働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

国民投票法改正案とは 問題点 わかりやすく

2020年05月20日 | 国民投票法改正案
国民投票法改正案とは
まず国民投票法改正案は「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」略称になるが、昨日(2020年5月19日)から「#国民投票法改正案に抗議します」というタグがつけられたツイート(5月20日AM11:20現在326,438件のツイートでトレンドに)<追記:5月20日PM3:10現在402,627件のツイートでトレンドに>が目立つようになった

これは、5月19日に自民党・公明党の幹事長と国会対策委員長らが国会内で会談し、「衆議院憲法審査会で継続審議となっている国民投票法改正案について『結論を出すべきだ』として、今の国会での成立を目指す方針を確認」(NHKニュース)したことに多くの人が反応したことによるもの。

検察庁法改正案問題でも言われていたが、「コロナ禍」の中、国民投票法改正案が「それほど成立を急ぐ必要があるのか」「不要不急の法案ではないのか」など、国民投票法改正案・内容(条文)の問題点を検証する「以前の問題」になるが、今回は最も大きな問題点と言わざるを得ない。

「何が不要不急って、改憲ほど不要不急なものももないので、改憲以外に使い道のない国民投票法改正案なんて、コロナウイルス対策で国会がクソ忙しいなか、国会で審議しないでください」(菅野官氏のツイート)

「さんざんの自粛強要で市民経済は既に満身創痍であるにも関わらず、10万円の現金給付どころか申請用紙さえ送られてきていない人々が大半。税金布マスクも届かない。なのに安倍政権が夢中なのは私利私欲の改憲が目的の国民投票法改定。国家ごっこなら無人島でやれと」(異邦人さんのツイート)


国民投票法改正案の内容とは
国民投票法改正案の内容については、(「わかりやすい」とは言えないが)簡単に言うと次の7項目になる。
1 投票人名簿等の縦覧制度の廃止及び閲覧制度の創設
2 「在外選挙人名簿」への登録の移転の制度(出国時申請)の創設に伴う国民投票の「在外投票人名簿」への登録についての規定の整備
3 共通投票所制度の創設
4 期日前投票関係
5 洋上投票の対象の拡大
6 繰延投票の期日の告示の期限の見直し
7 投票所に入ることができる子供の範囲の拡大

国民投票法改正案の問題点とは
2018年6月27日、日本弁護士連合会は「憲法改正手続法改正案(国民投票法改正案)の国会提出に当たり、憲法改正手続法の抜本的な改正を求める会長声明」を公表し、憲法改正手続法改正案(国民投票法改正案)の問題点を指摘している。

日本弁護士連合会・会長声明では、「当初、この(国民投票法改正案)7項目に加え、憲法改正手続法改正案((国民投票法改正案)では、今国会に提出される予定の公職選挙法改正案の郵便投票の対象拡大も検討するとされていたが、この提案は見送られている。投票環境向上のための方策として、郵便投票の対象拡大も十分に検討されるべきである」と指摘されている。

国民投票法改正案と関連する「公職選挙法改正案の郵便投票の対象拡大」は、今の状況にあっては、尚更重要であると思うので、必ず検討すべき課題だろう。

そして日本弁護士連合会・会長声明は、憲法改正手続法改正案(国民投票法改正案)に関して8項目の見直しを要求している。

日本弁護士連合会・憲法改正手続法改正案(国民投票法改正案)見直し8項目
1 原則として各項ごと(場合によっては条文ごと)の個別投票方式とすること
2 公務員・教育者に対する運動規制は削除されるべきであること
3 組織的多数人買収・利害誘導罪の設置は削除されるべきであること
4 広報協議会は賛成派と反対派の委員を同人数とすべきであること、公費による意見広告は幅広い団体が利用できる制度にすべきであること、有料意見広告については、賛成派と反対派の意見について実質的な公平性が確保されるよう、慎重な配慮が必要であること及び広告禁止が国民投票の期日前14日となることが適切であるか十分に検討されるべきであること
5 発議後国民投票までの期間は最低でも1年間は必要であること
6 最低投票率の規定は必要不可欠であり、また、無効票を含めた総投票数を基礎として過半数を算定すべきであること
7 国民投票無効訴訟の提起期間の「30日以内」は短期にすぎ、また少なくとも全国の各高等裁判所を管轄裁判所とすべきであること
8 合同審査会や両議院の議決が異なった場合に開くことのできる両院協議会は各議院の独立性に反するので国会法の改正部分は削除されるべきであること。

この8項目につづいて次のように記載されているが、「コロナ禍の中、不要不急の法案ではないか」という問題を除くと、このことが一番大きな問題点となる。

「以上の8項目のうち、とりわけ憲法改正手続法成立時の参議院の附帯決議において、施行までに必要な検討を加えることが求められている、テレビ、ラジオの有料意見広告規制及び最低投票率制度については、上記のような見直しが早急に必要である。」

