咬合と全身 ホワイトニング

咬合を介して顎関節症と不定愁訴への歯科的アプローチ

歯周病予防・ムシ歯予防・口臭防止を兼ねたMIホワイトニング

8月24日(金)

2007-08-24 19:24:32 | Diary 日記
顎関節症Ⅲ(復位を伴う)と不定愁訴で5月に来院。
機能的咬合分析後、CMO療法を開始。プレートはRe-PositioningからTMDの改善と共にStabilitationに変更。歯科由来の不定愁訴も改善されたので再評価と共に模型診断を行いました。治療中は操体法を指導しましたが、これは患者に気に入って貰えたようで、身体が柔らかくなったと喜ばれました。

その結果、咬頭嵌合位より前方に顆頭安定位が位置するために臼歯部は低位となります。
プレートを外した直後からReciprocal Clickは時々発生するも、音は術前に比較して金属音からソフトな音に変わっています。

カウセリングでは、今の咬頭嵌合位では再発する可能性があるのでメタルレイの装着を勧めましたが、患者自身術前に比べると身体の調子が非常に良く、関節雑音も術前に比べると気にならない状態であり、開閉口運動も円滑で、更なる治療の意味が分からないようでした。

結果は、虫歯や歯周病の治療後、再度プレートを装着するとなりました。又それも調子の悪い時のみ装着するとなりました。

私自身、納得はしていませんが、と言うよりは治療するものと考えていたので、この結論は意外であり、CMO療法を理解していると思っていたのが理解していなかった事でした。これからは、患者に賢明な選択をして頂くために術前のみの説明ではなく、術中も定期的にCMO療法を説明して脳に刷り込んでいこうと考えました。それでも今回の様なような選択をされた時は、それは患者自身が決めることなので仕方ないでしょう。



経絡・・・その8

2007-08-24 13:37:56 | 歯科鍼灸
疼痛治療への鍼灸の利用
最近では西洋でも疼痛緩和のために鍼灸が利用されるようになってきました。しかし西洋医学では鍼灸のエネルギー理論は理解され難いために、その鎮痛効果を説明するために西洋医学的な理論で説明が試みられています。

R.メルザックとP.ウォールによって提唱された「ゲートコントロール理論」は、ある一つの結果を東洋医学と西洋医学の2つの異なる方向のどちらからも説明できることを示すよい例といえます。

「ゲートコントロール理論」とは、末梢の神経から脊髄に入ってくる痛みは脊髄にあるゲートの開き具合で調節され、このゲートは脳からの命令や末梢からの他の知覚神経からの刺激で狭めることができるものです。痛みのインパルスが脊髄に入力されるよりも上位のレベルの末梢神経に鍼刺激をおこなえば、痛みを伝えるゲートが閉ざされ、ゲートが閉じていれば痛みのインパルスが中枢神経に送られなくなるわけです。

疼痛治療を東洋医学的にみれば、原因や病症が異なっていても、どんな痛みにも共通した東洋医学的痛みの性質による分類と治療法が存在します。
すべての疼痛を「虚痛」と「実痛」という2種類の痛みの性質に弁別して治療します。その識別方法は、虚痛の場合は、疼痛部位を触ったり圧したりすると疼痛が軽減すること、また暖めると疼痛が軽減することです。また、実痛の場合は、疼痛部位を触ったり、圧したりすると疼痛が増悪すること、また冷やすと疼痛が軽減することです。
 
実痛は虚痛と逆の性質の痛みで、治療も虚痛と実痛とでは対照的な治療法となります。虚痛の場合、多くは虚証であり、局所のツボ(標治法)がよく、そして強い刺激(鍼通電刺激も含む)が有効な場合も多いです。一方、実痛はその反対で、多くは実証で、局所は刺激しないで遠隔のツボを取穴するのがよいと考えます。
痛みの原因や病証が異なっていても、この痛みの性質から治療法を決定することができます。患者の体質・病因・病態・病期を考慮して行うのが鍼灸治療の基本的姿勢ですが、疼痛治療においても同様です。

脊髄への電気刺激療法は、ゲートコントロール理論と同じ原理で、経皮的神経刺激装置(TNS)を使って脊髄を経由して脳へと信号を送っている皮下の末梢神経を微弱な電位変化を起こして刺激します。
このTNSによる疼痛コントロールの研究で、皮膚の特定の部位に電極をあてると、弱い電流が流れて鎮痛効果が増すという報告があります。この「特定の部位」とは、鍼灸師が鎮痛の目的で鍼刺激を行なっている部位と同じでした。


8月18日(土)

2007-08-22 19:25:04 | Diary 日記
カウセリング
約1年半ほど、CMO療法をしてきた患者がいます。患者と言ってもデンティストです。今年の5月頃、丁度1年が経過した時ですが、次の段階に入るために治療計画を立てました。が、このデンティストは過去に2回矯正治療を受けていました。又、丸山先生のスプリントを装着していましたが、「先が見えない」と言うことで中断。

