ワールド・ウォーZを観てきた暇人がネタバレでぶっちゃけを行います

こんばんは、片道１時間かけて「ワールド・ウォーZ」を観賞してきた男、行きがけに
車のクーラーが壊れて帰りにスタンド行ったら「ラジエーター、漏れてますね」と言われ、駄目な一日と
確信しました。



画像は予告編で使われた画。
凄いですね、「観たまえ、ゾンビがゴミの様だ！フハハハハ！」と言いたくなる圧巻の一枚。

正直、スクリーンでこれさえ観れれば後は多少厳しくても良いか・・と思い、実に５年以上振りの
映画館へ足を向ける。

観賞直後、私の両隣に友人が居て、その左側、私的な映画のお殿様と目を合わせ、
苦笑を通り越し、単なる乾いた笑いが、お互いに共鳴しあうよう響き渡りました。

・・２０点。

オープニングとその後の１０分、後は上の画とラストの「それから」語り。
以上が２０点の振り分け。


ネタバレ全開で行きます。

先ず、この映画に関しては「何も無い」作品だと思ったし、「ゾンビをここまで活かさない」作品は
正直余りお目にかかれない、と感じました。

序盤。
ここは良いんです。
走るゾンビか・・と思いつつも、屋上でのブラピ崖っぷちカウントダウンは好きでしたし、
この先の展開を期待させる推進力、ネタもあった。

ただ、厳密に言えばスーパーマーケットでクスリを拝借する場面があるのですが、その時
意味ありげに出てくる青年がその後一切出て来なかった。

ここで、ある程度の「覚悟」をしておくべきだった。

ブラピ一家は彼の元国連という実績から国の非常時に必要と判断され、救出された後、
海上の避難船にヘリで辿り着きます。

元国連の人。ブラピさんの職業、結局これ以上の情報が一切公開されません。
ただ、その功績を称える際「～にも、～の戦場でも、そして～戦争でも大活躍だったらしいじゃないか！」と。

あれ？元軍人さん？いや国連だよね？
・・結局ラストまで元の職種が全くワカラン。ので、何故ブラピが必要で有能なのかも一切ワカラン。

ブラピは家族を安全な場所に留まらせる為、職場復帰をします。
まあ、この時の説得方法も説得力皆無なんですがね。

いいです、ブラピは韓国に飛びます。「最後の希望」と言われる若い医者と共に、発生地域から原因を
探りに行くんですね。

ええと、この医者、登場から１０分で死にます。死因は

「転んで、死んだ」

本当です。翻訳もそのまんま。ブラピが偉い人にそう報告します。
最後の希望が・・転んで・・死んだ・・？笑うところなのか？いやでも相当真面目な雰囲気だ・・

しかしブラピは特に絶望感も抱かず見せず、韓国の米軍基地に乗り込みます。

ここも拙いなあと。前述の説得シーンでは説得力が無かったのですが、
今回は”医者を失った”という絶望感が全く無い。

いいや。脱出シーン。何故かチャリンコ。雨の中、ずぶぬれで、真っ暗闇をチャリンコ。
今回のゾンビは「音」に反応するのですが、明らかに不必要な摩訶不思議演出。

どう考えても歩いたり走ったりした方が、速いし安全。

結局ピンチを演出したいからチャリンコ、という思惑しか見えない。

案の定ピンチ。チャリンコ降りる。じゃあ、最初から走らんかいっ！

ここで一人の兵士が噛まれて自害しますが、その画は一切映しません。音だけ。


年齢制限の問題は確かにありますが、それではゾンビ映画にする意義は格段に薄れます。
グロ描写はゾンビ映画のお家芸ですが、「ゾンビだからできる殺し方、メッセージの伝え方」は
確実にあって、それを一切排してますので、やはりゾンビである必要性はほぼ皆無。


グロもそりゃあ期待してましたが、大作なのである程度は映さないだろうとも予想してました。で・・
破壊描写の制限は度が過ぎると「うわ、痛い」という生々しさや、残酷な現実を映さない故の
自己投影効果の欠如を招きますし、同時に「世界は本当に終わるんだ」という
説得力を、ここでも大きく欠いてます。


