独学をすスめ 心理学研究法入門編01

Θ・)ノ「しんりがくけんきゅうほうこうざ」

綾:そういえば,心理学の研究法入門の授業を担当することになったんでしょ?

卓:ぬ? 実はその通り。
  これまで「統計的研究法編」というメールマガジンを発行していたわりには
  統計法の比重が研究法よりも大きすぎたから,なんとかバランスを取らなけ
  ればならないと反省していたところなんだが…

篠:それでは丁度良かったのではないですか?

卓:まあ,良かったと言えば,良かったんだが。

綾:で,いつから「独学をすスめ」の「研究法編」を始めるの?

卓:あれ? 研究法入門の独学講座を始めるのは決定済みですか?

綾:そうよ。読者の中には期待している人も少しはいるかもしれないじゃないの!

卓:希望者少なそうなら,別にやらなくともいいじゃんか……

篠:兄さん,私からもお願いします。

卓:んー,個人的には妹属性じゃないから,お願いされてもなぁ。

綾:お姉ちゃんからも,お・ね・が・い♪

卓:ましてや姉属性でも全くないからなっ!

綾:もう卓たら……
  お姉ちゃんが優しくお願いしている間に,つべこべ言わずに納得しやがれ♪

Θ・)ノ「しんりがく」

卓:僕としては自分の中で整理し切れていないのですが……
  まあ,ほどほどにやっていくことにしましょう。

  心理学研究法を考えるときには言葉を分解してみましょう。

綾:「心理学」と「研究法」ね。

卓:心理学とは,心の理の学,すなわち,心の法則・理論に関する学問です。

篠:理ってなんですか?

卓:辞書調べると分かるけど,法則とかいう意味があるのさ。
  なお,理論というのは,一貫性のある複数の法則の体系と考えてくれ。

篠:理論の説明が難しいです。

卓:じゃあ,今は深く考えなくて良いよ。
  法則は「一定条件下で,多くの場合,多くの人に成立する規則」という感じ
  で理解してもらえればよい。

篠:はぁ。

綾:要するに,心理学とは「多くの人に共通する,心の規則を調べる学問」と言
  いたいわけね?

卓:まさにそう。
  だから,特定個人の心の状態を推測してみろ,とかいうのは,心理学の対象
  ではないわけだな。

  んで,ここで注目してもらいたいのは,【心は観察不能であること★】。
                      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
篠:当たり前と言えば当たり前ですが……

Θ・)ノ「けんきゅうほう」

卓:もう一つの言葉である「研究法」だが,次のように言える。
  研究法とは「新しい事柄について適切に記述したり,複数の事柄の関係性を
  説明するための方法論」であると。

綾:キーワードは「記述」と「説明」よね。
  簡単に言えば,知識の生産に関する方法論のことね。

卓:研究法の中でも特に科学的研究法というのは,「一定の客観性を保ったまま」
  という形容詞がくっつくことになる。

  ところで,篠。客観性を保つためにはどうすればよいだろう?

篠:突然言われても……やっぱり思いつきません。

綾:それはね。多くの人に確認してもらう,多くの人に観察できるようにするこ
  となの。

卓:そう。科学的研究とは,【観察可能な対象を扱う★】ということなのさ。
               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Θ・)ノ「しんりがくけんきゅうほう の とくちょう」

卓:篠。心理学と(科学的)研究との間にズレがあることに気づいたか?

篠:……

綾:心理学も科学の一種だけど,少なくともそうであろうと努力しているわけだ
  けど,心理学は心という「観察不能な対象」を扱っているわけね。
  でも,科学の研究法は……

篠:……あっ! 科学の研究法は「観察可能な対象」を調べます。
  これでは,心理学は科学の研究法が使えないことになってしまい,科学でな
  くなってしまいます。

綾:そうね。
  心理学は科学ではないと批判する人の根拠の多くは,その他の自然科学のよ
  うに厳密に科学的研究法の精神に準拠していないというところなの。

卓:でも,心理学は何とかして,科学的研究でアプローチしようと頑張ったわけ
  だ。そのために,二つの対処策を採用することになる。

  一つは,精神的行動を研究対象とすること。
  一つは,仮説を導入することだ。

  これが一体何かというと……

綾:じゃあ,今回はこの辺で終了♪

  ちょっと気になる感じの所で終わる方が,学習意欲が湧くでしょ?
  今回の講座に感想がある人はコメントしてくれると嬉しいな。

卓・綾・篠:それでは,皆さん,ひとまず失礼いたします。
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独学をすスめ 多重比較論①

( ゜д゜) 以下の学習論は,完全なる初学者を対象にしていません。
    t検定と多重比較(原理はよく分からないけど,有意差を調べるための
    道具である)を知っていることを前提にしています。


綾:「t検定の単純繰り返しは駄目だけど,多重比較なら構わない」

篠:綾姉さん,唐突に何ですか?

卓:多重比較の解説をしている教科書でよく見られるフレーズだな,それ。

綾:そうそう。

  確認だけど,t検定と多重比較は,分散分析と同じく「差異の統計法」に分
  類される統計道具ということは良いわね?
  そして,「t検定は二変数(水準)用の平均値の有意差を調べる道具であり,
  分散分析と多重比較は三変数(水準)以上の平均値の有意差を調べる道具で
  ある」……こんな風に説明している教科書が多いわ。
  でも,この説明文って不親切よね?

卓:あー,まー,そうだなぁ。
  実際,僕の以前の統計法諸学者向け講座でもそんな風に説明していた。

篠:すみませんが,もう少しはっきりと説明していただけないでしょうか?
  「t検定は二水準用,分散分析・多重比較は三水準以上用」という説明に何
  か問題があるのですか?

卓:いや,その説明自体に問題はない。
  問題なのは,t検定と多重比較との関係だな。

篠:?

綾:ねえ,篠。「t検定は二水準,多重比較は三水準以上」という文を読んでし
  まったら,「t検定と多重比較はなんだか異なる計算原理に基づく別物」だ
  というイメージを持ってしまうのではないかしら?

篠:別物だと思っています。

綾:ふむふむ。まあ,確かに「ある要素」が追加されているから,別物ではある
  んだけど。

卓:結論から言えば,t検定と多重比較は本質的には同じ手法なわけだな

篠:……いまいちよく分かりません。

卓:だろうなぁ。この辺を強調して説明した教科書とか少ないし。
  でも,この辺が分かれば,多重比較がかなり整理できるようになるぞ。

綾:ヒントは,「何故単純な繰り返しt検定は駄目なのか?」を徹底的に考える
  こと。

篠:……ひょっとして,新しい「独学をすスめ」でしょうか?

卓:まあ,そういうことだ。

(続くかな? かな?)
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