集中治療専門医への道

集中治療専門医になるべく日々修行の身である若手の医師のつぶやきや情報

CKDでCre≧3である患者がCHFである際にACE-I/ARBを使用するべきか?

2014年04月20日 | 日記

clinical question

Cre : 5.6のpre-end renal stageを有する患者のCHF

ACE-Iの使用は控えるべきか?

という問いに当院レジデントU先生が調べて来てくれたので載せます。。ありがとう!R先生。

 

日本の薬剤添付文書:レニベース(エナラプリル)

用法・用量に関する使用上の注意

(1)重篤な腎機能障害がある患者

クレアチニンクリアランスが30mL/分以下

or

血清クレアチニンが3mg/dL以上

では投与量を減らすか、もしくは投与間隔をのばすなど考慮

(2)・・・・

(3)・・・・

と記載あり

 

文献的考察

Managing Hyperkalemia Caused by Inhibitors of the Renin–Angiotensin–Aldosterone System

N Engl J Med 2004

•一般的にGFR30を高カリウム血症の可能性が上がり始める閾値として考えるべき

•糖尿病性腎症の場合はGFR30-90でも高カリウム血症のリスクが高いと考えるべき

•CKD患者では、腎機能のみを<ACEを開始する/再開する>の基準にするべきではない

  –GFR30以下で使用する際にはクロースモニタリングが必要だが

 Withholding these drugs solely on the basis of the level of renal function will unnecessarily deprive many patients of the cardiovascular benefit that they otherwise would have received, particularly since numerous steps can be taken to minimize the risk of hyperkalemia. 

•腎機能低下のみを根拠にACEなどの薬を使用しないことは、心血管に対するベネフィットを不必要に挙げることになる

  -ではどのように投与するればいいか!? 

•GFRを計測

•可能なときはいつでも

•K排泄を障害する薬は中止

•ハーブ使用の有無も聞く

•ジゴキシン様作用のある漢方も

•NSAIDsやめる

•K含有の少ない食事をすすめる

•代用塩(salt substitute)使用の有無も尋ねるカリウムを添加した低Na調味料)

•サイアザイド利尿薬もしくはループ利尿薬を処方する

•CKDのアシドーシスを是正するために水酸化ナトリウムを処方する

•低用量からACE/ARBを開始する

•ACE/ARB開始から1週間でK濃度を計る

•K>5.5ならば:薬の量を減らす

•ARBやアルドステロン受容体拮抗薬との併用が有れば切る

•スピノロラクトン併用が有れば25mg/日を超えないようにする特にGFR<30であれば併用しない

 これらのことをやってもK>5.5あれば中止

ちなみにカリウム含有量は下記のように知られている。

干し柿1580mg

アボガド1個1000mg

干しひじき10g440mg

バナナ1390mg

ほうれん草370mg

枝豆50グラム350mg

ジャガイモ1230mg

サツマイモ1450mg

ブロッコリー50250mg

キウイフルーツ1320mg

メロン100340mg

納豆1パック330g

春菊50g300mg

さといも1個300mg


心臓超音波検査

2014年04月13日 | 日記

心臓超音波検査をたまにするのですが、正常値や測定方法などを忘れがちだったので少しまとめてみました。明日から毎日一人当てる!という強い気持ちを持って頑張ります。。

正常値:身長や年齢により若干異なる。

  LVDd/s 40-50/20-30

  LAD 20-40  Ao 25-40

  IVS/LVPW 9-11

  FS > 30%  EF > 60%

 

①IVSd、LVPWd、LVDdを測定

拡張末期、つまりQRS直前で測定

 求心性肥大:AS、高血圧、二次性心筋症、心筋症

  二次性心筋症:アミロイドーシス(特にMM由来)、Fabry病、サルコイドーシス、薬剤

         アルコール、ヘモクロマトーシス、甲状腺機能異常、筋ジストロフィー

 非対称性心肥大:HOCM

 左室拡大:弁膜症、虚血性心疾患、拡張型心筋症

 

②LVDsを測定

収縮期、つまりT波前後で測定

 

