働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

プロバイダ責任制限法改正 発信者情報開示の在り方に関する研究会

2020年06月09日 | プロバイダ責任制限法
ネット上で不特定多数から浴びせられる誹謗中傷
性暴力被害を訴えた伊藤詩織さんがツイッター上の侮辱的なイラストや言葉で名誉を傷つけられたとして漫画家はすみとしこ(蓮見都志子)氏、また投稿をリツイートした2人(計3人)を東京地裁に提訴したが、ビジネスインサイダージャパンが同日に伊藤詩織さんインタビュー記事(「【伊藤詩織さんインタビュー】漫画家はすみとしこ氏らを提訴。SNSの誹謗中傷など70万件を分析」ビジネスインサイダージャパン、浜田敬子、西山里緒、2020年6月8日配信)を公開。

記事によると、「今回、伊藤さんらはTwitter社に対しての個人情報開示請求は行っていない」とのこと。訴訟を担当した山口元一弁護士は「Twitter社に開示請求をしなくても個人を特定する方法はいくらでもある。開示請求ができないからと安心しているといきなり訴状が来ることがある、とは言っておきます」と。

また、山口元一弁護士は「名誉毀損に当たるかどうかの線引きが非常に難しい」と語り、さらに山口弁護士は、「通常の名誉毀損」と「ネット上で不特定多数から浴びせられる誹謗中傷」との違いから、訴訟の難しさを指摘している。

「例えば『Aは脱税した』という書き込みは明らかに事実に反しているので名誉毀損に当たる。でも『Aは無能で、どうしようもないヤツだ』という発言は、それ自体は名誉毀損には当たらない。けれどそれが1万件来たら、心理的なダメージは『脱税した』と1人から言われるより大きくなるかもしれない。現行法ではそれに対応する策がないのです」。なお、「本件についての名誉毀損的な書き込みは約3万件あるが、法的にはグレーな書き込みは5万件近くある」と推計されるとのこと。

さらに、記事によると、「現在、総務省で、個人情報開示請求のプロセスを定めた『プロバイダ責任制限法』の改正議論が始まっている。争点はいかに訴訟までの手続きを簡素化していくかだ」とのこと。

プロバイダ責任制限法の概要(総務省)
・プロバイダ責任制限法の正式名称
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律

・プロバイダ責任制限法の趣旨
特定電気通信による情報の流通(掲示板、SNSの書き込み等)によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者(プロバイダ、サーバの管理・運営者等。以下「プロバイダ等」といいます。)の損害賠償責任が免責される要件を明確化するとともに、プロバイダに対する発信者情報の開示を請求する権利を定めた法律

・プロバイダ責任制限法の内容
1 プロバイダ等の損害賠償責任の制限
特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときに、関係するプロバイダ等が、これによって生じた損害について、賠償の責めに任じない場合の規定を設けるもの
2 発信者情報の開示請求
特定電気通信による情報の流通により自己の権利を侵害されたとする者が、関係するプロバイダ等に対し、当該プロバイダ等が保有する発信者の情報の開示を請求できる規定を設けるもの

プロバイダ責任制限法改正に向けて
総務省が「発信者情報開示の在り方に関する研究会」立ち上げ

総務省は、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示の在り方等について検討するため「発信者情報開示の在り方に関する研究会」を立ち上げ、第1回会合を2020年4月30日に、第2回会合を2020年6月4日に開催。

発信者情報開示の在り方に関する研究会
1 目的
本研究会では、インターネット上の情報流通の増加や、情報流通の基盤となるサービスの多様化、それに伴うインターネット上における権利侵害情報の流通の増加を踏まえ、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示の在り方等について検討を行う。

2 検討事項案
(1)プロバイダ責任制限法における発信者情報開示の対象となる発信者情報の見直し
(2)発信者情報開示手続を円滑にするための方策の検討
(3)その他

3 構成員
上沼 紫野・虎ノ門南法律事務所弁護士
大谷和子・株式会社日本総合研究所執行役員法務部長
垣内秀介・東京大学大学院法学政治学研究科教授
北澤一樹・英知法律事務所弁護士
栗田昌裕・名古屋大学大学院法学研究科教授
鎮目征樹・学習院大学法学部教授(座長代理)
曽我部真裕・京都大学大学院法学研究科教授(座長)
前田健・神戸大学大学院法学研究科准教授
丸橋透・明治大学法学部教授
若江雅子・株式会社読売新聞東京本社編集委員

4 スケジュール
2020年4月30日に第1回会合を開催し、以降順次開催の上、2020年夏頃を目途に中間報告の取りまとめを行う予定。(総務省ホームページより)

発信者情報開示の在り方に関する研究会(総務省ホームページ)

発信者情報開示の在り方に関する研究会・第1回議事概要(PDF)

「法務省民事局・福田企画官:2点ありまして、まず1点目は、ほかの構成員の方々からのご発言もありましたように、この発信者情報開示の分野において、被侵害者のプロバイダに対する関係は実体法上の請求権という立て付けになっておりますので、やはり訴訟手続というものが必須になってこようかと思います。ですので、これとは別に、手続上のプロバイダの義務というものを観念することができるのかどうかという観点からの検討を盛り込んでもらいたいと思っております。」

「福田企画官:2点目ですけれども、我々は基本法としての民事訴訟法や民事保全法を所管しておりますが、この発信者情報の分野のみならず、一般化して考えてしまいますとなかなかいろいろな課題が出てくると思います。ですので、先ほど大谷構成員からもありましたように、プロバイダ責任制限法の中での議論ということがどこまでできるのかというのを深掘りしていただけるといいかなと考えております。」

「中川課長補佐(研究会事務局):今後の予定としていたしましては、三、四回程度優先的な課題について議論を深めていただきまして、7月頃に中間取りまとめ案をまとめていただけると幸いでございます。その後、随時検討を続けてまいりまして、本年11月頃に最終取りまとめ案ということにさせていただければと思っております。 」(第1回議事概要より)



最新の画像もっと見る