働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

雇用類似の働き方-労働者定義拡大は早急の課題

2019年10月25日 | 雇用類似の働き方
厚生労働省(雇用環境・均等局)が実施する有識者会議「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」が「中間整理」を公表後はしばらく開催されていませんでしたが、第14回検討会が2019年10月30日に開催されます。議題等は次のとおり予定されています。

日時:2019年10月30日(水)10時00分~12時00分
場所;中央労働委員会7階講堂 (東京都港区芝公園1-5-32)
議題:
(1)中間整理を受けた今後の検討会での主な検討事項等について
(2)「雇用類似の働き方」として保護の在り方を検討すべき対象者について
(3)契約条件の明示、契約の締結・変更・終了に関するルールの明確化等について
(4)その他

「中間整理を受けた今後の検討会での主な検討事項等」が議題になっていますが、中間整理には次のように記載されています。

現在の労働基準法上の労働者性(以下「労働者性」という)が認められない者に対する労働政策上の保護の在り方を検討する視点として、現在の労働者性が適当であるかを念頭に置いておくことは必要であり、継続して検討すべき課題であるが、労働者性の見直しは、これまでの労働者性の判断基準を抜本的に再検討することとなるため、短期的には結論を得ることは困難と考えられる。このため、当面は、自営業者であって、労働者と類似した働き方をする者を中心に検討することが適当。

中間整理では「労働者性の見直しは、これまでの労働者性の判断基準を抜本的に再検討することとなるため、短期的には結論を得ることは困難と考えられる」とし、「労働者性の見直し」、つまり労働者定義の拡張(拡大)については「結論を得ることは困難」だからと消極的な、否定的な意見となっています。

しかし「雇用類似」にかかわる労働者定義拡大については早急に方向性をしめして結論を出すべきです。現在、雇用関係にない「雇用類似」の働き方については、労働組合法では労働者となる場合もありますが、労働基準法・労災法では認められていません。だからフリーランスなどは労働基準監督署では「門前払い」となっています。

この現在の「雇用類似」の働き方について、労働組合法と労働基準法・労災法等とでは「整合性がない」という状態は、早急に改善すべきです。

なお、第1回「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」において、労働法の専門家・水町勇一郎委員(構成員)は次のように意見を述べています。

1 非雇用型・擬似自営業者的な労働者の増加
皆さんは御存じのように、シェアリングエコノミーやプラットホームビジネスの発展の中で、世界的に非雇用型、擬似自営業者的な労働者が急速に増えて、それは労働法の観点から言えば、最低賃金法や労災、更には社会保険の事業者負担のないような形態の労働形態、労働者が急速に増えています。

日本でも同じように、イノベーションとの関係で、世界に比べて早い遅いというのは若干あるかもしれませんが、大きな流れとしてはシェアリングエコノミーとかプラットホームビジネスがどんどん発展していくことが考えられます。既に、伝統的には運輸業、出版業、小売業などで、こういう形態の人たちは日本でもたくさん存在していて、これから他の業態にもかなり広がっていくのではないかと思われます。

更には、今回働き方改革関連法案が成立し、これから施行を迎える中で、かなり労働法の保護強化が進んでいく中で、コスト削減を求める動きとして、このような動きが加速していくことが容易に予想されるわけです。

そのような中、どういうことを行っていくべきかという点で、先ほど局長から適切な保護という話がありましたが、もちろん、公正労働条件というので、労働者に適切な実態にあった保護を及ぼすということも大切ですが、他方では、公正競争条件、公正な競争条件を整えて、どういう働き方であっても、それが健全な働き方として労働市場の中でバランス良く発展していくことも大切なので、労働法の保護という観点からと、健全な経済政策や労働市場政策として、健全に発展をするためにどういう競争条件を設定すべきか、ということを考えることが必要かと思います。

2 労働者概念そのものをどう考えるか
制度設計として簡単に、私自身が今思っている方向性としては2つあります。1つは、労働者概念そのものをどう考えるかということです。

