集中治療専門医への道

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腹部レントゲン検査 ~読み方~

2013年12月24日 | 日記

腹部レントゲンってあまり撮影する機会が無く、レジデントに質問されたものの、あまりうまく説明出来なかったのでまとめてみました。

原則:腹部単純写真では、金属、石灰化、水、脂肪、空気の5段階のものしか区別できない!その中で、

①    全体的なgas patternに注目

②    腸管外ガス(extraluminal air)の有無

③    異常な石灰化(calcification)の有無

④    軟部組織腫瘤(soft tissue mass)の有無

 に沿って説明します。

 

①腹部ガスのパターン

→見えているすべての腸管ガスは嚥下によって生じたガスに過ぎない。

 

 a) 胃のガスパターン

胃内は通常何時でも空気がある。

例外:直前の嘔吐 or NG tubeによる吸引

 b) 小腸のガスパターン(3の法則

正常でも3個以内の拡張していない小腸loopに少量の空気がある。

正常径:3.0cm 壁の厚さ:3.0mm

 c) 大腸のガスパターン

直腸・S状結腸内には何時も空気がある。

糞便は多発性気泡、半固形状の塊り(semisolid appearing mass)として認められる。

空気嚥下症のように大量の空気を嚥下した症例では、無数の多角形の空気を含む腸管loopを認める。

正常径:6.0cm(回盲部では9.0cm)  

腹部液面像のパターン 

 ) 胃の液面像

胃の内腔にはほとんど何時も液体がある。

従って、立位胸・腹部Xp + 側臥位Xpでは基本的に液面形成(air fluid level)がある。

 ) 小腸の液面像

正常でも2-3の液面形成はある。

 ) 大腸の液面像

大腸の機能の一つに水分除去があるため、通常大腸の液面形成はない。あっても僅か!

但し、抗コリン薬や蠕動抑制薬使用の際には液面形成する場合がある。

 

??大腸と小腸はどう見分けるの??

 ① 大腸

肝臓が占拠している右上腹部を除いては、腹腔内の辺縁付近・周辺に位置している。

haustraは通常、大腸内腔を壁の片側~片側へ完全に横断するようには観察されない。

 ② 小腸

腹部の中央領域に位置している。

輪状ヒダ(valvula)は典型的には壁の片側~片側へ腸管内腔を横断するように認める。

小腸は拡大しても最大径で5cm程度であるが、大腸は時に小腸の数倍のsizeまで拡大する。

 

??急性腹症の際の腹部レントゲンの種類は??

 ① 腹部単純写真背臥位像(spine view or scout view)

・ガスパターンの全体像の把握

・石灰化の有無

 ② 腹臥位像(prone view) or 直腸側面像(lateral rectum view)

・直腸 and S状結腸内のガスの同定(左記臓器は腹臥位にて最も高位に位置する)

・上行 and 下行結腸内のガスの同定

 ③ 立位像(upright view) or 左側臥位像(left lateral view)

・腸管外ガスの観察

・液面形成の観察

・左側臥位ではfree airは肝臓辺縁の外側に認める。

→右側臥位だと胃泡や大腸脾湾曲部が混在し、free airと見分けがつきにくい。

 ④ 胸部立位像(upright view of the chest)

・横隔膜下のairの観察

・肺底部肺炎の観察

・胸水の観察(膵炎では左胸水、卵巣腫瘍では右胸水 or 両側胸水)

 

②腸管外ガスに関して

・臥位あるいは立位の 2 枚の正面像を撮影、腹腔内遊離ガス像を目的とする場合には立位 1 枚を撮影

・左右の横隔膜は十分画面に含まれていることが重要

・立位保持が困難な場合には左側臥位でのAP撮影を行い,肝右縁への遊離ガス像の描出を期待する。体位を保持したあと 3 ~ 4 分時間を置いて撮影すると遊離ガスの検出率が高くなるとされている。

 

③異常な石灰化に関して

正常石灰化

 ① 静脈石:加齢により生じる石灰化した静脈血栓であり、女性の骨盤内によく認める。

 ② 肋軟骨石灰化:加齢により生じる石灰化であるが、胆嚢や腎臓と重なることで結石と見誤ることがある。しみのように見える(speckled)。

 ③ 大動脈、腸骨動脈、脾動脈などの動脈硬化による石灰化などがある。

異常石灰化

 ① 胆石、尿路結石などでカルシウムを含む成分が多い場合はレントゲンに写ることがある。

 ② 肝臓に多発性のリング状の石灰化をみればエキノコッカスを考える必要がある。

 ③ 歯牙の形は卵巣奇形腫の石灰化を疑う所見である。

④    軟部組織腫瘤(soft tissue mass)の有無

・軟部腫瘤の評価に際し、レントゲンで石灰化が写る場所で、骨肉腫と滑膜肉腫の鑑別が可能となる。

腫瘤に脂肪が含まれているかどうか(腎の血管筋脂肪腫、卵巣皮様嚢腫など)などは、さらにわずかな濃淡の変化を診断しなければならないので、この診断は名人芸のレベルに近いものとされ、ここ最近ではCTで代用されることが多く、ここまでの知識は求められていないとのこと。


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