大名児と過ごしたある夏の夜、長いまことに長い彗星が西北の夜空に現れた。
ほうき星、彗星はいにしえの昔から不吉な兆しであった。
「大津皇子さまがが私のそばにいてくださると不吉と言われるこのような光景も美しく見えますわ。」と嬉々として言った。しかし、大名児は大津の表情が空を見つめてはいるものの心ここにあらずと言うのがわかった。
大名児は「大津皇子さま、香久山の方を見に行かれては如何でしょう。私は大丈夫と確信出来ましたから。」と山辺皇女が住まう方向を見て言った。
大名児を抱きしめ「すまない、大名児。」と言いながら山辺のことも心配であったが伊勢の方向も気がかりであった。すぐに香久山の方向に馬を走らせた。
山辺皇女の住まう香久山も特に問題はなかった。
「大津さま、駆けつけてくださりとても嬉しゅうございます。心強うございましたわ。」
「良かった、心配した。」
山辺は一瞬躊躇いながら「伊勢も何事もなければよろしいのですが。」山辺にも大名児にも伊勢を心配する気持ちを見透かされたようで「彗星だから、今後を心配せねばならぬであろうな。それに何かあれば報告が入るであろうよ。」と大津は自分に言い聞かせるように言った。
皆が不安に思っていた通り秋になると大地に立つ生けるものにめがけ地響きが鳴ったかと思うと恐ろしい揺れが襲った。
柱にすがるもの、家屋に押しつぶされたもの阿鼻叫喚の世界が一瞬にして起こり飛鳥浄御原は壊滅的な被害を被った。
宮中がこの有様であったから民達の被害は甚大であった。
田は地割れし、河、海から波が押し寄せ民、家が一瞬にしてのまれていった場所もあったらしい。
田畑そのものが埋没して海になった場所もあったらしい。
日にちが経つにつれ地方から深刻な報告が飛鳥浄御原に届く。大津は救済、復旧の対応に追われていた。
国難である。
大津は災害の対応に多くの官人を派遣をし、早急な対応を求めた。
また大津の自邸では身の拠り所がなかった児たちが張り切って被災者に寝床、粥などを与える協力をした。昼間は少しでも通常の生活に戻れるよう家屋の修理、田畑の整備を手伝った。山辺も大名児も協力を惜しまなかった。
いつもは多くの官人でごった返している宮中も天皇、皇后、大津、高市らと主だった官人数人で報告伝達を繰り返していた。
ほうき星、彗星はいにしえの昔から不吉な兆しであった。
「大津皇子さまがが私のそばにいてくださると不吉と言われるこのような光景も美しく見えますわ。」と嬉々として言った。しかし、大名児は大津の表情が空を見つめてはいるものの心ここにあらずと言うのがわかった。
大名児は「大津皇子さま、香久山の方を見に行かれては如何でしょう。私は大丈夫と確信出来ましたから。」と山辺皇女が住まう方向を見て言った。
大名児を抱きしめ「すまない、大名児。」と言いながら山辺のことも心配であったが伊勢の方向も気がかりであった。すぐに香久山の方向に馬を走らせた。
山辺皇女の住まう香久山も特に問題はなかった。
「大津さま、駆けつけてくださりとても嬉しゅうございます。心強うございましたわ。」
「良かった、心配した。」
山辺は一瞬躊躇いながら「伊勢も何事もなければよろしいのですが。」山辺にも大名児にも伊勢を心配する気持ちを見透かされたようで「彗星だから、今後を心配せねばならぬであろうな。それに何かあれば報告が入るであろうよ。」と大津は自分に言い聞かせるように言った。
皆が不安に思っていた通り秋になると大地に立つ生けるものにめがけ地響きが鳴ったかと思うと恐ろしい揺れが襲った。
柱にすがるもの、家屋に押しつぶされたもの阿鼻叫喚の世界が一瞬にして起こり飛鳥浄御原は壊滅的な被害を被った。
宮中がこの有様であったから民達の被害は甚大であった。
田は地割れし、河、海から波が押し寄せ民、家が一瞬にしてのまれていった場所もあったらしい。
田畑そのものが埋没して海になった場所もあったらしい。
日にちが経つにつれ地方から深刻な報告が飛鳥浄御原に届く。大津は救済、復旧の対応に追われていた。
国難である。
大津は災害の対応に多くの官人を派遣をし、早急な対応を求めた。
また大津の自邸では身の拠り所がなかった児たちが張り切って被災者に寝床、粥などを与える協力をした。昼間は少しでも通常の生活に戻れるよう家屋の修理、田畑の整備を手伝った。山辺も大名児も協力を惜しまなかった。
いつもは多くの官人でごった返している宮中も天皇、皇后、大津、高市らと主だった官人数人で報告伝達を繰り返していた。