北海道でエゾシカが農作物や高山植物を食い荒らしている。農林業の被害は年に50億円を超えて過去最高となり、世界自然遺産の知床半島や釧路湿原でも容赦ない。畑や鉄道などに近づけないように整備した柵は延べ4千キロと、北海道と九州を往復する距離に相当する。駆除しても駆除しても増えるエゾシカは今や道内に64万頭。これ以上の頭数増加を食い止めるため、闘いは正念場を迎えている。
知床半島の斜里町ウトロ地区。オホーツク海に面した市街地は長さ4.5キロにわたり、高さ3メートルの金網でぐるりと囲まれている。エゾシカの侵入を防ぐためだ。
道内では山と畑の境目に高さ1.5~3メートルほどのナイロンネットやステンレス製の電気柵を自治体が張り巡らせている。農作物の被害を防ぐためだ。道路や線路への飛び出しを防ぐ柵を含めると、総延長は昨年度末で約4千キロ。今年度は新たに約300キロを整備する。そのための費用が約4億5千万円かかる。
知床半島には1万頭もいると推定され、樹皮やシレトコスミレなどの希少植物を食い荒らす。やむなく環境省は2007年度から知床でも駆除を始めた。保全地を原始の森に戻す「しれとこ100平方メートル運動地」は鳥獣保護区で駆除の対象外だったが、被害が深刻なことから「必要があれば個体数調整を認めざるをえない」との方針に変えた。
道で車とぶつかり、エゾシカが死ぬなどした事故は昨年1838件。列車にはねられたり、はねられそうになったりした案件は昨年度に2029件に上った。道路や線路で毎日計10件以上もトラブルが起きている計算だ。
エゾシカは繁殖力が強い。年に15~20%の割合で個体数が増えるといい、放っておけば4~5年で2倍になる。
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