムリエは最初の一本はたいてい高価な方のワインを薦める。
最初から安い方を薦めると客を値踏みしたことになって
失礼に当たるから。
ソムリエが最初に薦めたワインの金額だけ見て、
「もう少しリーズナブルなものを…(へたくそ英語)」
と応じる息子。
ソムリエは次のワインを選んでくれるが、
まだ高い……。
息子に目配せで“ダメ出し”をする私。
「もうすこし、リーズナブルで…」
と繰り返す息子。
あんまり断るのも悪いので、適用なとこでOKを出す。
“リーズナブルなものを…”と何度か繰り返して、
選ばれたワインのお値段は、日本円にして、
一本、¥17,000 でした。
すごくり~ずなぶる?
はははははははははは……。
(意味のない笑い)
あと、希望に応じてミュージシャンが音楽で
ディナーのお伴をしてくれるそうです。
そんなものいらんわ!!
料理は、
みんなが同じオードブルあんどメインじゃつまらないので、
適当に別々にしました。
もちろん、メンバーのそれぞれが、
人の皿の分も少しずつもらう気まんまんである。
どうせならいろいろな種類の料理を味わいたい!
でも…!
フランス料理では、イタリアンと違って、皿を持ち上げたり、
料理を分け合うことは“ご法度”なわけですよ。
日本にある“フランス料理店“でだったら、ご法度承知の上で
しょっちゅうやってましたが……。
でも…、
フランス料理の本場ですよ。
それも、世界の“リッツ”ですよ。
でも、でも、でも、でも…、
人の皿に、自分のと違った料理がのってたら、つい、
“ちょっとだけ味見を…”
と言いたくなるのは、人間の本能ですよ。
席は丸テーブル、皿を持ち上げると目立つので、
両隣の人の料理をそっと皿から皿へ目立たぬように
密かにワープさせようと密談が交わされる。
全員がいっせいにやると目立つので、
みんなで会話を楽しんでいると見せかけて、
その隙に一人が、
両隣の人の皿から自分の皿へ料理をかすめとるという
隠密行動に出る。
極力目立たぬように…、
さりげなく…、さりげなくね…。
とりあえず、私は成功。
息子や奉行や奉行父も、とても隠密行動とは言いがたかったが、
とりあえず料理のとりわけ成功。
でも……。
ボトッ。
奉行母が…、
私の皿から料理をつまむ途中に…、
私の皿と奉行母の皿のちょうど中間地点に、
料理を落っことしてしまったのであるよ。
しみひとつない真っ白なテーブルクロスの上に、
そこにあってはならない“物体”と、そこから滲み出た
茶色のソース。
いかにも、私たち、 “ご法度” 犯しましたといわんばかりの…。
とっさに手でつまみあげようとしたが、
いまさら“物(ブツ)”を拾ったところで、汚れは隠せない。
それに、こういう場所では、ナイフやフォークを落としても
自分では拾ってはいけない。
店のスタッフが
新しいのを持ってきてくれるのを待つのがマナーである。
ってことは、
この物体も…店側に任せるのがスマートかも、
と私なりに判断する。
多分とっくに店側はこの事態を把握してるはず。
次の料理が運ばれてきたときにでも、
きっと綺麗にしてくれるはず。
と、思っていたのにですよ!!
次の料理がきても、
さらに次の料理になっても、
放置プレイだったわけですよ!!
なんで!?
おい、おまいら!!
これが見えてるんだろ!?
なんで片付けないんだよ!!
嫌がらせかよ!!
東洋のサルがこんなとこでマナーもわきまえずに食事してるから…?
(偏見とプライドと僻み)
今更自分で片付けることもできないし、
たまりかねて、さらに次の料理が運ばれてきたときに、
私は、そこにあってはならない物体を指差して、
これを何とかしてくれと身振り手振りで訴えましたよ。
するとスタッフが奥に引っ込んだので、
当然、ぬれ布巾でも持ってきて、
そこを綺麗に拭いてくれると思うじゃないですか?
が…!!
信じられないことがおこったのですよ。
なんと、真新しいナプキンを持ってきて、
そこにさっと置いたのです。
ええ、“あってはならない物体”はそのままにですよ。
普通、こぼしたものを片付けてから、汚れ(しみ)を隠す意味で
その上に新しいナプキンを置くのならわかりますよ。
でも、真っ白なナプキンでそれを隠した後、
『ほ~ら、こうしたら見えないでしょ?』
と言うかのごとく、私に向かってにっこり微笑むんですよ。
つられて私もにこやかに、
「メルシー」とは言ったけど……。
料理を食べている間中、
気になるんだよ!!
その真っ白なナプキンの下に、汚れた物体があると思うと…。
落ち着かないんだよ!
“ご法度”犯しましたよ!の証拠品がいつまでもあると…。
頼むから片付けてくれよ!
何とかしてくれよ!
このままじゃ、気になって、気になって、
せっかくの料理のうまさが半減するんだよ。
今更の今更だけど、
自分の手で摘まんで、食べ終わった皿の上に乗せようかと思いましたよ。
止めましたが…。
フランス人のすること、まったくもって
わっかりませーーーん!
ってのが正直な感想でしたね。
この時は……。
そう、この時はね。
料理の味……?、
ええ、それは天下の“リッツ”のおフランス料理ですもの。
美味しいの何の!!
だったと思いますよ、たぶん。
でも、正直言って、味なんて覚えてませんよ。
緊張感と、旅の疲れと、もろもろの疲れで…。
それに運ばれてくる料理ごと、最初はすごく、
美味しいと思うんだけど……、
量が多いんだよ!!!!
とにかく多いんだよ!!
どうなってるんだよ、フランス人の胃袋は!?
(日本にあるフランス料理店は日本人向けの量になってるのね。)
とまあ、無事食事も終わり(そうか?)、
ここまではよかったのですが(そうか?)…。
このあとですよ!!!
とんでもないことが
起こったのは!!!!
あ…あ、ごめんなさい!日本の皆様。
私はこの後、
優雅さ(エレガント)と伝統を誇るかのおフランスの地で、
しかもよりによって花の都パリの中心、この世界の“リッツ”で、
日本人としてあってはならない大恥を晒してしまいましたよ。
ええ、まさに、フランス人から東洋のサルと蔑まれても
仕方のない…無作法を…。
ええ、まだ誰にも恥ずかしくて告白してないです。
(続く)
ふふふ。はじめまして!なんて素敵なお名前!(笑) 新子ちゃんによろしくね。(笑)
心筋梗塞かしら☆彡
続きが気になります
先が気になるったらぁ~
読ませていただいてる方は、楽しませてもらってますが、
当事者の先生家族は、ものすごく緊張した時間でしたね。
シェアできないのはツライですね。
おまけに、なんで片付けてくれないんでしょうかね・・・
息子さんの度胸の良さも素晴らしい
我が家の英語恐怖症の息子共にはできないことですよ。
続き楽しみにしてますよ~
続編おたのしみにね~。(笑)
>yuniさん
私のエピソードってどうしてお笑いになるのかしら?ってつくづく思いましたよ…。
>みゆみゆさん、
もう二度と行きたくないです…。といいつつ、今度パリに行ったら今度こそ優雅に”お茶だけ”でもしたい気もある。(懲りないやつ…)
私は緊張してホテルの中に入れない気がする・・・。(笑)
パート1、パート2と楽しませていただきました♪
続きがとっても気になります~。
この後、ジッコ先生が大声で怒鳴ったとか・・・!?
(まさか、ね 笑)
お茶だけでも、どんだけゴージャスなことなんでしょうかね?