晴嵐改の生存確認ブログ

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず

天使の軍隊

2007年05月01日 | 読書
天使の軍隊/佐々木敏
天使の軍隊

冒頭の「金正日の遺書」の内容は、著者のメルマガ購読者には自明のことですが、そうでない人には意外であり、また刺激的であるかもしれません。
このプロローグにて、小説の舞台となる世界は、中朝戦争終結後であり、日本と北朝鮮が友好的な二国間関係を構築している…ということが読者に示されます。
本作は、ロボットを用いた新しい戦争の様態を描いた、ある種のシミュレーション的小説であって、中朝戦争というのはひとつのスパイスでしかありません。が、中国と北朝鮮がいずれ戦争を行うであろう…と考えると、色んなことが合理的に説明できるという現実には驚かざるを得ません。

未読の方のためにもネタバレは避けたいので、本編に関する言及は差し控えたいと思いますが、ひとつだけ興味深いなと思ったことをご紹介。
本作に登場するロボットは災害救助にも使えるし、戦闘にも耐えうる汎用機ですが、いずれも無人で、安全な場所からの遠隔操作によって運用されるという設定です。
将来的に、こうした無人ロボット(無人戦闘機、無人戦車も含む)が活躍するようになると、ガンダムに代表されるリアルロボットものアニメは廃れてしまうだろう、という著者の見立てには、ハッとさせられました。
戦場の無人化が現実のものとなったとき、ロボット(という用語が作中では使われていないにせよ)に乗り込んで戦場に赴くヒーローorヒロインという枠組み自体が、時代遅れの代物になってしまう…。
ロボット工学が長足の進歩を遂げつつある今、ロボットものアニメもそろそろ新しいフェーズへと移行しなければならない時期に来ていると言えるかもしれませんね。


■週刊アカシックレコード
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■講談社
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