目次
〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
〈3章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争〉の最初から
夏休みに入ってすぐ、四泊五日の合宿があった。1日中、音楽漬けの毎日じゃ。
合宿2日目に兄貴がやって来たので、さっそく小遣いの請求をしたのじゃ。
「すまん、チハル。帰りの旅費しか、もう残ってない。
来年の大阪大会に来た時に、用意しとくわ。」
ワシは悟った。「これは払う気、無いな。」
親にギターを買ってもらった手前、クラブを止めるわけにもいかない。
すでにワシ自身、止める気もない。
この貸しは、いずれ返してもらわねば。ワシは心に誓った。
9月○日。
新市商業マンドリンクラブ『第6回定期演奏会』
ニギニギ行われ、しめやかに終わった。
定期演奏会が終わると、1週間クラブは休みとなる。
今日まで、ほとんど休み無しで練習してきた疲れがある。
その休養もあったが、この間に3年生による、話し合いがもたれた。
新市商業マンドリン部は、封建制である。
3年生の引退後の次の新体制。次期役員は、全て3年生による指名であった。
この決定には先生どころか、何人も関与できない。なぜなら…えーと。
たぶん伝統というやつ、なのじゃ。
1週間後のクラブ会議で、事実上の3年生の引退。
次期体制の発表が行われた。
部長には、ベースの川田先輩。
福田先輩はギタートップになった。当然である。
今日は集会だけだったが久しぶりなので、
ワシら1年男子のギターは少し練習をして帰る事にした。
練習といっても、1週間前の定期演奏会で弾いた曲の中で、
ワシらギターがお気に入りの曲を弾こうというだけのことなのだが。
『スティング』のジ・エンターテナーじゃ。
曲自体も、ゴキゲンな曲なのじゃが、編曲がギターにとって大変好ましい作りじゃった。
ギター大活躍の曲なのじゃ。
曲の始めから3分の1までが、まるでギター合奏のようになっていた。
ギターが3パートに別れているのだ。
定期演奏会では1年男子は3人いるので、第1 ギターは藤本、
第2はワシ、第3は江本が弾いた。だが、練習は別じゃ。
ギター合奏部分が終わると、いつものようにドリン系がメロディーを担当するのだが、
うまい具合に、第1 ギターの最初の部分と同じメロディーになっていた。
つまり、ギター合奏部分をエンドレスに続けられるのだ。
ワシら3人がこの部分をパートを変えて何度も繰り返すものだから、
ギタートップの八守先輩に「そこばかり練習するな」と、よく怒られた。
でも、ワシらは先輩がやるのを真似していた、だけなのだ。
今日の練習は休みで自主的なものだ。
誰からも文句をつけられず、心から演奏を楽しんだ。
入口の影から新しくギタートップになった福田先輩が、物欲しげにこちらを見ている。
でも、入れてあげないもんね。
ワシ、藤本、江本のギター1年トリオが、
一緒に演奏を楽しんだのはこれが最後になる。
藤本がこの日を境に、クラブに来なくなったからだ。
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〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
〈3章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争〉の最初から
夏休みに入ってすぐ、四泊五日の合宿があった。1日中、音楽漬けの毎日じゃ。
合宿2日目に兄貴がやって来たので、さっそく小遣いの請求をしたのじゃ。
「すまん、チハル。帰りの旅費しか、もう残ってない。
来年の大阪大会に来た時に、用意しとくわ。」
ワシは悟った。「これは払う気、無いな。」
親にギターを買ってもらった手前、クラブを止めるわけにもいかない。
すでにワシ自身、止める気もない。
この貸しは、いずれ返してもらわねば。ワシは心に誓った。
9月○日。
新市商業マンドリンクラブ『第6回定期演奏会』
ニギニギ行われ、しめやかに終わった。
定期演奏会が終わると、1週間クラブは休みとなる。
今日まで、ほとんど休み無しで練習してきた疲れがある。
その休養もあったが、この間に3年生による、話し合いがもたれた。
新市商業マンドリン部は、封建制である。
3年生の引退後の次の新体制。次期役員は、全て3年生による指名であった。
この決定には先生どころか、何人も関与できない。なぜなら…えーと。
たぶん伝統というやつ、なのじゃ。
1週間後のクラブ会議で、事実上の3年生の引退。
次期体制の発表が行われた。
部長には、ベースの川田先輩。
福田先輩はギタートップになった。当然である。
今日は集会だけだったが久しぶりなので、
ワシら1年男子のギターは少し練習をして帰る事にした。
練習といっても、1週間前の定期演奏会で弾いた曲の中で、
ワシらギターがお気に入りの曲を弾こうというだけのことなのだが。
『スティング』のジ・エンターテナーじゃ。
曲自体も、ゴキゲンな曲なのじゃが、編曲がギターにとって大変好ましい作りじゃった。
ギター大活躍の曲なのじゃ。
曲の始めから3分の1までが、まるでギター合奏のようになっていた。
ギターが3パートに別れているのだ。
定期演奏会では1年男子は3人いるので、第1 ギターは藤本、
第2はワシ、第3は江本が弾いた。だが、練習は別じゃ。
ギター合奏部分が終わると、いつものようにドリン系がメロディーを担当するのだが、
うまい具合に、第1 ギターの最初の部分と同じメロディーになっていた。
つまり、ギター合奏部分をエンドレスに続けられるのだ。
ワシら3人がこの部分をパートを変えて何度も繰り返すものだから、
ギタートップの八守先輩に「そこばかり練習するな」と、よく怒られた。
でも、ワシらは先輩がやるのを真似していた、だけなのだ。
今日の練習は休みで自主的なものだ。
誰からも文句をつけられず、心から演奏を楽しんだ。
入口の影から新しくギタートップになった福田先輩が、物欲しげにこちらを見ている。
でも、入れてあげないもんね。
ワシ、藤本、江本のギター1年トリオが、
一緒に演奏を楽しんだのはこれが最後になる。
藤本がこの日を境に、クラブに来なくなったからだ。
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だいぶ腕をあげておられるようでwakuwaku感が
ありました 次はどうなるの?そんなあせったような
気持ち 書いているうちに上達されましたね
それはそうと藤本君どうしたんじゃろぅ?心配
劇中のチハルと同様、いっぱいいっぱいで、
自分では上達したかどうかわかりませんが、
頑張って書いてます。
これからも応援よろしくお願いします。