S&R shudo's life

ロック、旅、小説、なんでもありだ!
人生はバクチだぜ!!!!

真冬の狂想曲17-6

2006-10-16 10:36:27 | 真冬の狂想曲
 1時間を少しまわった頃、ザキは1211号室に現れた。ジージャンにジーンズ、ハードブーツにパーマのロン毛といういでたちだ。
「おう!ザキ、久しぶり。まだパクられてなかったか?悪いの久しぶりなんにこんな事で呼んで。」
「何言いよんすか、兄さん。何でも使うてください。」
 俺はザキを部屋の奥に招き入れ、松達に紹介した。ザキは深く頭を下げて松、そしてノブに挨拶をした。そして、平井にも頭を下げようとした。
「兄ちゃん、コイツは違うけヘラうたんでいいよ。コイツ等詐欺師やけ、コイツの仲間をこれから生け捕るけ、兄ちゃん悪いけどちょっと付き合ってくれや。とりあえずやっちゃんと二人でコイツ見張っちょってくれんか。」
「はい、分かりました。何でも言ってください。」
「ザキ、とりあえずまだする事もないけ、ゆっくりしちょき。その辺座れよ。」
 俺は俺が寝転がってたベッドの隣のもう一つのベッドにザキを座らせた。ザキはまだあまり状況を把握してないが、平井に敵意剥き出しの視線を向けていた。俺達みたいな種類の人間は簡単だ。同じ傘の下にいる者には徹底して擁護するが、その外にいる者には徹底して敵意を向ける。多くの説明は要らない。
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真冬の狂想曲17-5

2006-10-14 11:25:13 | 真冬の狂想曲
 俺は2ヶ月前に小倉のライブの打ち上げで意気投合して兄弟分になったザキに電話を入れた。数回の呼び出し音で相手はでた。
「どうしたんすか兄さん。」
俺は挨拶も抜きにして用件を切り出した。
「ザキ、お前今暇か?」
「えぇ、暇ですけど、何かあったんすか?」
「今ちょっと、荒事で動きよって人が足りんのやわー。ザキ暇やったら手伝わんか?」
 ザキは少しの間も空けず返答した。
「いいっすよ、暇ですから。どこに行けばいいんすか?俺下関からっすけど、時間大丈夫っすか?」
「おう、全然大丈夫。俺達は小倉駅の上のステーションホテルにおるけ、そっからやったらゆっくり来ても1時間ぐらいやろ。1211号室におるけ、直接上がってきてくれ。」
「分かりました。女帰してすぐ行きます。」
 俺は携帯電話を切り、ベッドの上に置いた。松に1時間程でザキが来る事を告げて、また天井を見上げた。
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真冬の狂想曲17-4

2006-10-12 16:02:09 | 真冬の狂想曲
 俺は現金をコートのポケットに押し込み、それ以外の物は持ってきたショルダーバッグに押し込んだ。そしてベッドに仰向けに転がった。
「ほんで、今どんなふうになっちょん?」
寝たまま松に聞いた。
「どんなふうになっちょんっちやっちゃん、こんなふうよ。とりあえず明後日中村を生け捕ってからの話よ。中村達のバックが何やらごそごそ動きよるらしいけど、向こうが先にヤクザ出してきてくれたらこっちの勝ちやけ。こっちのほうに筋があるけ、先にヤクザ出したほうの負けよ。」
 俺はまだ天井を見続けている。結局大きな話になっていってるんだななんて思いながら。
「ほんでやっちゃん、中村生け捕るときに人が足りんけ、誰か呼んでくれん?誰かおるやろ?」
松はいつもこうだ。金儲けの才能はあるが、人望はあまりない。選挙事なんかのときでも、人に頼まれて人数を集めようとするが、結局集まらず俺に頼みにくる。うんざりしているが仕方がない。これが腐れ縁ってやつだ。
「どんなんでもいいん?」
「どんなんでもいいけど、じぇんならんヤツはダメよ。逃げ出すようなヤツは困るけ。」
 俺は少し考えてから、最近知り合ったヤツを呼ぶ事にした。
「おるおる、いいのが。最近兄弟になった下関のヤツがおるわ。キップが出ちょんヤツやけどいい?」
「いいけど、何でキップ出ちょんの、そいつ?」
「傷害やったか殺人未遂やったかやったわー。前はポン中やったみたいやけど、大丈夫やと思うぜ。」
「いい!そんなヤツの方がいいわ。やっちゃんそれ呼んで。」
「分かったけど、小遣いやってくれよ。」
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真冬の狂想曲17-3

