寓話の部屋

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第023話 最低野郎

2021-07-13 09:04:41 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第二十三話

「本日は財務省、経済省の優秀な官僚との会談をセッティングしました。」
マルペ君が意気揚々と述べた。

「兵器関連はウリに聞かれても、細かいことまではわからなくてほんの少し心苦しかったニダが、政治経済のことなら任せるニダ!まさにウリの独壇場!」

異世界の前世を誰も知らないので。「いやあんたは弁護士だろう」というツッコミはどこからも発生しなかった。

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財務省官僚A氏
「我が国の経済規模は、コーライ戦争の復興景気、戦没者で人口が減った後の人口ボーナスで常に右肩上がりでした。モトヒノ国からの技術協力と下請け企業の設立などの支援もあり、明日は昨日より絶対に良くなる。そんな明るい希望が常にあったのです。」

経済省官僚B氏
「しかし、コーライ戦争に続いた”代理戦争”が次々に終焉を迎えると、ダイシン帝國が平和友好を演出し、外国企業に門戸を開き始めた頃から風向きが変わってきました。コーライに下請け工場を作っていたモトヒノやツイステの企業が、ほぼ奴隷も同然のより安い人件費を求めて、ダイシン帝國の経済特区に工場を移転する様になったのです。近年、経済成長率がとうとう前年比1%台という低率になり、ヲン通貨高も進み、不況局面と言って良い状態に陥っています。」

「なるほど、聞いたことがある様な話ニダね。それは外需頼みから内需振興に移行する時期が来たということニダよ!」

A・B氏
「なるほど。してそれはどのように……」

「まず、財閥が牛耳って暴利を貪っているコーライ経済のいびつな現状を打開して、国民全体が豊かになる様な政策を採る必要があるニダ。」

「ふむふむ。」
苦学をして、平民から高級官僚となった彼らの琴線に触れる目新しい考え方だった。

「これはウリのトモダチから聞いたことがある政策ニダが、労働者の賃金に最低賃金という額を設定して、労働分配率を上げるニダ。これによって国民所得が増え、内需が喚起されるという塩梅ニダ!」

「労働分配率とは初めて聞く概念ですね。」
この世界にはブリカスがないのでリカルドさんもいないのだ。
「とにかく、どうなるかわかりませんが、上にあげて見ることにしてみます。」

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コーライ王国は、一応大統領制を取る民主主義国家という建前である。
第六共和政というたいそうな名前を付けていたが、現実には貴族や財閥といった影の政府が多大な影響力を持っている二重の権力構造である。
現職の大統領は、任期3年目のパーク・シネ(セクシー美魔女)という歴代初の女性大統領であった。
彼女の父親は、独立直後にクーデターで大統領になり、開発独裁を進め、「サンコーの奇跡」と呼ばれるコーライ王国の高度成長を成し遂げた傑物パーク・チョンセであった。しかし、強くなりすぎた権力者は、この国の闇の勢力に煙たがられ、側近に暗殺され非業の死を遂げた。
彼女は元大統領の子女であり、まごうこと無き上級国民(ノーメンクラトゥーラ)である。ソ連はこの世界にはないが。
そうした悲劇の物語を背景に、贅沢に育ったお嬢様のくせに庶民派を気取り、人気を集めて大統領に当選した。
女性の国家元首というのが珍しい時代であり、コーライの民は民主的で誇らしいとまで感じていた。

しかしながら、彼女の中身は実のところスッカラカンである。
担ぎ上げられたのは良いが、育ちが良いだけで政治行政の実務経験などほとんどなかった。
政策は、官僚の上げてくるものを自分で取捨選択しているという幻想を持ちながらも、実際には陰の政府・官僚にコントロールされていた。

「この最低賃金法というのはどういうものなのかしら?」

経済省官僚B
「は、”ご説明”いたします。これは国内の労働者の賃金を上げることで消費を増やし、内需型の経済に……」

「んー、まあ難しいのは良いわ。なんだか斬新な感じがするから、最近振るわない支持率向上に役立つかもしれないわね。良きに計らって進めてちょうだい。」
お前は女王様か……。せめて自分で少しは考えるべきであっただろうに……。

かくして、最低賃金法が侃々諤々の議論の末、数ヶ月後に施行され、労働者の最低賃金が公定で定められる様になった。

この施策を受けて、財閥系の大企業は、もともと平均賃金が高かったので、あまり影響は受けなかった。
末端の底辺社員には、ノルマを山積みすることで、賃金上昇コストを相殺させようとした。そのキツさに心を病むものも少なくなかった。また正社員を減らし、派遣社員に切り替えて、コストをアウトソーシングした。
そして、最も大ダメージを受けたのは、むしろ中小企業や、個人営業の経営者である。
中小企業の乏しい利益から、どうやって賃金上昇分の原資を捻出できるというのか。
バイトを雇う様な個人営業の店舗経営者などは、バイトの首を切って非雇用者の数を減らした。店主自らシフトに入り、体を壊すものが続出。
1年もしないうちに、失業率など様々な経済指標にも悪影響が出始めたが、忖度した官僚達は、その数字を弄るために、無駄な公営事業(学校や会社の魔灯が消えているのを確認する公務員など)などを展開し、数字上の失業率を誤魔化し、大統領には良い話しかしなかった。

愚策としか言えない経済政策に怨嗟の声は高まり、パーク政権に対する不満はグツグツと少しずつ煮詰まっていった。



2 コメント

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Unknown (チキンサラダ)
2021-07-14 01:26:59
パク・シネ閣下の外見は、やはりアン・シネそっくりなのでしようか?w
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Unknown (ryouchin)
2021-07-14 08:03:21
ライトノベルの常として、美男美女がデフォですのでw
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