何か言ってる

さらに適当好き放題

おそうじライダーマン2

2015-08-30 22:17:58 | おそうじライダーマン
※なんとなく趣旨を察してください


「やあ、風見…!」
 ばたばたとこちらに結城がかけてくるので、風見は軽く手を上げてやる。
「結城。早速来たな」
「ああ。じゃあ、報告させてくれ」
「ああ」
 まえの報告があれだったので、少しばかり身構えるような心持ちで、結城の言葉を待つ。
「今日はね、少し、雑誌と通販のカタログをひとまとめにくくって、処分してきたよ」
「お、意外と具体的じゃないか。どのくらいだい」
「そうだなあ、たぶん、8冊くらいかな」
 と、答えてみてから、照れ笑いになる。
「…まだまだだな」
「いや、ちょっとずつでも良いんじゃないか。さっそく報告を聞かせてもらえて嬉しいよ」
「そうか」
 結城はさらに照れながら、ほっとした様子である。正直先は思いやられるが、それは言わないでおく。
「通販のカタログか。何を買ったんだい」
「はは、恥ずかしいんだが、着る物がなくてね。店先を覗いても、何がいいのかいまいち分からないのだが、店員はあれもこれもと勧めてくるだろう。すっかり困ってしまって」
 結城らしい話だ。
「な、たまには、一緒に店でも覗きに行こうか」
「それは、助かるよ」
「今日の報告は、そんなところかな」
「ああ。午後は、本の即売会に行って来たんだ」
 ん?
「どこを覗いても意欲作ばかりでね。楽しくなって、ついつい長居をしているうちに、急に声を掛けられて、驚いたよ。ずいぶん昔の知り合いが…」
「そいつは何よりなんだが、ちょっと待て、お前まさか…」
 嬉しそうに即売会での出来事を語っていた結城は、ようやくそこではっと気付いたような顔をして言葉を途切れさせた。
「そうだ…しまった…!」
 それは結城の、心からの悔恨の声だった。
「風見…僕は、なんてことを」
 と、落ち込む結城に、どうして良いやら風見もつかのま困惑したものの、開き直って肩に手を置いてやる。
「なあ、結城。お前が即売会を楽しめたんなら、いいじゃないか。また明日からも、俺に報告にしてくれるんだろう?」
「風見……」
 結城はゆっくりとこちらを見上げて。
「…も、もちろんだ!」
(ああ、これは先が思いやられる)
 とは、言わないでおいた。
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おそうじライダーマン1

2015-08-30 09:04:11 | おそうじライダーマン
※なんとなく趣旨を察してください





「そろそろ部屋を片付けようと思うんだ」
 結城の言葉に、風見は雑誌から顔を上げた。
「…うん、そうだな」
 同意らしき返事を得て、結城は「うん」と力強く頷く。
「風見、僕はデストロンでは研究ばかりの毎日だった。朝起きるとすぐに白衣に袖を通して、夜遅くまで研究に打ち込んで、何日もひげをそれない時も度々あった。僕にとっては、夜、帰って寝る場所があればそれで充分だったんだが、君たちと仲間になって、特に本郷さんは、僕にいろんなものに興味を持つよう勧めてくれた。君や一文字さんは、僕が今までの人生の中で全く接点も持たず関心もなかったいろんな事を教えてくれた。僕も、いろいろな事を知ったり、やってみたりすることが、すっかり楽しくなってしまった。
 …そうこうするうちに、僕の部屋の中は物だらけになってしまった、というわけだ」
「結城、そいつは俺たちのせいで、君の部屋が散らかるようになってしまった、ということかい」
 からかって言ってみると、結城はすっかり慌ててしまう。
「いや、そうじゃない。これは全く、僕の不徳のいたすところだ。それにもちろん、僕も常々努力はしているつもりなんだ。心苦しく思いながら、覚悟を決めて処分した物だって、かなりたくさんある。こうなる前に手立てを講じることが出来なかった、己の浅慮を悔いるばかりだが、ともかく、僕はついになんとかしなければならないんだ」
「そうだなあ。お前、もうじき部屋を移らなければならいんだろう」
「うん、そうなんだよ。それで参ってしまってね」
「それは、参ったな」
「うん」
 いちいち生真面目な相棒が、風見は実のところおかしくて仕方が無い。はじめのころはいちいちからかっていた時もあったのだが、最近では、なにくわぬ顔のままでこっそり楽しんでいて、それはそれでたちが悪いのだった。
 とにかく、友人はたいへん困っているらしい。自分で何か手伝えるかなとつぶやくと、
「いや、そうじゃないんだ」
 結城はすっかり慌てて身を乗り出してきた。
「実は、君に……なんというか、いちいち報告をするから、聞いてもらえないかと思っているんだ」
 何の?──と考えたことをさすがに酌み取って、結城は少し照れくさがりながら、
「つまり、今日はあの本を捨てた、とか、今日はあの棚を片付けた、とか…そういう話を君に聞いてもらえたら、作業を継続させやすいんじゃないかと考えたんだ」
 正直なところ、あまり意図がわからないのだが。友人はそれを大まじめに考えて、真剣にこちらに頼み事している。なにやら可愛らしく思えて、風見は引き受けることにした。
「それくらいで良いなら。楽しみにしてるよ」
「そうか、ありがとう」
 ぱっと顔を輝かせた結城につられて風見も笑顔になって、
「じゃあ、さっそく。今日は何か報告はあるのかい」
 当然の流れのつもりだったのだが。
「…うーん、今日は一日、出突っ張りだったもんだから」
 急にいままでの元気がなくなってしまう。
 呆れていると、結城はなにやらしばらく考え込んでから、
「……そうだなあ。君に、僕の頼みをとりつけた、というあたりかな」
 どうやら、真剣な返事のようだ。
「…そうか」
 これは、先が思いやられる。
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