宙組公演「ファントム」を、8月16日に観てきました。
いやはや、レポートがひどく遅くなって、楽しみに(?)してる方スミマセン。
海藤的「ファントム」レポート行きます!
あらすじ
19世紀後半のパリ、オペラ座通り、遅い午後。無邪気で天使のように美しい娘クリスティーヌ・ダーエ(花總まり・はなちゃん)が、歌いながら新曲の楽譜を売っていた。群集の中にいたシャンドン伯爵(フィリップ)(安蘭けい・とうこさん)は、彼女の声に魅せられ引き寄せられる。オペラ座のパトロンの一人であるフィリップは、クリスティーヌがオペラ座で歌のレッスンを受けられるよう計らう。
オペラ座では支配人のキャリエール(樹里咲穂・じゅりさん)が解任され、新支配人のショレ(鈴鹿照)が妻でプリマドンナのカルロッタ(出雲綾・たきちゃん)と共に迎えられた。キャリエールはショレにこの劇場には幽霊がいることを告げる。そしてオペラ座の一番地下にある小さな湖のほとりが彼の棲家で、自らを“オペラ座の怪人”と呼んでいると。しかしショレは、これは解任されたことの仕返しとしてキャリエールが自分に言っているに過ぎないと取り合わなかった。オペラ座にキャリエールを訪ねて来たクリスティーヌを見たカルロッタは、その若さと可愛らしさに嫉妬し、彼女を自分の衣装係にしてしまう。それでもクリスティーヌは憧れのオペラ座にいられるだけで幸せだった。
ある日、クリスティーヌの歌を聞いたファントム(和央ようか・たかこさん)は、その清らかな歌声に、ただ一人彼に深い愛情を寄せた亡き母親(音乃いずみ)を思い起こし、彼女の歌の指導を始める。ビストロで行われたコンテストで、クリスティーヌはまるで神が舞い降りたかの如く歌った。クリスティーヌの歌声を聞いたカルロッタは、彼女に「フェアリー・クイーン」のタイターニア役をするよう進言する。フィリップはクリスティーヌに成功を祝福すると共に、恋心を告白する。ファントムは幸せそうな二人の姿を絶望的な思いで見送るのだった。
「フェアリー・クイーン」初日の楽屋。カルロッタはクリスティーヌに酒盃を差し出した。これはクリスティーヌを潰すための罠だったのである。毒酒と知らずに飲んだクリスティーヌの歌声は、ひどいありさまだった。客席からは野次が飛び、舞台は騒然となる。怒ったファントムが、クリスティーヌを自分の棲家に連れて行く。それはクリスティーヌへの愛情の表現にほかならなかった。しかしそれが、やがて彼を悲劇の結末へと向かわせることとなる……。
人名・愛称は上記のあらすじ参照!
