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エアロ・コマンダー 2
スービック国際空港は、ご存知の様に1991年までは米国海軍基地の一部でしたが、フィリピンに返還後は経済特区となり、2009年2月まではフェデックスのアジア・ハブが置かれ、世界初の貨物機世界一周航路の重要な中継基地となっていました。
フェデックスのハブが中国・広州に移転してから、まだ1年しか経っていませんが、今現在スービックを訪れてみると、国際空港だったのが信じられないくらいさびれています。今現在でも名称はスービック国際空港のままですが、国際線はおろか、国内線の定期便も就航しておらず、旅客・貨物ターミナルともに閉鎖されており、航空管制も日の出から日没までとの事です。フィリピンの軍隊のヘリコプタも駐機していますので、軍用機は24時間管制かも知れませんが?・・・
スービックからマニラに向かう朝は、2グループに分かれてのフライトです。我々は第二組なので、先発組を見送ってトロピカル・パラダイス・ヴィレッジでゆっくりしていると、ホテルの頭上を聞き慣れた爆音の飛行機が上昇して行きます。と言うか我々のエアロ・コマンダー以外の他の航空機は飛んでいないので、上空通過ははっきりとわかります。
しばらくしてエアロ・コマンダーがマニラを出発したとの連絡があり、我々後発組もスービック空港に向かい、飛行機の到着を待ちますが、待てど暮らせどエアロ・コマンダーの爆音は聞こえてきません。
到着予定時刻から30分以上経ってから、ようやく爆音が聞こえて来ました。到着後のネスミス機長の第一声は「マニラ空港の離陸待ちの渋滞がひどく30以上待たされた」です。マニラのラウンジの担当者も機長がマニラで折り返した後。誘導路で長々と待たされていることなど知るよしもありませんから仕方ありませんね。フライトが遅れているのに、我々は余裕でエアロ・コマンダーの前で集合写真なんぞ撮っていますから困った客です。
ネスミス機長も一緒に写真を撮ったり、大きな脚立で主翼の上に昇り燃料の残量を確かめたりしています。燃料計は当然操縦席の計器板についており、その燃料計でも残量がしっかりあることになっていますが、彼は燃料計を信用できないのでしょうか?ひょっとしてF4ファントムの燃料計が壊れていて?、北ベトナムで墜落した?ってことがトラウマになっているとか?・・・いろいろ想像してしまいますが、ファントムの墜落原因もトラウマの件も聞かずじまいでした。
いずれにしろ全員が乗り込んだファントムじゃなかったエアロ・コマンダーはエプロンを出て坂の上にある滑走路を目指します。滑走路の東端の下まで来たエアロ・コマンダーは左折しながら坂の誘導路を登って行きます。もちろん通常のタキシングと違って、スロットルをかなり開け気味にしないと登って行きません。
飛行機のヒルクライムなんて普通経験出来ないだけに興味津々で、いろいろ眺め回すと主脚のディスク・ブレーキが凄いことに気がつきました。
ロータはソリッドなのですが、キャリパーが前後に2個ついており、しかもそのキャリパーは対向4ポッド・・・ひとつの車輪(ロータ)につき合計8ポッドのピストンでロータを強力に挟み込む設計です。まさかスービックのダウンヒルのために改造した訳ではないと思いますから、エアロ・コマンダーは強力なブレーキが標準装備と思われます。
無事、坂を登り切ったエアロ・コマンダーは、誘導路を西に進み、飛行機の駐まっていないスービック国際空港ターミナルの前を通り、さらに西の軍用ヘリコプタのエプロン(旧フェデックス・ターミナル)前を過ぎ、滑走路西端で一時停止・即滑走路に進入して離陸開始です。
急加速してスピードが乗ったタイミングで、機長は機首を持ち上げるためにハンドルを手前に引きますが、構造上副操縦士席も連動しており、小生の目の前のハンドルも手前にドンドン出て来ます。どういう構造になってるのかと考える間もなく、右膝が何かで押されます?
うん?と思って右膝を見ると、右下の床からはえたアームが右膝を圧迫しています。さらにそのアームの先を見るとハンドルが付いており、結果的にネスミス機長が上昇しようとハンドルを引いているのに、当方の右膝がそれを阻止していたことになります。本当に足の長い?のも良し悪しです。(ただ、がに股なだけ?)
その事実を知った時は一瞬青ざめましたが、エアロ・コマンダーは無事上昇を続け、右手下に我々が滞在したトロピカル・パラダイス・ヴィレッジが見えてきます。なぜトロピカル・パラダイス・ヴィレッジとわかるかと言うと、センター棟の前の芝生の植え込みの"TROPICAL PARADISE VILLAGE"の文字が、上空からもハッキリ読めるからです。
飛行機がバターン半島の中心部にさしかかる頃は高度も3,000メートルくらいまで上昇しますが、気分はまるで6,000メートルくらいでジェット旅客機に乗っている感覚です。3,000メートルくらいの高度からはマニラ湾を見渡すことが出来、マニラ空港まで一直線のコースで飛んでいるのが良くわかります。マニラ空港滑走路へのアプローチも、旋回などして時間調整することもなく北西から一気に最短距離で滑走路にランディングしました。眼下には離陸許可待ちの旅客機が相変わらず行列しているのを眺めながら・・・「あ~あ、もう着いちゃった・・・」 ってのが偽らざる心境でした。