主要な口腔内所見
・咬合平面は右上がり
・臼歯部はクロスバイト、特に左側
・頚椎は右に傾斜、回旋
となり、頚椎への歪みは現状の咬合状態も一因であると考えています。今はプレート装着によって、全身状態はマァマァ~良いとのことです。

プレートをバイトレジスターとして模型を咬合器に装着した上での模型診断による治療計画は、、、勿論、頚椎の状態は正常ではありませんが改善傾向は見られます。
1.上顎歯列弓の側方拡大
クロスバイト修正と犬歯誘導を付与するためには必要と判断
彼の意見
・矯正はしたくない。
・歯根が短いから動揺が出てくるかもしれないし、歯根吸収が
 起こるかもしれないので、不安。だから止めて欲しい。
2.咬合平面を水平にする
右上の補綴のやり直し並びにメタルレイの装着。左側も下顎に同様の処置
彼の意見
・麻酔はイヤだなぁ~
・できれば触りたくない。

今の全身状態を招いたものが歯科と関係あるなら、今の咬合が悪い。又、明らかに歯科的問題があるのでそれを修正することで、飛躍的な改善状態が見られるかもしれない。等をいろいろ説明しましたが、ことごとく治療方針を否定されました。
その結果、何年かかるかもしれないけれどもプレートを装着して、又半年ごとに作り替え?をしながら筋骨格系の変化を見ていくという風になりました。

このデンティストは何故!当院へ治療に来られたのでしょうか?
治すために来たのではないのでしょうか?
信頼して治療を受けようと思ったのではないでしょうか?
一般の患者なら、費用的な問題がなければ、必ずと言っていい位「お願いします。」と言われるのに、歯を削るのはイヤ! 歯が駄目になるから矯正はイヤ! 

最初にCMO療法はプレートを入れて歯科由来であれば、その症状の寛解或いは消失をはかり、次にプレートをバイトレジスターにして模型診断を行う。そして治療計画を立て、その計画通りに治療を進め、治療完了後に予後の経過をはかる。その時は補綴物であれば、その再補綴を!を行う。つまり、治療完了からが、ある意味、治療の開始になると言うことが分かっているはず。又、それがリハビリでしょう。

こと治療に関しては、常にBest iz Oneの立場に立って進めていかなければならないと考えていますが、歯科医学的にBest is Oneであっても、患者の諸条件下ではIt might be the worst that Best is One。昔はBest is Oneで患者と接していたのですが、この頃は治療計画の落とし所と、それに対して、自分自身にとって、それは妥協になるという思いを如何に断ち切るかです。
Best is One for PatientであってBest is One for Dentistryでは無いという事でしょうか。

Pankeyが言うところ、患者自身がその治療の必要性を感じていない時はHolding Programとして経過観察すれば良いのでしょう。だけど、親身になればなるほどその反動は大きいです。


8月9日(木)

2007-08-21 15:47:46 | Diary 日記

久々に名古屋までドライブしてきました。
と言うのも、某スタディグループへ2時間程度喋って欲しいと言われ、無い知恵を絞って話してきました。このスタディーグループは私の1期上の先輩方の集まりです。私がまだナソロジーに凝っている時、「顎関節とその治療」という内容で2日間話したことがあります。もう20年以上前の話です。

内容
咬合と全身、咬合と不定愁訴と言うよりは咬合の健康と全身の健康とのあいだには密接な関係があるということは、疑いようのない事実です。が、しかし、この考えかたは、米国を中心とした学会では否定されています。それは訴訟の大国、アメリカという状況も含めながら、学問的に実証することができないからでしょう。

実証できないからといっても、日常の歯科臨床にたずさわっていると、わずかな噛み合せの異常でも肩や首筋の筋肉が痛んだり、頭痛がしたりすると訴える患者さんを多く見ます。それら患者さんの噛み合せの異常を修正すると、不定愁訴というか不快症状も消えてなくなるというこをしばしば経験します。これは事実であり、多くの歯科医と歯科にかかっている患者さんたちも経験していることです。

咬合が原因でおこる不快症状を「咬合由来症」、「咬合関連症」や「噛み合せ症候群」等と呼ばれています。これらは勿論、学問的に認められた病名ではなく、一部の臨床家のあいだで使われている言葉です。

これと関連している病名に「顎関節症」がありますが、欧米ではTMD(Temporo-Mandibular Disorder)=側頭下顎部障害とよばれています。必ずしも顎関節のだけではなく、首や肩の筋肉や顔面の筋肉の痛みとも関連していることが多いので、私はCMD(Cranio-Mandibular Disorder)=顎頭蓋障害と呼んだ方が適切ではないかと考える一人です。