◆ 比較してみるよ。
さて皆さんは「オペラ座の怪人」
をご存知でしょうか。
「ザ・ファ~ントォ~ムッオブジオペラ…♪」のオペラ座の怪人です。
劇団四季のミュージカルとして、結構有名ですよね。
四季の「怪人」はゴシックホラーとして、美しさと暗闇に対する人間の幻想を表現した作品でもあります。
ただ、ある程度ミュージカルに慣れていないと、この作品の精神性、そして根源的な問題であるストーリーが難しいため、理解できない場合が多々あるのですね。
そんでもって、四季ファンには「本当すいません」なんですが。
怪人はオッサンだし、ヒロインがおばちゃんなんですよねー…。
今回の「ファントム」は、アーサー・コピットと言う人がガストン・ルルーの「オペラ座の怪人」を改めて改作したものです。
怪人であるファントムの心の動き、人生に着眼したストーリー構成で、格段に分かりやすくなっています。また、アメリカンの作品なので、曲も全体的に明るい。
難を言えば、重みが無い。(「雨に唄えば」っぽい)
ただ覚えやすいメロディなので、すぐ歌えちゃうかも。(音符は難しい)
また宝塚ということで、怪人ファントムが醜いとか言われつつも、「綺麗」なんだよな。
いや、ちゃんと醜い顔の引きつれとかありますよ。
でも、若者らしい瑞々しさがあるの。
(あ、でもはなちゃんがちょっと、おば…いえ何でもありません。可愛いので)
服装もバリエーションがあるので飽きません。
あと、舞台美術の使い方ね。ろうそくの照らし出す世界が美しい。
ヨーロッパの怪奇趣味の一つに、古城の地下に幽閉される恐怖、暗闇に潜むものへの畏怖がありますがこの作品は、それらを踏まえつつ愛の光が差し込んでいると思います。
(ちなみにこの怪奇趣味の発端となった芸術家たちの集会により、「ドラキュラ伯爵」「フランケンシュタイン」が生まれた)
闇に潜むものは、神か悪魔か、それとも人か。
オープニングのオペラ座の屋根から、心の叫びを歌うファントムは
悲しくも人間らしい。セットもいいです。
◆ それぞれの良さを語ってみるよ。
ファントム(=エリック)を演じるのはたかこさん。
この人は長身で、格好いい人です。
殺人しても、何か「しょうがないよね…だって大変なんだもん」って思えちゃう人。
かなりの人数殺してるんですけどね。
でも彼の心は青少年。初めての恋に戸惑って、うろたえて。
愛するクリスティーヌに嫌われたくない一心で、自分の好きな詩を見せたり
とっておきの場所を案内したり。顔の引きつれを隠すマスクは、エリックの感情を
表す道具でもあり、形や色が変わったりします。
たった一人で、オペラ座の地下墓場(!)に住む彼には、美しいものと美しい音楽が生きがいだったので、純粋なくらいすべての物事に対して苦しみます。
キャリエールを実の父なのではと思いながら…。
後にキャリエールとの会話が、泣けます。
エリックが「僕の顔をどう思う?」と聞くと、キャリエールは
「もう少しマシだったらなぁ。(愛情深い笑顔で)」と答えます。
誰にも恐れられたファントムの顔は、彼の母と、父にしか理解できない苦しみの歴史だったわけですね。
そのキャリエールのじゅりさんは、本当、愛情深いいい顔するの。いい歌歌うの。
ブリマドンナだったエリックの母ヴェラドーヴァ(音乃いずみ)を愛してたんだな…。
とうこさん、演じるフィリップは…実はあんまりいなくても問題ないかも。
この人のシーンだけは、陽気で明るいんだよな。
はなちゃんのクリスティーヌも、結構頑張ってる感じ。年齢的に。
パッと見可愛いので、遠めに見れば…。
「メロディ、メロディ、マイメロディパリ~♪」の歌は可愛い。
◆ 最後は…。
大筋は、「オペラ座の怪人」とほぼ同じなんです。
「音楽の天使」と歌うところもあるし。いい歌です。
思わず帰り際に、「ドレミファソファレファミ~ドレミファソファレミド~♪」と口ずさみそうになるのが困りもの。
ファントム=エリックは、父親の愛情によって死ぬことになり…。
ファントム=エリックは死に際に、醜い引きつれの顔にクリスティーヌの愛のキスを受けます。
その瞬間の、エリックの嬉しそうなこと!
喜びに打ち震えながら、声を詰まらせ死んでいきます。
愛する人の腕の中で。
思わずグッときましたよ。…うん。
◆ 気になったところをつらつら言うよ。
バレー教師、マダム・ドリーヌの貴柳みどり(ぽっぽさん)何もしてなくても怖い。
ファントムには、彼の感情を表す…とかは無いけど幽霊や精霊のような「従者」たちがついて世話しています。(しかもよく踊る)
私はこの従者が好きで、勝手に「従者ーズ」と呼んでいます。
結構カッコいいんだ、彼ら。彼らもファントムに対して見えにくい愛情があったと思うよ。同じ異形のものとして。
今回はこんな感じ。