goo blog サービス終了のお知らせ 

新月のサソリ

空想・幻想・詩・たまにリアル。
孤独に沈みたい。光に癒やされたい。
ふと浮かぶ思い。そんな色々。
(主・ひつじ)

花篭に舞う

2025-04-03 00:00:00 | Short Short

その瞳が一瞬陰った。
そのとき揺らいだ本心は瞳の奥へと隠された。
本当は時を待っていたけれど、花は開くことなく森の奥深くへ紛れてしまった。

___もう探さないで。

ぼくはまた花開くことを、知らず夢見てしまった。
だから肌にさわる風に託したんだ。
遠くまで、ずっと遠く、ここではない場所へ。

森は鬱蒼とぼくを隠し、だけど時々こぼれた彩光がまっすぐにぼくを照らすとき、あの花まつりの夜の賑かな灯りと、君の横顔を思い出すんだ。

花篭を頭に載せ、君はぼくに手を差し出す。
君はやさしくぼくを掬い取ろうとしたけれど、みんなが笑ったその顔は君のそれとは違っていて、ぼくはその手を退けたんだ。
みんなが君のようだったらよかったのに。
ぼんぼりに揺れるいくつもの影が、その罪も知らず踊っていた。


森の胞子がぼくを深く包みこむ。樹海の夢が降り積もる。
月が細く照らす夜、君の花篭に舞う夢を見る。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 毛玉を取る | トップ | 零れ桜 »

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Short Short」カテゴリの最新記事