これまで伝統的に、指揮監督とか人的従属性と言われるものに重きを置いてきた労働者概念が、指揮命令はしないが労働者という、例えば裁量労働者ですが、裁量労働者はほとんど現場で指揮命令をしませんが、労働基準法や労働法の適用がある労働者と言われていまして、指揮命令は逆にしないけども、成果を上げて、売上げだけ上げてこいというような労働者が世界的に増えていて、もう指揮命令をしなくても、逆に指揮命令の責任は本人任せにして、結果だけ取ってこいというような実態としての労働者が世界的に増えているので、労働者概念について、余りに指揮命令とか人的従属性にこだわっていくと、労働者の底が簡単に抜けてしまうという事態なのです。世界的に人的従属性も含めながら、更には経済的従属性をどう労働者概念の中に入れていくかということが、大きな流れとして言われています。

日本では、経済的従属性を取り込んだ概念として、労組法上の労働者というのが労基法と違うということで定義されて運用が始まっていますが、労基法や労働契約法上の労働者について、人的従属性を重視し続けていいのか。労働法の本丸であるところを、経済的従属性という観点からどう基盤を見直していくかということが、世界的に行われている重要な課題なのです。

ただ、これはかなり骨の折れる作業になります。これは法律で全体を変えていくか、それとも実態に合わせて判例等、個別にだんだんシフトしていくかというやり方は世界でいろいろありますので、それに対してこの検討会でどういうふうな方向性を示すか、示し方は幾つか工夫はあると思いますので、これは機会があればこういうお話をしていきたいと思います。

3 労働者概念自体を変え労働法の構造を大きくシフトする
もう1つが、労働者概念自体を変えて、労働法の構造自体を大きくシフトさせていくことを見据えながら、優先度の高い事項については、なるべく早く各法、個別の立法等の整理をしてきちんと対応していくということです。

例えば契約条件を明示するとか、報酬がきちんと支払われるという履行を確保するとか、更には安全衛生・労災というのは、各国で優先事項の高いものとしてはやられておりますが、そういうものについては、各法を部分的に修正していくことによって射程カバーを広げていくという工夫の仕方もあるかもしれません。そういうことを視野に入れながら、政策的に、ただこれはかなり大変な大きな作業にはなりますが、社会の動きを見ますと、5年も10年も掛けてやっていくと、あっという間に労働法とか競争条件の底が抜けてしまう事態になってしまいますので、社会の動きを迅速に察知しながら早く検討を進め、講じることができるところはなるべく早く講じていくことが必要ではないかと私は思います。

追記 1
「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」事務局が準備した「中間整理を受けた今後の検討会での主な検討事項」案には労働者定義拡大について全く触れられていません。労働者性の問題について「雇用類似の働き方論点整理検討会」については今後議論を見送るのか、もしくは今後は関与しないということかもしれません。

追記 2
令和元年10月30日 9:58~12:01
第14回「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」開催される

本日の議題は、
① 中間整理を受けた今後の検討会での主な検討事項等について
② 「雇用類似の働き方」として保護の在り方を検討すべき対象者について
③ 契約条件の明示、契約の締結・変更・終了に関するルールの明確化等について

「① 中間整理を受けた今後の検討会での主な検討事項等について」の資料1については、事務局からの説明に質問等はなかった。
「② 「雇用類似の働き方」として保護の在り方を検討すべき対象者について」の資料2については、 物品等の製造・加工等だと事業者性が強くなるので外すことになるか。

基本的には個人を基準に考えるべきだろうが、一人会社をどう考えるか。場合によっては入れてもいいのでは。
どの程度違うか実態がわかれば教えて欲しい。
独禁法上で役務(サービス、物品)で違いはあるか。
→大きな違いはない。情報成果物も含まれてきた。

