バスセンターを通り過ぎるとその場所はすぐに分かった。俺は松木社長のクラウンの後ろにベンツを停めて車外に出た。
「平井、一歩も動くなよ」
俺は平井を恫喝し、前に停まっているクラウンに歩み寄った。俺がクラウンのドアに近づくより早く松はドアを開けてクラウンから降りてきた。それに続きザキも反対側のドアから降りてきた。車内を覗くと松木社長と松木社長が連れてきていた若い者にか乗っていない。
「中村はどうしたん?」
俺は怪訝な顔を松に向けた。せっかく捕まえた獲物をもう逃がしたんじゃないかと。
「なんかそこの会社で急いで整理せないけん仕事があるらしいけ、それに行かせちょん」
「一人でか?」
「大丈夫っちゃ、やっちゃん。こんな状況までなったら流石に逃げきらんっちゃ。それにその会社を整理せな俺達に金返せないっち言うけ仕方ないやろ」
「ほんで一人で行かせたん?ちょっと甘いんじゃねーの。俺なら絶対一人で行かせんけどのー」
「大丈夫っちゃ、ここで松木社長達も張っちょくんやけ。中村も俺がどんなもんか解っちょろうけ。まぁ、とりあえずホテルに帰ろうや。大丈夫っちゃ」
松は自分にも言い聞かせるようにそう言った。俺は納得出来なかったが、所詮人事なので松に従った。俺が相手の立場なら、どんな手を使っても絶対この状況から逃げ出すはずだ。やっぱり金持ちは幸せなんだなと思いながらベンツに乗り込んだ。
「平井、お前後ろに行かんか!」
俺はまた苛立っていた。普段からいつも何かに苛立っていた。普通に仕事をして、ロックバンドをやっていても、ガキの頃全てのものに反抗していた頃や、人の道を踏み外していた頃と変わらない。苛立ちは一つも消えない。
俺はベンツに松とザキを乗せて乱暴に発進させた。
「平井、一歩も動くなよ」
俺は平井を恫喝し、前に停まっているクラウンに歩み寄った。俺がクラウンのドアに近づくより早く松はドアを開けてクラウンから降りてきた。それに続きザキも反対側のドアから降りてきた。車内を覗くと松木社長と松木社長が連れてきていた若い者にか乗っていない。
「中村はどうしたん?」
俺は怪訝な顔を松に向けた。せっかく捕まえた獲物をもう逃がしたんじゃないかと。
「なんかそこの会社で急いで整理せないけん仕事があるらしいけ、それに行かせちょん」
「一人でか?」
「大丈夫っちゃ、やっちゃん。こんな状況までなったら流石に逃げきらんっちゃ。それにその会社を整理せな俺達に金返せないっち言うけ仕方ないやろ」
「ほんで一人で行かせたん?ちょっと甘いんじゃねーの。俺なら絶対一人で行かせんけどのー」
「大丈夫っちゃ、ここで松木社長達も張っちょくんやけ。中村も俺がどんなもんか解っちょろうけ。まぁ、とりあえずホテルに帰ろうや。大丈夫っちゃ」
松は自分にも言い聞かせるようにそう言った。俺は納得出来なかったが、所詮人事なので松に従った。俺が相手の立場なら、どんな手を使っても絶対この状況から逃げ出すはずだ。やっぱり金持ちは幸せなんだなと思いながらベンツに乗り込んだ。
「平井、お前後ろに行かんか!」
俺はまた苛立っていた。普段からいつも何かに苛立っていた。普通に仕事をして、ロックバンドをやっていても、ガキの頃全てのものに反抗していた頃や、人の道を踏み外していた頃と変わらない。苛立ちは一つも消えない。
俺はベンツに松とザキを乗せて乱暴に発進させた。