2006-10-11 07:49:29 | 真冬の狂想曲
 ノブと一緒に1211号室の中に入った。かなり広めのツインルームだ。窓のそばのテーブルに松と平井が向かいあって座っている。俺は東京にいるときに、こそっと松の金で買ったショルダーバッグをベッドに投げ捨て、ベッドに腰を下ろした。
「松、俺はどうしたらいいん?」
「そうなんよ、やっちゃん。ノブはそろそろ仕事に戻さんと正明がうるさいし、俺もこっちに帰ってきたら用事がいっぱい入って身動き出来んけ、コイツが逃げんように一緒におってくれん?頼むわ。」
 正明ってのは、俺と一緒でガキの頃から松と腐れ縁の幼馴染だ。今は松の会社の一つの人員派遣会社を任されている。ノブはその正明の部下だ。
「何日ぐらいかかるん?」
「中村が明後日飯塚に入るらしいけ、とりあえず中村を生け捕るまでかな。そうそう、平井が俺達の手に落ちたの中村はまだ知らんけ、平井の電話気を付けちょって。」
 そう言って平井の鞄をベッドに投げた。
「それはいいけど、俺金持ってないけ、飯代ぐらい置いていけよ。」
「平井の鞄に金が入っちょんけ、それ使って。通帳やら印鑑やらカードも入っちょんけ、それもやっちゃんが管理しちょってよ。」
 俺は平井の鞄をひっくり返した。現金の入った袋とそれ以外が入った袋が2つ出てきた。松が整理していたのだろう。金は50万程しか入ってない。この前に見たときよりも少なくなっている。松が使ったんだろう。平井には使う時間などなかったはずだ。
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真冬の狂想曲17-2

2006-10-10 07:31:06 | 真冬の狂想曲
 改札を抜け、コートのポケットから携帯電話を取り出した。
「首藤やけど、どこに行ったらいい?何号室?」
「やっちゃーん、待っちょったよー。1211号室におるけ上がってきて。」
 松が猫撫で声を出すときは気を付けなくてはならない。必ず嫌な頼み事だ。それを断りきれない俺も俺だが。アイツの声には魔力じみた力が宿っている。アイツに何か頼まれるとどうしても断れない。周りの連中に聞いても、みんな断りづらいそうだ。ガキの頃からアイツのおかげで嫌というほど苦労させられてきたものだ。
 駅の構内を伊勢丹があるほうに歩くとすぐ、「ステーションホテル」の2Fエレベーターホールに辿り着いた。初めて「ステーションホテル」に入るが、ここは駅の下が1Fフロントになってるが、フロントを通らずに各階に行けるようになっているらしい。俺はエレベーターのボタンを押して、上りエレベーターを待った。
「首藤さん!」
 突然の聞き慣れた声に俺は振り返った。そこにはコンビニのビニール袋を持ったノブが立っていた。
「お前もおったんか。お前もいい迷惑やのー。」
「そうですよ、でも首藤さんが来たんで俺は帰れますから助かりました。」
「嘘やろ!お前の代わりに呼ばれたんか?冗談やろ!?」
「だって俺仕事がありますもん。」
 ノブはニッコリ笑ってエレベーターのドアを押さえて、俺を先にエレベーターに乗せた。
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