そのTMD、日本では顎関節症ですが、現在のところ、その原因を特定することはできないので、さまざまな原因がからみあって発症すると言われています。そのために一つの治療法だけでは対応できないようです。例えば、咬合治療だけで終わるのではなく、運動療法や心理療法、薬物療法などを組み合わせ、可逆的な治療にとどめるべきであるということが強調されています。治療のために歯を削ってしまうような不可逆的な治療は慎まなければならないということです。

あくまでも市井の一開業医の私見ですが、、、このような考え方に統一されつつある背景を考えると、TMD治療のなかで咬合治療というものがあまりにも前面に出過ぎて、強調され過ぎたということでしょう。又安易に咬合調整をやり過ぎたきらいもあるでしょう。その割には効果が乏しく、決定的な治療成績を挙げることが出来なかった。訳も分からずに歯を削ってしまい、かえって病状を悪くしていまったという事例が続出したことも事実です。

その結果、咬合治療は無効であり無関係であり、過剰診療であるとも言われ、それを裏付ける論文が多く続出しました。しかしこれらの論文のなかで取り上げられている咬合治療の概念は一面的であって全てを否定するにたる論拠とはなりえないというのが最近の考え方になりつつあります。

ある時期の私の咬合治療についてですが、特に咬合再構成は顎関節を中心に組み立てられてきた概念で、歯の接触様式は重要なことですが、あまりにもこだわった治療法を展開してきました。この考え方はTMD治療に有用ではなく、結果的に補綴修復の歯科臨床でもあまり有用ではなかったと考える次第です。

先ほどの考え方に対して、神経筋機構(Neuro-Muscular System) を重視する考え方が約30年ほど前にでてきました。具体的にいえば、神経と筋肉がリラックスして最も楽な下顎の位置を診断と治療の基準にするという考えかたです。これを下顎安静位と言い、咬合がこの安静位を乱していまい、そのために神経と筋肉が緊張し、過緊張の状態(凝り)や疲れ、自律神経失調などが起こるのではないかと考えています。更に、下顎骨は頭蓋骨のバランサーの役割をし、頭蓋骨の重心と体幹の重心を位置させる役目も担い、身体の中心軸と重心力線を一致させる。それによって筋骨格系の安静をはかっている。

この考え方もまだ学問的には十分な論拠のあるものではありませんが、この考え方で診査・診断を行い、治療をすると治療成績が格段と向上します。しかし、この考えも新しい知見が出て、10年後、20年後には間違っているかもしれません。逆に、実証されて確立されたものになるかもしれません。開業臨床医にとって、常に自分の治療法が唯一正しいものではないという考えの中で、第三者的に、批判的に見つめていき、修正を加えていくことも重要ではないかと考える次第です。

以上の内容を話してきたのですが、、、、
久々に諸先輩方とお会いして、楽しい一時を過ごさせて頂きました。


フーッと思ったこと。

2007-08-18 15:16:52 | 臨床のヒント、思いつき
正常咬合の人が、経年的に左右均等に咀嚼していくと、臼歯部の自然咬耗によって自ずと低位咬合になってくる。と同時に下顎骨体は後上方に移動する。前歯部のOver Jet & Over Biteは増加し、結果的に前歯部の保護となる。
更に口腔周囲筋機能が正常で、生理的な下顎安静位を有し下顎骨自体トルク・ロール・ピッチなどの歪みが無いなら、また機能的状態での上下歯牙接触時間が報告されている5~15分とするなら何ら問題がないと考える。

どちらにしてもパラファンクションを除くと上下歯牙の接触時間を5~15分とするなら、何ら問題を生じることがない。では、パラファンクションを如何に無くすかと言うことであるが、吸啜運動から始まって咀嚼、嚥下運動や発音・構音が正常で、口呼吸ではなく鼻呼吸であれば良いと言うことになるのでしょう。そうすれば混合歯列期の歯牙交換も円滑に行われ、頭蓋骨の成長も問題なく行われるでしょう。

逆に言うならば、成長期の成長が正常でない人にはパラファンクションを生じる可能性は高くなるでしょう。これら肉体的(筋骨格的)成長以外にも精神的成長も必要でしょう。
例えば、ストレス。パラファンクションはストレス発散の役割も担っているのでストレスに強い強靱な精神力も必要になってくるでしょう。

本来の歯科医療は、以上の事柄を踏まえて如何に精神的、肉体的に正常に成長させるかであって、虫歯治療や歯周疾患、歯列矯正や咬合治療などは基礎中の基礎なのかもしれない。そして、揺りカゴから墓場まで、歯科医師は歯科専門職としての能力を発揮させ歯科的問題点をチェックし、早期治療を行い、生活習慣を改めさせ、如何に健康的に成長させ、健康的に老いて逝かせるか!かもしれない。