③LA、Aoを測定

LAは収縮期、つまりT波前後で測定

Aoは最大径で測定

 

④収縮能の評価:EFを測定、FSを測定

Mモード法による測定

 FSをMモードで測定することの問題点:左室が一様に動いている事が前提であり、局所壁運動低下、右室負荷による奇異性運動があるときは評価が難しくなる。また、ビームが心室中隔と左室後壁に直角に入っていないと同じく評価が難しくなる。

 EFをMモードで測定することの問題点:左室容量を算出するさい、楕円形であることが前提であり、右室負荷による奇異性運動があるときや心室瘤があれば評価が難しくなる。

シンプソン変法による測定

 Mモードよりは正確であるが、やはり右室負荷による奇異性運動があるときや左室形態に変化があれば評価が難しくなる。また、2chと4chでは10%程度の誤差があり、信頼性が乏しい。

 

⑤拡張能を評価:E/A、E/e’、DcT、Tei Index:入射角は20度以内で誤差は6%程度

 

正常

拡張障害

偽正常化

拘束型

E/A

1~2

<1.0

1~1.5

>1.5

DcT

160~240

>240

160~200

<160

正常でも50-60歳代には1.0以下となる。

ただ、前負荷、心拍数(100以上)、不整脈、僧帽弁疾患、で大きく影響を受ける。

 

E/e’は心房細動や頻脈でも使用可!

e’ < 8cm/sec以下で悪く、E/e’ 10程度が正常でそれ以上だと悪い

 中隔でe’が小さいので、E/e’は大きくなる。

 

Tei Indexは正常が0.3-0.4程度でそれ以上だと、拡張能障害と判断される。

 

⑥局所壁運動評価

評価方法

 normokinesis:内膜面の運動、thickeningが正常

 hypokinesis:健常部に比較し内膜の運動、thickeningも減少

 akinesis:全くなし

 dyskinesis:収縮末期の内膜が拡張末期よりも外側に膨隆し、thickenigが全くなし

 

4ch:心尖部の壁運動を見る事でLADがやられているかどうか評価

2ch:下壁の壁運動を見る事でRCAがやられているかどうか評価

3ch:後壁の壁運動を見る事でLCXがやられているかどうか評価

 

その他

 心筋梗塞後であれば

  心室瘤、心室中隔穿孔、乳頭筋破裂、虚血性僧帽弁逆流症(tethering、ischemic MR)、壁在血栓などもエコーで評価

 

⑦SV(stroke volume)を求める。

 3chでAo弁下でLVTOを測定し、長軸から求めたAVAからSVをもとめ、そこからCOを測定する。さらに、SVRを求める。

SVR 800-1000

計算式 (MAP - CVP) / CO  X 80

SVRは心不全でACE-I投与前後で変化を見る事で効果を判断することも可である。

 

⑧弁膜症の評価

 M弁:Carpentierの分類で評価

  前尖:A1-A3 後尖:P1-P3に分かれる。心臓血管外科術後などで評価することが大事

 tethering:拡張型心筋症や、心筋梗塞後に見られる乳頭筋が外側に引っ張られることで起こるM弁逆流症

 T弁:TR Vmaxは2-3m/sec程度が正常。下記推定右房圧から右室圧を推定できる。

    右室収縮期圧は肺動脈収縮圧を近似され、肺高血圧を評価できる。

    右室圧:正常は30mmHgまで。

 A弁:弁面積の正常は3-4cm2程度。弁口面積や圧較差で重症度を判断

<colgroup><col span="4" width="77" /> </colgroup>
  弁口面積 最大血流速度 圧較差
軽症 >1.5 <3.0 <36
中等症 1.5~1.0 3~4 36~64
重症 <1.0 >4.0 >64

 

⑨IVC測定

下大静脈(IVC)径から推定右房圧

 2.0cm以下 呼吸性変動あり(50%以上) 5mmHg程度

 2.0cm以下 呼吸性変動なし       10mmHg程度

 2.0cm以上 呼吸性変動あり(50%以上) 15mmHg程度

 2.0cm以上 呼吸性変動なし       20mmHg程度