最近CVC挿入を自分でする機会が減っていますが・・・だからこそその意味や適応などまとめてみました。
Introduction
1929年にドイツで最初に挿入が行われたとのこと。
werner frossmanが自身の肘静脈に尿カテーテルを挿入したのが最初です。その後全世界に広まり、1994年にはイギリスで200,000例/年でCVカテの挿入が行われるようになった。CVカテは有効性は疑う余地はないが、一方で15%以上の合併症が指摘されている。
what are CVC?
内頚、鎖骨下、鼠径から挿入
右から挿入:Zone Bが良いとされる。
右内頚:13-15cm 右鎖骨下:13-15cm
左から挿入:Zone A or C
左内頚:15-18cm 左鎖骨下:15-18cm
what are the indication and contraindication to CVC?
適応
Access for drug
抗がん剤 カテコラミン TPN peripheral accessが困難 長期投与(抗生剤など)
Access for extracorporeal blood circuits
腎透析 血漿交換
Monitoring or intervention
CVP 中心静脈サチュレーション PAC ペーシング 頻回の採血 TTM(target temperature monitoring)
※CVP測定のみでCVCを挿入する事は徐々に廃れて来ている。システマティックレビューでCVPと血管内水分の相関性、さらには輸液に対する反応性における相関性が無いと言われている。
※最近ではleg raisingの有効性が言われている。
禁忌
凝固異常 血小板減少 気胸 血胸 血栓による血管閉塞 感染 同側にすでにCVCが挿入されている
what types of CVC are available and how are they selected?
種類は4つ
①皮下に這わせる必要がない 期間:数日から3週間程度
②PICC 期間:数週から数ヶ月
③皮下トンネル式 期間:数ヶ月から数年
④埋め込み型 期間:数ヶ月から数年
それぞれに特徴がある。
①:末梢静脈ルートの確保が困難 カテコラミン投与 短期間のTPN 抗がん剤
②:末梢静脈ルートの確保が困難 中期にわたる抗生剤投与 TPN 抗がん剤
③ / ④:長期間の抗がん剤投与
At what anatomical site should I insert the CVC?
様々なファクターで挿入部位は決める。
挿入の適応、投与期間、以前に投与されていた場所がどこか、禁忌がないかどうか
合併症関連合併症のリスクは内頚と鎖骨下で差がないと言われている(コクランレビュー)。
短期間であればカテーテルコロナイゼーションや血栓のりすくは鼠径部より鎖骨下より多いと言われている。(それぞれRR:6.43 / 11.53)一方で内頚、鎖骨下、鼠径で感染合併の有意差は無いとの報告もある。結果、エコーでの描出のことから内頚が久しく第一選択となっている。ただ、透析の場合は、鎖骨下、鼠径ではカテーテル関連合併症に有意差は無いとされるが、内頚の場合は機械的合併症(圧アラームなど)が多いとの報告もある(コクランレビュー)。現在のKDIGO(kidney disease Improving Global Outcomes) guidelinesでは右内頚、鼠径、左内頚、鎖骨下の順で透析の際のカテーテル挿入の優先順位を出している。
technique of insertion a cannula into the internal jugular vein.
Skin preparation
2%クロルヘキシジン(ポビドンヨードよりカテ感染のリスク軽減とのメタアナリシス)
Ultrasound guidelines
NICE(National Institute for Health and Care Excellence) guidelinesがエコー下を推奨
what are the complications of CVC?
Immediated complications
mechanical : 動脈穿刺 動脈留置 出血 気胸 血胸 不整脈 気道損傷 タンポナーデ
thromboembolic:ワイヤー血栓
Delayed complications
mechanical:タンポナーデ 静脈閉塞 血栓
Infection:CRBSI
thromboembolic:カテ関連血栓 PE 空気塞栓
Infective complications
BMJ2013の報告では、イギリス215ICUsで20ヶ月の経過の中で2/1000であった。ただ血流感染を起こすと死亡率、ICU stay、医療負担、などが増加するため重要な問題である。
what are the clinical signs of line infection?
臨床症状で特異的なものはなく、熱のみであることが多い。挿入部の発赤や膿性浸出液などは特異度は高いが感度は高くないとされる。他の感染が否定され、挿入部の発赤が認められてから熱が出れば疑われる。
診断基準(CDC definition)
・CRBSI
・CVCが挿入されている。
・SIRS+感染:敗血症の状態であり、かつ他の感染否定
・カテ感染がLaboで疑われる
・カテ抜去→定量 / 半定量的にカテ先を培養し陽性
・カテ残存→カテからの培養と末梢の培養が一致
時間差で採取した培養が一致
・CLABSI
・SIRS+感染症
・48時間以上の挿入
・培養で疑わしい:GPC, CNS, candida,腸球菌
・他の感染が否定的
what are the common causes of CVC infection or colonisation?
colonisation : ルーメン外 or 中
ルーメン外:挿入早期に生じる 手技に際するものなど
中:挿入後期に生じる シュアプラグの扱いなど
Infection:診断基準は上記
Do antimicrobial or antiseptic impregnated catheters reduce the rate of CVC-BSI?