「#検察庁法改正案に抗議します」とタグつきツイートを始めた笛美さんも「#国民投票法改正案に抗議します」というタグをつけて「広告の力を知っているからこそ、マス広告を憲法改正キャンペーンに使うのはやめてほしいです。予算が多い方が華やかな広告が作れるし、露出も増やせるので有利に決まっています。国民は広告よりも改正草案の中身を知らされるべきです。」とツイートしている。

憲法改正手続法改正案の国会提出に当たり、憲法改正手続法の抜本的な改正を求める会長声明

追記(2020年5月21日)
衆議院憲法審査会は5月21日に開かれた幹事懇談会で、5月28日に審査会を開催して国民投票法改正案やCM規制の在り方をめぐり自由討議を行うことを正式決定。

追記(2020年5月23日)
「今国会の会期末が6月17日に迫る中、政府・自民党が世論の反発が強い法案の成立を断念する傾向が目立っている。国内で開発された種苗の不正持ち出しを禁じる種苗法改正案は、著名人がツイッターで批判したこともあり、次国会への先送りが濃厚だ。新型コロナウイルス対策となる令和2年度第2次補正予算案の会期内成立に万全を期すためだが、憲法改正手続きを定める国民投票法改正案の成立も危ぶまれており、党内では懸念も深まっている。」(産経新聞電子版、5月22日配信)

追記(2020年5月28日)
第1回「衆議院憲法審査会」が午前9時半から開催されたが、案件は「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件」(憲法改正国民投票法=国民投票法を巡る諸問題) 。この憲法審査会は、国民投票法改正に関する自由討議という形式で行われ、与党・野党各党が「国民投票の際における課題」などについて個々に意見表明。

TBS NEWS(電子版、5月28日11時23分配信)によると、自民党の新藤義孝・衆議院議員は「いかなる状況下においても政府の行為を監視し、適切な立法を行うといった国会機能を確保する観点から、本会議の定足数をめぐる憲法解釈上の論点や国会議員の任期に関する議論が早急に必要ではないかと提起しております」と述べた。

また、立憲民主党の山花郁夫・衆議院議員は「ネット広告については、なんらの規制がありません。流言飛語が跋扈(ばっこ)するおそれがあるなど、対応策の検討が必要ではないでしょうか」と語った。

このように衆議院憲法審査会では、国民投票の際のCM規制をめぐり、立憲民主党の山花議員は「資金量の多寡によって結果に影響を与えるおそれがある」と指摘したが、公明党の北側副代表は「ネット広告の規制は現実的には困難で、政党側で自主規制ルールを設けるべき」などと主張。

結局、国民投票法改正案は継続審議となっているが、衆議院憲法審査会で自民党は「早期採決」を求め、野党側は「採決には応じない」構え。

なお、BLOGOSに立憲民主党の大串博志・衆議院議員が「今週の衆議院憲法審査会」(2020年5月25日13時15分配信)と題した記事を投稿しているが、大串議員によると「国民投票法が作られた際、議論の中で民放連からはCM規制について量的な自主規制を行うとの明言がなされました。これを前提に作られたのが現在の国民投票法。ところがその後、一昨年になって民放連は量的な自主規制は行わないと、態度を一変」させた、とのこと。

そして「そうであれば、そもそも国民投票法が作られた時の前提が無くなってしまっているわけで、この点をまずはしっかり議論しなければなりません」、「ところが与党はこの議論には消極的です。それよりも、国民投票法の技術的な論点について改正を進めて、憲法改正に向けて『動いている感』を出したいという下心でしょう。このように、与野党間での原則的な意見の隔たりが大きくあります。採決などに至れる状況では全くありません。今は新型コロナウイルス対策に集中するべきです」と書いている。

追記(2020年5月29日)
共同通信は、5月28日に開催された衆議院憲法審査会で、自民党議員が早期採決を改めて訴えたのに対し、立憲民主党などの野党議員は「政党CM規制強化を含めた改正の同時実施」を主張したため、「双方は折り合えず、日程的に厳しい情勢となった」となり、「与党などが(20)18年6月に提出した憲法改正手続きの国民投票法改正案は、今国会成立が見送られる見通しとなった」と報じた。

「与党内に、成立までは不可能でも衆院採決を目指す声があり、今後の焦点となる。自民党幹部は改正案について『今国会成立は現実的に難しくなった』と言及。国対筋は『衆院採決までは持ち込みたい』と述べた。ただ公明党幹部は『成立しないなら衆院通過にあまり意味はない』との見方を示した。」(共同通信、2020年5月28日21時35分配信)

追記(2020年11月11日)

