集中治療専門医への道

集中治療専門医になるべく日々修行の身である若手の医師のつぶやきや情報

致死的な発熱と発疹

2013年09月28日 | 日記

今月赴任先で皮膚科の講義を頼まれたので一部抜粋して皆さんにも共有しますね!

今回まとめるに当たって東京ベイ・浦安市川医療センターの先生のスライドも参考にしています。感謝!!

「発熱+皮疹」を考えるに当たって以下の④つを十分に考慮する事!
  ①生命に危険は無い?
  ②SMARTTTの鑑別法
  ③隔離が必要?
  ④外部からの持ち込み?

①生命に危険はないかどうかは下記を検討しましょう。
 ▲バイタルサインをcheckする
 ▲紫斑を呈する疾患は生死に関わる。

②鑑別法は下記「SMARTTT」と覚えましょう。

Sepsis SIRS+肺炎球菌、ブ菌、緑膿菌、電撃性紫斑病、壊死性筋膜炎
Meningococcemia 若年者、ショック、紫斑、死亡率20%
Acute endocarditis 紫斑、心雑音、心不全
Rocky mountain spotted fever 米国、2-6日前にインフル症状あり、3-5日後に発疹
Toxic shock syndrome 突然発症の高熱、戦慄、下痢、全身の筋肉痛、びまん性紅丘疹、原因不明のショック
Toxic epidermal necrolysis SJSとの関連
Travel-related infection アフリカの旅行歴、突然発症、紅斑→丘疹

Stevens-johnson syndrome
 ・原因薬剤への暴露(アロプリノール ST合剤 フェニトイン NSAIDs)
 ・死亡率高い(30-50%)
 ・症状:発熱 咽頭痛 結膜炎 掻痒感
 ・皮膚:ニコルスキー現象
 ・水泡 / 表皮剥離:SJS < 10%、TEN > 30%
 ・死亡率:SJS 1-3%、TEN30-50%
 ・合併症:敗血症 ARDS 肝障害
 ・治療:被疑薬中止

DIHS
 ・原因薬剤開始後2-6週間で発症
 ・高熱、好酸球増多、皮疹、肝障害
 ・皮疹:顔、特に眼瞼周囲の浮腫
 ・好酸球増多 > 1500
 ・合併症:甲状腺炎、肺炎、心筋炎
 ・死亡率:10%
 ・原因薬剤の中止

AGEP
 ・原因薬剤投与後24時間以内
 ・原因薬剤の80%は抗生剤、特にペニシリン系、マクロライド系
 ・感染はまれだがウイルス感染、enteroviruses, parvovirus B19, adenovirus,EBV, CMV,andHBV
 ・口腔内・舌に潰瘍生じる
 ・self-limitedで2週間以内に良くなる

③隔離が必要?
 麻疹 風疹 ウイルス性は隔離必要

④外部からの持ち込み?
 病歴:アフリカへの渡航歴、突然発症の高熱・頭痛・筋肉痛、びまん性の紅丘疹から出血斑
 →エボラ熱 ラッサ熱 デング熱

まずは上記を考える事で少しでも苦手意識が拭えればと思います。Uptodateなどでは上記疾患の皮膚所見もたくさんありますので、参考にして下さい!


脳梗塞治療薬 ~エダラボン編~

2013年09月17日 | 日記

ようやく帰って来ました!

東京を15時に出て、23時過ぎに到着。今回は都内である会合で講義をする機会があり、その内容を一部皆さんに開示します。

 

テーマ「脳梗塞治療薬 ~エダラボン編~」

 先日JSEPTICのアンケートでneuro ICUについて集計したところ、脳梗塞治療薬としてエダラボンは実に80%の人が使用しているという結果でした。(詳細結果はアンケートを参照ください)

 私自身、研修医との時に何度か使用していたものの、そのエビデンスは?と問われると日本のガイドラインで「グレードB」として記載されているとしか知らなかったので、その販売の経緯についてまとめてみました。

エダラボン:1978年に脳の虚血によって生じる脳への障害の中でフリーラジカルが関与する障害が提唱され、それによるとフリーラジカルによって神経細胞や血管を障害し、脳浮腫や神経細胞死を引き起こすとされています。その後エダラボンは1980年代後半に脳梗塞のマウスモデルでフリーラジカルの産生を抑えることで抗脳浮腫作用や神経細胞死を抑制することが示された薬剤で、2001年に販売に至った薬剤です。

効果を示す論文は2つあります。

1つ目:2003年に発表された第Ⅲ相臨床試験

患者: 発症後72時間以内でJCS30以下の脳梗塞(脳塞栓症及び脳血栓症)の患者

介入/比較:エダラボン vs プラセボ

結果:最終観察時のmodified rankin scale

→mRSを用いた機能評価を両群間の差を用いて検定するウィルコクソン検定の結果で解析をするとエダラボンを使用する方がプラセボ群より機能評価の改善度は有意差を持って高いという結果でした。24時間以内に絞ったサブグループ解析ではその傾向がより顕著だという事でした。

2つ目:2009年に発表されたEDO試験(Edaravone vs Ozagrelの頭文字をとった試験で非劣性試験)

患者: 発症24時間以内のJCS3以下であった脳梗塞患者

介入/比較:エダラボン vs オザグレル

結果: 最終観察時におけるmRSおよびNIHSSの改善度

→予め先の試験で設定される効果を範囲を示す非劣性の基準値(f値と呼ばれるもの)を上回る結果が得られ、エダラボンはオザグレルに劣らないとの結果でした。

上記2つともの試験でアスピリンの使用が無い点、評価対象が主観的評価であるという点、など問題もありますが、ある程度効果があるという報告でした。

一方アメリカでは、SAINT ⅠとSAINT Ⅱ試験というエダラボンと同効薬でRCTが組まれたのですが(サンプルサイズも3200例と圧倒的に日本よりでかい!)、結果、予後や神経学的評価についてプラセボと有意差なしという結果でした。AHAやACCP、更にはESO(European Stroke Organization)、といった欧米のガイドラインには現在のところ一切触れられていないというのが現状です。

ただ、t-PAとの併用で出血性梗塞が減ると言った報告もあるので、使用頻度の高い本邦で質の高いRCTを立ち上げる事が出来れば!とも思います。

みなさんの施設でも使用している方が多い薬剤だとは思うので、各施設でどういう感じで使用しているのかまた教えてください。