集中治療専門医への道

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胆石性膵炎 レビュー 

2014年01月27日 | 日記

答え:

質問①:緊急でERCPする?しない? 

現時点ではしなくてもよい 保存加療で可。

胆嚢炎合併ではないから。

 バイタルが狂って石の顕在化がはっきりすれば考慮

質問②:胆摘する?しない?

症状が落ち着けば行う。

膵炎

Introduction

 アメリカ:240,000例/年

 その半分が胆石が誘因とされる。5mm以下の石で生じる事が多い。

 胆石性膵炎の多くは良好の経過を辿るが、その中で重症例を見抜くためにRanson criteriaやAPACHE Ⅱなどの指標が広く使われている。ただその陽性的中率は43-49%と低い。死亡率は全膵炎で5%程度だが、重症例では20-30%と高値である。2週間以内の死亡例の多くはSIRSやMOFに起因するが、それ以降の死亡例はnecrotizing pancreatitisに起因する。

Ranson criteria:胆石性膵炎

At Presentation                   During the first 48 hours of admission 

age > 70 years                          hematocrit decrease > 10% 

glucose > 220 mg/dl                          calcium < 8 mg/dl 

WBC count > 18,000/mm3             base deficit > 5 mEq/L 

LDH > 400 IU/L                             BUN increase > 2 mg/dl 

AST > 250 U/dl                                Fluid sequestration > 4 L 

3点以上で重症

APACHE Ⅱ

APS + Age points + Chronic health points = ___点

APS: ACUTE PHYSIOLOGY SCORE: sum of the 12 individual variables

 

Clinical Evidence

 ERCP

 ・胆石性膵炎におけるERCP時期や役割に付いては賛否両論

 ・胆嚢炎が無く胆管閉塞が無いなら24-72時間以内の早期ERCPは予後に寄与しない。

 ・重症度にも依存しない。(別画像参照)

 

Clinical use

 ERCP

・多くの患者では重症度に依らずあまり効果がない。

・ERCPを行うべき患者

  第一条件:胆管に石がある

  第二条件: 

   胆嚢炎(熱・黄疸など) or 胆管閉塞している患者(D-bil > 5) or バイタル変動、腹痛の増悪、WBC⇧ or 総胆管結石

・禁忌

  絶対禁忌:ショックバイタル / 同意無し / 術者の未熟

  相対禁忌:解剖学的異常(術後など)/ 凝固異常

・ERCP行う上でのcheck項目

 プロトロンビン時間

 PT-INR

  ビタミンKの吸収が阻害されるから。

 乳頭筋切開術を予定するなら

 Plt > 75000 INR < 1.5

 脱水に注意:250ml/h X 24h程度の輸液を考慮

 絶食 経管栄養であれば6-8時間前に中止

 抗菌薬の予防投薬:キノロン系 or セファロスポリン系

 腹臥位

 カニュレーションが成功すれば造影剤を注入する

  その際感染があれば培養に出す事、吸引しておくことが大事

 1cm以下の石であればバルーンで除去は可能

 それ以上であればバスケットも有効

 さらにそれでも困難な症例ではナイフ/体外破砕を使って粉砕して除去する

 時に微細な結石でも症状が強くでている事もあるため、石が無いからといって治療が失敗という訳ではない。

 

Adverse effects

ERCP関連膵炎:2-8%、特に合併症のない総胆管結石症例。最初の報告は1980年代。

その他:出血 感染 穿孔

穿孔:乳頭筋切開、ワイヤー操作、内視鏡挿入などに伴う。

出血:5つのRCTではERCP介入群とそうでない群で出血の合併症に差はなかった。

   (2.6% and 1.4%, respectively; P = 0.40)

呼吸不全の合併率が増える:原因はわかっていない・・・。

15 of 126 patients [11.9%] vs. 5 of 112 patients [4.5%]

odds ratio, 5.16; 95% confidence interval, 1.63 to 22.9; P = 0.03

 

Areas of Uncertainty

 1990年代から2000年にかけてのメタアナリシスでは、乳頭筋切開の有無に関わらず胆石性膵炎に対してはERCPは有効であるとの事であった。しかしその後のメタアナリシスでは胆嚢炎が無い患者では効果が乏しいとの結果であった。そのため、EUSやMRCPを施行する事が有効であるとされている。

 また疑問として内視鏡的胆石除去後に胆嚢切除を行うかどうかは賛否両論である。その疑問に答える論文としてLancet2002で120名の患者でERCP後に胆摘を行う群とそうでない群に分けた時に、そうでない群の方が胆石関連の合併が多く、さらにERCP合併や入院日数が増えるとの報告がなされた。症状が落ち着いた時点で手術を考慮すべきである。

 また胆嚢摘出術後の患者で急性胆石性膵炎の症状が出現すれば、ERCPはやはり行うべきである。その際にEUSやMRCPがあればいい指標になるので行うべきである。

 

Guidelines

イギリスで2005年に出されたもの

 重症胆石性膵炎では72時間以内にERCP行うべき

  上記イギリスのガイドラインは古い文献を参考にしておりやや時代遅れ

  ※胆嚢炎合併しか有効性は無い

アメリカで2007年に出されたもの

 重症胆石性膵炎におけるERCPの位置づけは賛否両論

  胆嚢炎合併症例では24時間以内に行う事が推奨される。

  胆管結石が強く示唆されるなら72時間以内に行う事が推奨される。

アメリカで2013年に出されたもの

  胆嚢炎合併症例では24時間以内に行う事が推奨される。

  明らかな胆管閉塞が無いなら24時間以内に行う必要性はない。


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