乗じて綴るなら「一般人の日常」を一切描かないのも不味かった。
ブラピ以外の世界、ニューヨークの市民は？ブラジルの皆さんは？日本国民は？
そういう世界の終わり具合を全く画的に挟み込まないのも、この作品の風呂敷の広げ具合と見事反してます。

もういい。ブラピはエルサレムへ。
ここでは事前に「壁」を作ってゾンビ侵入を防いだ人物と会います。

ここのシーンの会話も酷い・・

壁を作った人物がいう「壁を作った理由」、まあ良いんですが、それを国の人間に納得させる
方法が何とも投げやりな理屈で、案の定途中で話は切り上げてました。

そらそうだ、そんな方法、理屈で国の周りに壁なんぞホイホイ建てられるわけが無い。
ここも結局「壁でゾンビがグワー！」っていう画が撮りたいから、強引に話を作った感満載。

結構大事な会話ですよ・・ちゃんと練らんかいっ！

疲れてきた・・もうザックリ逝こう。

で、イスラエルで上の画像のシーンが登場。ここはまあ良かった。
ただ、ブラピが来た瞬間その悲劇・・御都合主義が過ぎました・・
せめて「以前にも～」とか、ワンクッション入れておくべきでした。

なんか、ブラピが行けば事件が起きる、どこかの探偵張りの死神っぷりでした。

良いです。次。飛行機。
ここもお粗末。絶体絶命の状況、ブラピがとる行動一つ一つが非効率。

カバン積んでも無駄や！阿呆！爆発したなら成るべく前に行けよ！馬鹿！

で、墜落。何となくブラピと女兵士だけ生き残ってWHOへ。操縦士はスルー。多分死んでる。


WHO。ここが最大に噴飯ものの演出満載だったのですが、もう簡潔に突っ込みポイントを・・


・別館の研究棟に世界の希望的なアイテムをブラピ含め３人が取りに行く！残りは待機！
お、電話や警報等、居残り組が「音」を駆使して遠隔操作をしつつ、指示出すのかね？
　　　　　　　　　　　　　　　↓↓↓
・・だから、音を活用しなさい！この映画が作ったルールだろうが！
おい居残り組！「まずいぞ・・」「逃げろ！」と応援だけ。相当やれる事あるやん！
インカム位あるでしょ？何で装備左手首に雑誌ぐるぐる巻きだけなの？しかも毎回！
警察犬の訓練でももう少し重装備だわ・・もう・・


ゾンビに見つかってしまう！的なシーンが登場。ピンチですね、怖いですね。
さて、どうやって彼等はこの難局を・・
　　　　　　　　　　　　　↓↓↓↓
・・何なんだその「だるまさんが転んだ」ゲームは・・しかも無駄に長いし。
ここも「笑うところ」なのか迷った。誰も笑ってないので心の中で「だーるまさんがー」と
ブラピ脱出シーンで唱えてました。音ルール何処行った・・ここで５分位ゾンビと戯れ。


「キーアイテム」がある部屋にブラピが到着！他の２人は無事に逃げてます。役には立たなかった。
ブラピ部屋のキーロックナンバーが分からない！ピンチ！音に気をつけつつ、それでも呆然と
立ち尽くしていると、結構な音量で内線が鳴る！ゾンビが気付くじゃないか、どうするんだよ！
　　　　　　　　　　　　　↓↓↓↓↓　　　　　　　
いやいやいや・・そもそもさあ、事前に番号聞いとけよ・・最低限のやるべき事やん・・
というか電話の音はゾンビ無視なの？メッチャ鳴ってるけど、気付いた演出皆無ですよ？
出たよ、ブラピ電話に出たよ・・ガチャガチャ音鳴らしながら・・


