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何か言ってる

さらに適当好き放題

おそうじライダーマン23

2015-09-29 23:23:04 | おそうじライダーマン
※なんとなく趣旨を察してください




「どうだい、今日は。すすんだかい」
 こちらから連絡してみると、結城は電話の向こうでしきりに恐縮している。どうやら、仕事のほうでいっぱいいっぱいだったようだ。
「そうか、こんな時期だものな。…考えが足らなかったな。すまん」
「いや、気に掛けてもらえてありがたいよ。今月は旅行に行ったりもしたから、そのぶんしっかり取り返してやるつもりだったんだけれど。見込みが甘かったようだよ」
「最後に取り返せていればいいんだから。また、出来る範囲で報告を聞かせてくれるのを待ってるよ」
「ああ、ありがとう」
 ふと、会話が途切れた。
 おやすみ、と挨拶をして電話を切ろうとしていたのが、なんとなく言い出せないでいると。
「…そうそう。なあ、風見。あいつのことは、考えたかい?」
 尋ねられて、昨日結城のところで見かけたとぼけた顔を思い出す。
「うーん…どうしたものかな。すまんが、待ってもらえるかな」
 人にあれこれ言っておいて情けない話だと風見がぼやくと、そんなことないと結城は一生懸命に返してきた。
「我が家の有様は情けないものだけれど、手放すことにしたとはいえ、愛着のあるものばかりなんだ。その処遇について一生懸命考えてもらえるなんて、有り難いことだと思っているよ」
「…そんな」
「でも君、本気で迷っているだろう」
「はは、まあ、確かに。でも、そんなにおおげさな話じゃ無いよ」
「うん、おおげさな話じゃなくてもいいんだ。それでも、ちょっと、嬉しかったから」
 おかしな奴だなあ。
 もし、彼が「貰ってくれ」と頼んできたら、ふたつ返事でひきとるところなんだが。それはきっと、やらないのだ。
「それじゃあもう少し、お言葉に甘えて」
「ああ、ありがとう。それじゃあ、お休み」
 ああ、お休み。

おそうじライダーマン22

2015-09-28 23:26:34 | おそうじライダーマン
※なんとなく趣旨を察してください




 部屋に入ったとたん、「そいつ」と目が合ってしまった。
「…………」
「……………………」
 そらす、ことが…できない。
 結城は、ひとりで黙々と読み終わった本をまとめて縛り上げている。いつもだったら、そんなに捨ててしまうのか、なんてからかって遊んでしまうところだが。
 口を開くと、つい──尋ねてしまいそうになって、結城に声を掛けられない。
「どうしたんだい、風見。さっきから」
「…、結城」
 すくわれたような気持ちになって結城を振りむくと、結城は、きょとん、とちょっとめずらしい顔になってこちらを見返してくる。
「そいつは…ずっとうちにいる、ヌシみたいなやつなんだけど」
「……へえ」
 やっと、それだけ返事を返す。
 結城は、何か考えるようなそぶり。
「君のうちに行っても、悪さはしないんじゃ無いかな」
 すっかり古くなっているビニールをはずすと、中身の方はまるで新品みたいな毛並みがあらわれた。
「…きれいなんだね」
 差し出されたのを抵抗できずに受け取ってしまう。手触りも、この部屋でずっとヌシをしていたとは思えないくらい、優しい。
 そして、風見の胸元からじっとこちらを見上げてくる。
「ゆ、うき」
 そろそろと、どうにか両手にかかえたそいつを結城の方へ返しながら、相棒を呼ぶ。
 結城は少し困ったような笑みで、そいつを受け取る。
「いいのかい」
「…ちょっと、考えてみるよ」
「うん。もし良かったら、頼むよ」
 少しほっとしたような、結城。風見もすこしだけ、ほっとしている。
 こいつが我が家にいるのを見たら、本郷先輩やみんなはどんなふうに思うだろうか?
「………」
 さあね、ととぼけるような顔で、やっぱりそれはこちらを見つめてくる。