抗菌活性のある物質を塗り込んだカテーテル(クロルヘキシジンやスルファジアジン銀など)の使用でカテ感染は減少させることが出来る(コクランレビュー)。しかしICU以外では死亡率や感染の割合を減らす事が出来なかった。現在草稿中のガイドラインでは5日以上の挿入期間が見込まれる際やカテ感染が高率で起きている部門での使用が勧められている。
Do muti-lumen CVC increase the risk of infection?
メタアナリシスではmultiの方がsingle lumenよりわずかに感染のリスクが高いとされるが、質の高いRCTのみで見ると有意差はないとされる。基本的には最小限のlumenを使用するようにする。
Do antibiotic prophylaxis reduce infection rates?
コクランレビューで挿入間にバンコマイシンorテイコプラニン投与する事で感染を減少させないとされる。現時点ではルーチンで抗菌約の予防投与は勧められておらず、逆に耐性の問題から使用しないことが懸命である。
what interventions will reduce infective complications?
dressing剤でどれが有効であると言ったものはない。
ガーゼとテープ固定でもポリウレタン固定でも一緒。ガイドラインでは透明のポリウレタンで固定するよう勧められている。固定をルーチンで変える事は勧められておらず、血液や水で汚れたり剥がれてしまいそうになれば変えればよい。シュアプラグを扱う時はクロルヘキシジンで消毒する。
カテ自体の入れ替えもルーチンでは必要は無い。カテの入れ替えで血栓のリスクが減り、colonisationや感染のリスクが上がったとのメタアナリシスがあるが、いずれも有意差は無かった。基本的にはカテ感染が疑われる際はガイドワイヤー下で入れ替えはしないことが望ましいが、合併症のリスクが高い、現在挿入中のカテは感染が生じていないなどを満たせばガイドワイヤー下で交換は可能。
クロルヘキシジンで毎日挿入部を消毒する事で感染のリスクを下げる事が言われている。
大事なことは常に何時抜くかを考慮する事である。
system based strategies to reduce rates of CVC-BSI
・手洗い
・クロルヘキシジンでの消毒
・鼠径部を避ける
・不必要なカテの抜去
その他VAP予防や良好なコミュニケーションもカテ感染を下げるのに有効とされる。
what are the risk and complications of CVC related thrombosis?
カテーテル挿入だけでも血栓のリスクはあるが、カテーテル挿入が必要である患者はそれ以外でも血栓のリスクがある。
患者要因:過凝固状態 癌 年齢 DVTの既往
デバイス要因:素材 ルーメンの数 カテ先端の位置 ライン感染 挿入部位
症状:さまざま 患側の腫脹 疼痛 発赤 微熱 コラテの拡張 肺塞栓(0-17%) 感染(血栓は恰好の培地) ライン閉塞
頻度:2-67% 症候性となると0-28%
また、post-thrombotic syndrome(PTS)といって、長期間の渡るDVTに関連した合併症もある(静脈弁の損傷から血流が滞り更に血栓傾向が強まる事で左記症状が起こること)。症状は疼痛・腫脹・潰瘍など様々である。治療は弾性ストッキングである。
How can catheter related thrombosis be prevented?
一部抗凝固療法によりカテ関連血栓のリスクを下げるとの報告もあるが、肺塞栓や予後には寄与せず、現時点では抗凝固療法は予防としては無効であるとされている。
how should I treat catheter related thrombosis?
抗凝固療法:血栓合併⇩ PTS⇩ 血栓再発⇩
適応:DVT要する患者
ガイドラインでは担癌患者で症候性カテーテル関連血栓症のある患者は三ヶ月の抗凝固療法が推奨されている。血栓溶解療法は賛否両論だが、世界中で広く行われている。
Peripherally inserted central catheters
適応:長期間の抗生剤投与 TPN 抗がん剤 輸血 採血
期間:数ヶ月の留置が可
これまでのCVCよりも合併症が少なく、最近日の目を浴びているが、メタアナリシスでは上腕での血栓のリスクが高いとの報告もある(特に重症患者や担癌患者)。
また、PICCの方が先端の位置異常、血栓性静脈炎、カテ機能異常の頻度が多いとの報告もある。しかも、2012年に出さされたAm J Med / Anaesthesiaでは既存の物に比べて感染の差は無いとのことであった。これまで好意的に思われて来たPICCだが、挿入の際には要注意を。
Caring for the CVC
保護シールの交換:週に1回 or 汚れた可能性があるとき(血液のしみだしなど)
その際は、クロルヘキシジンで挿入部を消毒する。
使わないラインは週に1回ルーメン内を生理食塩水で血液の逆流を確認しフラッシュする。
基本はシャワーのみで湯船につかったり、泳いだりはしない方が良い。また、激しい運動は控えるようにする。埋め込み型であれば気にしなくてもよい。
いろいろ書きましたが、最近CVもPICCの入れる機会が無い自分に喝を入れるために今日適応のある症例が来たら入れます!特に鎖骨下は以前勤めていた病院で上の先生があまりに上手でほれぼれしていました。自分もそうなれるよう頑張ります!