物品製造加工等が家内労働法に入ってくるので、雇用類似に入るか。
物品等の製造加工も含めるべき。
形式的に法人、雇用ではなく、実態をみるしかないかと。
契約の相手側は法人に限定か。
法人については保護対象について詳細にみていく必要が。

家内労働法で同居の親族だけ使用してよいのはなぜか。
実際に役務を提供している人が誰なのか?が重要になるのか。
他の法律から抜け落ちる人のフォローが必要。
中小事業主の特別加入のような考え方も。
委託者が消費者である場合は、プラットフォーム(仲介者)が使用者とみるべきケースも。

発注者側に求める事項は事業者を念頭においている。
ハラスメントなどは発注者が誰かにかかわらず…。
プラットフォームが介在する場合をここでは対象としないのがはたして良いのか。
年内のとりまとめを念頭に「置いといて」は良いが…。
昔と違って家族が縮小している。

サービスに限らず、物品等の製造加工も含めて良いのでは。
法人化するのは非常に容易になっている。
力(ちから)の格差からくる、 特殊性からくる 保護の必要性から…。
要件の段階から「ガチッ」っと絞るのではなく 0か1ではなく、中間的な保護もありうるのでは。

プラットフォームワーカーは当然入るべき。 形式的に外すのは反対。
何が保護の必要があるか確認しましょう。
規制の内容によって対象者がかわる。
ここで対象者をカッチリ限定するのは得策ではない。
詳細な対象者は、このあとの規制内容のところで。

保護の内容ごとにどの程度異なるのか。
対象者が異なるのは混乱する懸念も。
雇用類似就業者を狭く規制するなら労働法に近い保護を与える必要も。
プラットフォームが対象になるのか。
→議論の対象となる。
→働く人が誰で、発注者が誰なのかを検討。

実際にはプラットフォーム事業者の支配がおよんでいる。
大まかな土俵は必要。
「対償として報酬を得る」要件がないが。
→要件に含めている。
有償ボランティアはのぞく方向で。
プラットフォームを議論の対象に含めることについては一致。
ここでは事業者性のある者からの発注の議論に。
ちょっと友人に頼んで友人に事故があった場合は。
製造加工も含める。
法人である場合の検討。
主として事業者せいのある委託者について…。
――など多数の意見や質問が出ていた。

「③ 契約条件の明示、契約の締結・変更・終了に関するルールの明確化等について」についても、 プラットフォームエコノミーのように実際の契約条件を決定している者が規制の対象になることも。 ルールづくりにおいて、ルールがソフトなものか(ガイドラインなど)。

(ソフトなものなら)対象を幅広くとってもいい。
(ルールが)法規制か。
違反の効果によっても限定しなくては…。
どのような契約条件を明示させるかが非常に重要。
一方的に契約解除の事項ばかり書かれるのは本末転倒。
下請法3条(明示)がなかなか守られていない。
明示を促すのは賛成。
募集段階と契約段階の2段階で議論すべき
一定の条件を示すべきというのは共通認識。
(変更の)合意を促すための条件をどう示すか。
一般論として合意をすれば変更できるが、そうでない場合に一方的に変更可能かというのが議論の中心かと。
実効性を確保する仕組み、手続きを。

契約の変更には、何らかの歯止めが必要。
何らかのルール、条件が必要。
再交渉を促すことも選択肢として考えられる。(ガイドラインなどで) 約款については、参考資料1の13ページに。
――など多数の質問や意見が出ていた。

なお、「契約の終了に関するルールの明確化等」については、次回議論されることになった。 次回(第15回)は、11月下旬に開催される見通し。(『労働基準広報』編集部ツイッターアカウントより)

追記 3
論点整理検討会でプラットフォームワーカー(レイバープラットフォーム)を「雇用類似」に入れるべきとの意見があった。 労働政策研究・研修機構(JILPT)ホームページの「シェアリングエコノミーに関する法的課題」ページ「2.レイバープラットフォームの法的課題レイバープラットフォーム」が参考になります。


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