おそうじライダーマン20

2015-09-26 23:28:22 | おそうじライダーマン
※なんとなく趣旨を察してください




 何度か2人で来たことのあるこぢんまりした店で、今日もいくつかの報告を聞かせてもらう。
 大なり小なり、会うごとに何かしらの報告があるのは、自分が少しばかり彼の助けになれている証明のようで、嬉しくもある。時々個性的な報告もあるが、それを聞かせてもらうのも、最近では楽しみなのだ。
 あれを、これをやっつけたという報告がひとしきり終わって、ひさしぶりに友人の家へと遊びに行った報告などがはじまる。
「そいつの家にお邪魔するのは、2度目くらいなんだが」
「うん」
「おおきい本棚に、たくさん本が入っているのを見てねえ。こんなに本があってもいいんじゃないか、なんて思ってしまったよ」
「やれやれ。そりゃあ、悪いことはないだろうよ」
 ちょっと見直したかな、なんて考えていたらこれだもの。半ば呆れながら返事を返すと、結城も、そうなんだろうけどねえ、と返しながら笑っている。
「それから、俺ではこういうふうにはいかないだろうな、とも思えてね」
「そうかい。それなら別にいいさ」
「ふうん…?」
 軽く返したつもりだったのをまじまじと見返されてしまうと、少し困ってしまう。
「……なんだい、結城」
「いや、なんといったらいいのかな。良くわからないんだがね」
 と、何度も首を捻ってから、
「まえよりは幾分か、君に信頼されてきたのかなあ、なんて思ったもんだから」
 妙なことを言ってくる。
「俺がお前のことを信頼してないはずが無いだろう」
「そう言ってくれるのは本当に嬉しいが…片付けが出来るかどうかの部分は、そうでもないんじゃないか」
「ん…?」
 そう言われて反射的に言葉を詰まらせてしまった風見のことを、結城はそら見ろ、という顔で見返している。これは、すっかり図星をつかれてしまった。
「多少は、まあ…はじめのうちは、ちゃんと続くのかと心配はしていたかな」
「…だろう」
 こちらが正直に認めたのを、結城はいたずらっぽく笑って返す。
 確かにずいぶん、頼もしくなってきたかな──まだ言わない方が良さそうだが。
「どうだい、なにか頼むかい」
 かわりに酒類のメニューを渡してやると、嬉しそうに酒を選び始める。
「君は何が良いんだい」
「うん、俺かい?」
 結局いつものように、二人であれこれと選ぶことになったのが、なんだか今日は妙に照れくさい。

おそうじライダーマン19

2015-09-26 09:11:35 | おそうじライダーマン
※なんとなく趣旨を察してください




「風見、このあいだ、このシリーズを読みたいといっていただろう?」
「ああ…」
「よかったら、まとめてしばらく預けようかと思うんだけど、どうだい」
「お前、それはつまり、俺を預かりサービスのかわりにするということだな?」
 ピンときて指摘すると、じつはそうなんだ、とちょっと悪びれながら言う。
 仕方が無いなあ。
「そういうことなら、協力してやるよ」
「ありがとう、助かるよ」
 しかしどうなんだろうな、結城のやつ。
 片付けは進んでいるのかな?

おそうじライダーマン18

2015-09-24 23:33:31 | おそうじライダーマン
※なんとなく趣旨を察してください




「今日は仕事なんだろう。無理しなくていいんだぞ、結城」
 すっかり慣れた着信をとって、急にまめになった友人を気遣うと、
「ありがとう。でも、安心してくれ。そう、たいしたことはしていないから」
 おや。これはまた、たのもしい返事が帰ってきた。
「それは、聞いてみないことにはな」
「いや、ほんとうに、たいしたことはしてないんだ。今日は、空き容量のなくなりそうなレコーダーの中身の整理を、ね。外付けのやつを増設しようか迷っていたんだが、見られなさそうなデータは結局、消すことにしたよ」
「ああ…」
 風見のあいづちに、むこうでも少し笑いが漏れる。
「たいしたこと、なかったろ?」
「そうだなあ」
 と、返事をかえしながら、風見も少し笑ってしまう。
 正直、片付けの範疇に加えたものかどうか微妙なところだが、本人が必要を覚えておこなったようだから、それはそれでいいとしておくか…。
「レコーダーにはね、だいぶ昔の大河ドラマがとりだめてあったんだよ。いずれDVDにでも保存しようかなと考えていたんだけれどね、なかなか難しくて」
「まあ、そんなもんだよ」
「そうこうしているうちに、来年の大河ドラマのキャストが発表されただろう。これは、是非とも見なければならないと思ってね。そうすると、レコーダーに録画されているほうを楽しむのはさらに先になりそうだ、そう考えたら、もう消去してしまった方がいいように思えてね」
「結城…お前、たいした奴だなあ!」
 まさか、そこまで考えているとは。つい感心すると、結城はこちらの反応にすこし驚いたようだったが、うん、まあ…と、照れたような返事をかえしてくる。
「今日、あたらしいキャストも発表されてね。今から楽しみなんだよ。君もそうだろう?」
「ああ、もちろん!今から楽しみでしかたがないんだ」
「よかった、きっとそうにちがいないと思ってたんだよ」
「当たり前じゃないか。なんたって…」

 すっかり結城のペースに巻き込まれてしまったようだが、今日は、まあ、仕方が無いな。うん。