詩絵里(★シェリー★)の星の囁き達

尾崎詩絵里(★シェリー★)の自作恋愛小説及びポエム、写真専用部屋です。掲載文の引用、転載は固くお断りいたします。

小説「天国のコンサート~尾崎豊に捧ぐ~」第四回

2010年11月05日 | 小説~尾崎豊モチーフ~
「天国のコンサート」第四回

第三章 現実

「痛い・・・体中が痛い」
体中が痛かった。ボーっとした頭のまま、うっすらと目をあけた。
龍のコンサートの夢をみていたのかしら・・?

「美奈!!美奈!!よかった・・・よかった・・」
そこには、真っ青な顔をした母親が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

「ど・・・どうしたの・・お・・おかあさん」
口が痛むためまだ、上手にロレツが回らなかった。

「あなた、自転車のままトラックにはねられたのよ。一度心臓が停止してその後は昏睡状態に・・・今夜が山場だって先生に言われて・・・」
母親は、泣きながらも早口にまた、再び美奈が昏睡状態にはいらないように、状況を説明した。

私・・・・はねられたんだ・・・一度・・・死んだの????

「お・・・お父さんは?」
「となりの集中治療室・・・」
「え・・・お父さんも??」
「じゃなくて奈美が今日、イギリスから帰国して、自宅に帰る途中で、乗っていたタクシーとトラックが衝突して、同じように昏睡状態になって・・・」

というとまた母の両目から大粒の涙がポロポロとこぼれた。

「まったく、双子だからってそろいもそろって、自分達の誕生日に事故にあうなんて・・・
奈美も一度心肺停止に陥って、昏睡状態のままなの・・・」
「母さん。」
そういうか否か、父親が私の集中治療室に入ってきた。

「何??」ドキっとした顔で、心配そうに母親が父親の顔をみた。

「美奈・・・意識が戻ったか・・・よかった。
奈美も今ちょうど意識が戻った・・・」

「よかったよかった」と父親と母親は二人で抱き合って涙を流しつづけた。

「それで、奈美が、龍は?龍は?って訊くんだよ。私に・・・・龍って奈美が好きだったなんとかっていう歌手だろう」

「神崎龍。おねえちゃんが愛してやまなかった、アーティストよ。最高の」
「あら珍しい。美奈はまったく興味がなかったのに・・・・」
「でな・・奈美がその龍って子のコンサート会場にいたはずだって・・・」

一瞬耳鳴りがするほどのショックを受けた。
もしかして私と姉は一度、ちょうど生死の境にいたときに、一緒に天国に行き、龍のコンサートに行ったのでは・・・まさか・・・そんな・・・非現実的な・・・でもまったく同じ夢を見るなんて・・・・・

「で、奈美は美奈と一緒にコンサートにいって、その龍が、自分達のために誕生日ソングを歌ってくれたって。」
「うん。「心のままに」っていう素敵な曲よ。そして龍は私たちにこういったわ・・・
『もうそろそろ帰る時間だ。今日は俺のコンサートに来てくれてありがとう。
自分自身を大切に、そして生きている時間を、毎日毎日を大切に生きて欲しい。
そして、俺が生み出した曲を是非、今後の世代に歌いつないでいってほしい。
今日は本当にありがとう・・・・』

って・・・」

いつのまにか、美奈の両目から涙がこぼれてきてとまらなかった。

「お父さん・・・・これって」
「母さん・・・・奈美もまったく同じことを・・・」
「きっと私たちのことを龍がこの世に送り返してくれたんだわ・・・・」
「母さんとりあえず、わたしは奈美のところにいってこの信じがたい話を告げてくるよ・・・」
「奇跡だわ・・・奇跡だわ・・」といって母は、両手を組んでまた、泣き出した。


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