S&R shudo's life

ロック、旅、小説、なんでもありだ!
人生はバクチだぜ!!!!

真冬の狂想曲18-4

2006-10-30 21:06:39 | 真冬の狂想曲
 松と平井は小さなテーブルを挟んで何やら話し込んでいるが、俺はその内容に興味はない。ザキとくだらない話で時間を弄んでいた。
「やっちゃん、悪いけどみんなの着替えやら買ってきてくれん?俺のは要らんけ」
「いいよ、ここにおっても時間潰れんけ。金はこの金使っていいんやろ?」
「うん、これからいろいろ金かかるやろうけ、飯代やら交通費やら全部その金使って」
「分かった」
 俺はザキを連れて1211号室を出た。ホテルを出ると一気に12月の寒さが身にしみる。駅からの連絡通路を通りラフォーレ小倉に入った。男性用の下着を探し回ったが見当たらなかった。そのかわり5Fの古着屋で好みの皮のハーフコートを見つけた。少し迷ったが、ポケットの中には50万入っている。
 俺とザキはラフォーレ小倉を出て駅の近くのローソンに入った。ようやくそこで人数分の下着と靴下を手に入れた。
 ザキとホテルに戻る途中で買い忘れた物を思い出して、もう一度連絡通路を通りラフォーレ小倉のほうに歩いていった。ラフォーレ小倉を通り抜け、ベスト電器に行き、配線用のロックタイを買った。あのプラスチックの帯状の紐みたいなやつだ。そしてもう一度ラフォーレ小倉に入り、あのハーフコートを買った。もちろんあの50万でだ。
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真冬の狂想曲18-3

2006-10-24 22:24:36 | 真冬の狂想曲
「平井ー、どうか?まだ中村をかばって俺達にこみいられるか?それとも中村を売って楽になるか?」
「いえ、私も知っている事は全部話します…。金は確かに中村が全額管理しているはずです」
 平井は静かにだがはっきりと中村について話しだした。
「私は会った事はないですが、中村には資金提供やトラブった時の処理をしてくれる人がバックに付いているはずです。ヤクザではないと思いますが、それに近い人だと思います」
「ほんで、そいつの名前は?」
「名前はよく憶えてないです」
「そうか…、お前の嫁さんはお前の博多の実家でお前のおふくろさんと一緒におるらしいのー、それから美和って女、ニュージーランドに行っとるらしいの、住所はどこやったっけ?まー、後でキムに電話して聞こう」
 松は平井の持ち物から韓国人達が調べ上げた情報を口にした。
「本当に名前は憶えていません!勘弁してください!」
「まーいいやろ、どうせ中村を捕まえたら出てくるやろう。ほんで、まだお前隠してる事があったら今のうちに言っちょけ、後でボロボロ出てきたり嘘ついとったりしたらお前だけやないでお前の周りの連中も全員しまやかすぞ!」
 平井はそのくたびれた顔に涙をボロボロ流して何度も首を縦に振った。完璧に心が折れている。
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真冬の狂想曲18-2

2006-10-22 18:59:52 | 真冬の狂想曲
 突然平井の携帯電話が震えだした。平井は携帯電話の画面が表示した名前を確認して、松に中村からだと告げた。
「平井、何も知らんふりして上手に話せ」
 平井はうなずいて携帯電話の着信ボタンを押した。
「はい、平井です。」
「平井、お前大丈夫か?松崎がお前を生け捕るって息巻いてたぞ」
「そうですか。でも私を捕まえてもどうしようもないでしょ、お金も持ってないですし」
「バカ!そんな事あるか!お前が金持ってると思ってるからお前を探してるんだろう。とにかくしばらく身を隠しておけ。あとの事はこっちでなんとかするから。お前だけはどうにかして助けてやるから、今はすぐ逃げろ。」
 平井は受話器の向こうに聞こえないように溜息を漏らした。
「中村さんはどうするんですか?」
「俺は明後日どうしても仕事で九州に行かないといけないから、それが終わってから東京に戻る。それから川原さんに相談するつもりだ。お前の事もよく頼んでおくから」
「分かりました。じゃー、私はすぐ飛ぶようにします」
「そうしろ、どうも松崎のヤツ東京にいるみたいだからな」
「そうですか、中村さんも気をつけて下さい」
 佐々木がうまい事中村に偽の情報を流しているようだ。中村は俺達が東京にいると思い込んでいる。佐々木も平井も俺達の手に落ちているとは思ってもいないようだ。
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真冬の狂想曲18-1

2006-10-20 17:16:29 | 真冬の狂想曲
 俺のいない間にどんな話になっているかは解らないが、松はいつもとは違う携帯電話で中村に電話をかけた。
「中村さん、今日も昨日話した件やけど、金さえ返してくれたら後は何もせんけ、黙って金返したらどうなんか。おたくのケツ持っとる人にも相談してみい」
 かすかだが携帯電話の向こうの声が聞こえる。
「松崎さん、昨日も話した通り、松崎さん達の金は平井が全部持ってるんですよ。私は一銭も貰ってませんし、何でこうなってるのか分かりません」
「ほう、じゃー平井はこっちで捕まえてもいいんやな?」
「…はい、私も平井がどこにいるのか分かりませんから。さっきも言ったように、私は何も分かりませんので」
「そうか、分かった。アンタも平井に連絡取れたら、俺に電話するように言ってくれ」
「はい、分かりました。連絡取れたら必ず連絡させます。」
 松は電話を切った。
「平井、今の話、聞こえたか?」
「はい、聞こえました」
「中村のヤツ、お前売って自分等は助かろうと思ってるぞ」
 平井は明らかに落胆している。その落胆した表情にみるみる怒りの色が広がっていく。人を騙して飯を食っている詐欺師でも、人に裏切られたら頭にくるらしい。
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真冬の狂想曲17-7

2006-10-17 09:59:30 | 真冬の狂想曲
 「首藤さん。」
ノブがザキと他愛のない話にふけっている俺に話しかけた。
「どうした、ノブ?」
「そろそろ俺仕事に戻らせて貰います。正明さんがうるさいんで。」
「お前、指もないくせに堅気の仕事に行くんか、ここに俺残して。冷たいのー。」
 ノブはヤクザを辞めるときに小指を落としていた。きちんとケジメはつける男だ。
「やっちゃん、正明もうるせーし、ノブも働かせんと会社の利益にならんし、帰らせてやってくれ。やっちゃんが来たら帰っていいって言っちょったんよ。」
「ノブ、後でまた来るんやろうのー?待っちょくけの。」
「勘弁してくださいよ、首藤さん。」
「冗談よ。どっちお前もまた松に呼ばれるやろうけ、そん時の。」
 ノブは松に気付かれないように嫌な顔をした。俺もそれを見て同じような顔をした。
「それじゃー、すいません。先に帰らせて貰います。首藤さん今度ギター教えて下さいよ。」
「お前小指ねーのに無理っちゃ!」
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