※なんとなく趣旨を察してください
紅茶がメインの店に入るのは、久しぶりのことだ。男二人の客は少々目立ってしまっているようだが、結城はあんがいそういうことに構わない。
(まあ、気にしたところで仕方の無いものなぁ)
入りたい店に入るということに風見自身ももちろん賛成で、そして頼みたいものを頼むべきなのである。
「ずいぶん種類があるんだね。ここから選ぶのは難儀だなあ」
「ふたつくらい選んで、いろいろ味見しないか」
「そんなに食べられるかな」
「弱気なこと言うなよ」
「ほら、向こうの、見てごらんよ。わりと大きいぜ」
「なに、お前とならなんとかなるさ」
「…かなわないなあ」
じゃあ、これとこれにしよう、なんてあっさりふたつ選んでしまう。風見は少し時間を掛けて、なるべく具材のかぶらないものをようやくえらんでから、店員をよんでオーダーする。
注文を済ませてしまうと、結城はなにやらお疲れの様子で机に肘などをつく。
「…しかし、どこに行っても、ものすごい人だねえ。連休って奴は、すごいよ、まったく」
「どうした、情けない。旅行はどうだったんだ」
水を向けると、結城はさらに情けない顔をする。
「どこに行っても、なにをするにも、とにかく人、人、人さ。そのたびにえらい時間がかかるんだもの」
まったく思うさまにならなかった旅行のあれこれの出来事を(結城には申し訳ないが)楽しく聞かせて貰って、有りがたくお土産まで受け取ったものの、
「おい、なあ。俺はべつに、厄年じゃあないぜ」
「…えっ」
風見の手元を確かめると、いよいよ結城は頭を抱えてしまった。
「…いや、でも、ありがたく頂くよ」
「参ったなあ…とにかく、ろくに確かめられる状態じゃなかったんだよ。すまん」
「なるほど、だいぶ大変だったんだな、よく分かったよ」
意地悪く風見がからかうのを、結城は困ったように見返している。
そこへ、タルトとポットで満載になったトレイが到着、しばらく休戦にする。
「旅行の荷物は、あらかた。いくつか、人に渡すものがはけてしまえばもう少し落ち着くかな」
「こういうふうに、な」
「もうしまっておくれよ」
「ハイハイ」
「夏の買物のほうも、いくつか読み進めていてね。こちらもなかなか楽しくて…」
「…ふうむ、そうかい」
極力、その話のことは避けておきたかったのだが──どうやら気付かれたらしい。
「どうしたんだい。何か気になるようだが」
「そんなことはないよ」
「だって、この間もこのゴれ──」
「なんでもないったら!」
まったく、今日は強くあれこれ言いにくくなってしまったな。
紅茶がメインの店に入るのは、久しぶりのことだ。男二人の客は少々目立ってしまっているようだが、結城はあんがいそういうことに構わない。
(まあ、気にしたところで仕方の無いものなぁ)
入りたい店に入るということに風見自身ももちろん賛成で、そして頼みたいものを頼むべきなのである。
「ずいぶん種類があるんだね。ここから選ぶのは難儀だなあ」
「ふたつくらい選んで、いろいろ味見しないか」
「そんなに食べられるかな」
「弱気なこと言うなよ」
「ほら、向こうの、見てごらんよ。わりと大きいぜ」
「なに、お前とならなんとかなるさ」
「…かなわないなあ」
じゃあ、これとこれにしよう、なんてあっさりふたつ選んでしまう。風見は少し時間を掛けて、なるべく具材のかぶらないものをようやくえらんでから、店員をよんでオーダーする。
注文を済ませてしまうと、結城はなにやらお疲れの様子で机に肘などをつく。
「…しかし、どこに行っても、ものすごい人だねえ。連休って奴は、すごいよ、まったく」
「どうした、情けない。旅行はどうだったんだ」
水を向けると、結城はさらに情けない顔をする。
「どこに行っても、なにをするにも、とにかく人、人、人さ。そのたびにえらい時間がかかるんだもの」
まったく思うさまにならなかった旅行のあれこれの出来事を(結城には申し訳ないが)楽しく聞かせて貰って、有りがたくお土産まで受け取ったものの、
「おい、なあ。俺はべつに、厄年じゃあないぜ」
「…えっ」
風見の手元を確かめると、いよいよ結城は頭を抱えてしまった。
「…いや、でも、ありがたく頂くよ」
「参ったなあ…とにかく、ろくに確かめられる状態じゃなかったんだよ。すまん」
「なるほど、だいぶ大変だったんだな、よく分かったよ」
意地悪く風見がからかうのを、結城は困ったように見返している。
そこへ、タルトとポットで満載になったトレイが到着、しばらく休戦にする。
「旅行の荷物は、あらかた。いくつか、人に渡すものがはけてしまえばもう少し落ち着くかな」
「こういうふうに、な」
「もうしまっておくれよ」
「ハイハイ」
「夏の買物のほうも、いくつか読み進めていてね。こちらもなかなか楽しくて…」
「…ふうむ、そうかい」
極力、その話のことは避けておきたかったのだが──どうやら気付かれたらしい。
「どうしたんだい。何か気になるようだが」
「そんなことはないよ」
「だって、この間もこのゴれ──」
「なんでもないったら!」
まったく、今日は強くあれこれ言いにくくなってしまったな。