ブラピ部屋侵入成功！しかし「どのお薬」が可能性的に世界を救えるのか全く分からない！
どれだ・・構わん！全部入れちゃえ！そんな感じで銀色のガンガンにガンガンお薬詰め込みます。
よし、後は脱出だ！そこでハプニング！そしてブラピがとる行動！
　　　　　　　　　　　　　↓↓↓↓↓
だから、最低限「どれをもって帰ってきて！」みたいな指示を出しとけよ！見なさいよ、おかげで
超危険なアイテムをガシガシ箱に詰め込んでるやん。割れるよ？そんな荒いと・・
いや・・その注射打つ前にさあ・・未だやれる事、あるよね？そうそう、あるじゃん、紙とペン。
うんうん、そうそう、監視カメラに向かって・・違うよ！遺言じゃねえよ！
そこは先ず「どれを打てば良いんだ？カメラの動きで返事してくれ！」みたいな事書こうよ！
ワンクッション置けないの？お前ら・・馬鹿ばっかだな・・


とまあ、結局「注射」が世界を救うポイントになるのですが、ここのブラピが自分に注射を打つまで、
その決心の過程が説得力皆無。

ざっと流れを。
ポイントの部屋に入ります。キーアイテムを手に入れます！
で、案の定、外にゾンビが居ます。ここまでは良いんです。

部屋の外に居るゾンビ、何体だと思いますか？１体です。たったゾンビ１体。

それなのに、「もう、これしかない」と言った顔で、死を覚悟した注射をブラピが打つんです。
いやいやいやいや・・たおそ？さっき元気に工具で２体倒したやん？ね？たおそ？

ここでいよいよ私的な”良い所探し”はギブアップ。
少し考えれば・・例えば部屋の周りを大勢のゾンビが包囲していれば、「まあ、もう注射しかないわな」、
と「納得」するのですが、１体て・・

この１シーンが、この映画の全てを語っていたと思います。

無いんです。

絶望感も、説得力も、身内の犠牲も、葛藤も、なーんもない。
家族か世界か？というキャッチコピーありますが、そんなシーン微塵もありません。

あ、一応「家族を助けたければ世界の為に働け」、と軍人に半ば強制的な脅しをかけられますが、
ここがそうならそうなんでしょう。ただ、そのやり取りもやっつけ感満載、一切胸を撃たない。
更に親友的キャラ、上官に全く噛み付かずにブラピ一家を危険地域に放置しちゃうし・・

お前も戦わんかい！ブラピは戦ってるぞ！手首に雑誌グルグル巻いて！

・・もういい。ラスト、みんな身内は生きてて大団円。めでたしめでたし。


・・何故ゾンビは愛され、長く題材として扱われるのか？

生きている死体、だからこそ出来る残酷な行為と描写、それでも付きまとう罪悪、
身内がゾンビになったらという底知れぬ恐ろしき想像、そして現実に起こった場合の悲しさ、
それでも身内がカタをつける、そのカタルシス。ゾンビになる前に人間のまま死ぬか、否か、その葛藤。
そして人間によって世界は終わった、という圧倒的絶望感。

さらっと挙げただけでも、こんなに使い道や意味やメッセージがあるんです、ゾンビには。

この作り手からはその意図も愛情も理解も一切感じ取れなかった。

着地も「ああ・・そうですか・・」という有様。
家族と再開しますが、途中一切家族との愛情を描いてないので、結構どうでも良い。
いや、かなりどうでも良い。
娘２人も出してるのに、家族と離れてから娘と電話で話したの０回。

何か序盤に意味ありげに家族と一緒に逃げた少年も居ますが、全く意味なし、出番なし。

ああ！そうか・続編作る気だな？

観ないわ！もう旧作レンタルでも観ないわ！

・・監督変わったらちょっと考えよう。


兎に角、ゾンビ好きには絶対にオススメ出来ない一本。
そうじゃない人にも「これはゾンビ映画じゃないからね！ね！」と念押ししつつ、それでも
「観なくてよい」とオススメしない一本。

ブラピ、ちょっと太ってたし。

疲れたわ、車壊れるし。