
『TATSUMI マンガに革命を起こした男』
"TATSUMI" (2010・シンガポール・1h36)
監督 : エリック・クー
声の出演 : 辰巳ヨシヒロ、別所哲也
少年少女たちだけのものであると思われていた漫画をより幅広く変化させ劇画を誕生させた漫画家たちの一人辰巳ヨシヒロの生い立ちとその作品5編をアニメーション化。
辰巳ヨシヒロ漫画の画風をそのまま生かしたアニメーション。一般的なセルアニメの技術とは違うようだし恐らくCGなのかと思うがデジタル丸出しのCGアニメではなく。技術的な詳しい事はよく分からないが最大の特長は原作漫画の画風をそのまま取り入れた事で。あと恐らく想像だけどコマ割り(映画で言うとカット割り)やレイアウトとかなんかも原作漫画を忠実にアニメーション化されているのではないだろうか。
もしそうだったとしたらそれは原作漫画ファンにとって相当嬉しい事だと思う。好きな漫画がアニメ化された時にがっかりする事で多いのはやっぱり原作の絵と違ってしまう事で。
そういう事が出来たのは動きの少ない作品だったからというのも有るのかもしれない。アクションやスポーツが扱われている漫画をアニメーション化するのだったらそれはやっぱりアニメならではのバリバリと動くのが見たいだろうし。
辰巳作品5編の内容はほぼ世知辛い世の中を描いた作品。そういう作品が人気が有るのかもしれないがそういった作品ばかりというのも観ていてちょっとしんどかった。
5編中4編で主役の声を演じているのが別所哲也さん。それぞれのキャラクターが巧みに演じ分けられていたのが失礼ながら意外だった。お歳暮のハムだけの人ではなかった。
http://matome.naver.jp/odai/2135324275639212401
元祖ハムの人と言えばやはりスタローン(カーリーヘアー期)でしょうか。
辰巳作品は今まで読んだ事が無かった。劇画誕生の中心人物であった事も知らず。そもそも劇画について今まであまりよく知らなかった事に気付かされた。『まんが道』には激河大介や雑誌の"影”などがチラッと出てきた。
子供の頃は子供向けの漫画しか読まないし、青年誌を読み始める頃になってくると既に漫画と劇画の区別ももうほとんど無く劇画も漫画の中に取り込まれていった時代の子だったのではないかと思う。
辰巳先生の自伝『劇画暮らし』を本作を観た後に読んで一部で俗悪のレッテルを貼られた劇画創成期の事は知った。
『劇画暮らし』を読むと大阪貸本劇画グループも手塚漫画から影響を受けた漫画家たちが多かったのだろうなあと思う。トキワ荘新漫画党グループが手塚フォロワーだとすると大阪は手塚漫画へのカウンターという位置づけになるのかもしれない。
フォロワーとカウンターと方向性は違っても結局どっかの時点でそれらが混ざり合って漫画を更に大きく発展させる事となったのではないか。