毎日新聞は「自民党の森山裕、立憲民主党の安住淳両国対委員長は(11月)11日、国会内で会談し、衆院憲法審査会を19日、20日の両日に開催することで合意した。先の通常国会で積み残した自由討議や継続審議扱いになっている国民投票法改正案を審議する見通し。与党側は国民投票法改正案の今国会中の採決を目指すが、野党側が応じるかどうかは不透明な状況だ」と報じた。

森山氏は会談後、記者団に「長い間、暗礁に乗り上げた感のあった改正案だが、与野党の協議が整って審査を始めることができるということは大変ありがたい」と述べた。与野党は12日に衆院憲法審査会の幹事懇談会を開き、具体的な審議内容を詰める。

これまで野党側は「安倍政権下での憲法改正は認めない」と主張し、その手続き法の改正案の審議に難色を示してきた。しかし、国民投票法改正案の継続審議は2018年の通常国会以降、7回連続となっており、これ以上の議論の停滞は国民の理解を得にくいと判断。菅政権発足を契機に「(与野党が激しく対立せず)静かな環境の中、コンセンサスを作る」(安住氏)ことを条件に応じることにした。

ただ、採決については、森山氏が記者団に「言わず語らずご理解いただいていると思う」として今国会中の衆院通過に意欲を示したのに対し、安住氏は「与野党の筆頭幹事間でコントロールしてもらう」と述べるにとどめている。(毎日新聞、2020年11月11日18時4分配信)


追記(2020年11月13日)

朝日新聞は「国民投票法改正案の採決、応じてもいい」と国民民主党・玉木雄一郎代表が11月12日の記者会見で発言したと報じ、玉木代表の発言録を次のように掲載。

(与野党が合意して衆院憲法審査会が開かれることになったことについて)国民民主党は、毎週開くべきで、開かれれば参加して議論すると言ってきた。非常に良かった。

国民投票法改正案については賛成したい。だが裸で賛成ではない。ネット広告規制、外国人寄付規制など追加の法改正がいる。今の改正案の成立後、残りの問題を議論する約束がとれれば採決に応じてもいい。きちんとした文書にしたり、憲法審会長が議事録に明確に残る発言をしたりして、担保してもらえるなら、やぶさかではない。せっかく憲法審が開かれるのでいい議論をしたい。(朝日新聞デジタル、2020年11月12日21時39分配信)


追記(2020年11月20日)

NHKニュースは「国民投票法の改正案について、国民民主党の山尾・憲法調査会長は、党として求めていた条件が自民党に受け入れられたとして、採決に応じ、賛成する考えを示しました」と報じた。

国民投票法の改正案をめぐって、国民民主党は、インターネットの普及で広告規制は不断の見直しが必要だとして、採決したあとも衆議院憲法審査会で議論を続けることを条件に採決に応じる考えを示してきました。

19日の衆議院憲法審査会で、国民民主党の山尾・憲法調査会長は、与党側の筆頭幹事を務める自民党の新藤・元総務大臣に対応をただしたのに対し、新藤氏は、「審査会で議論を前に進めることを約束したい」と述べました。(NHKニュース、2020年11月17日17時59分配信)


追記(2020年11月25日)
時事通信は「衆院憲法審査会の与党筆頭幹事を務める新藤義孝氏(自民)は24日、野党筆頭幹事の山花郁夫氏(立憲民主)に対し、憲法改正に関する国民投票の利便性を高める国民投票法改正案を26日に採決することを提案した。立憲などは慎重な姿勢を崩しておらず、25日の幹事懇談会で改めて協議する」と報じた。

これに先立ち、日本維新の会の遠藤敬国対委員長は自民、公明両党の国対委員長と国会内で会談。改正案の継続審議が2018年の提出以来続いていることに触れ、「いつまでも引っ張らず、決着をつけてほしい」として採決に踏み切るよう要請した。(時事ドットコムニュース、2020年11月24日17時09分配信)

国民投票法の改正案をめぐって、国民民主党は、インターネットの普及で広告規制は不断の見直しが必要だとして、採決したあとも衆議院憲法審査会で議論を続けることを条件に採決に応じる考えを示してきました。

19日の衆議院憲法審査会で、国民民主党の山尾・憲法調査会長は、与党側の筆頭幹事を務める自民党の新藤・元総務大臣に対応をただしたのに対し、新藤氏は、「審査会で議論を前に進めることを約束したい」と述べました。(NHKニュース、2020年11月17日17時59分配信)


追記(2020年11月26日)

読売新聞は「衆院憲法審査会は26日午前、憲法改正の国民投票の利便性を高める国民投票法改正案について初めての質疑を行い、実質審議入りした。この日は採決を行わない方針で、12月5日までの今国会中の成立は見送られる公算が大きい」と報じた。

改正案は改憲の国民投票の際、駅や商業施設に共通投票所を設けられるようにすることなどが柱で、自民、公明、日本維新の会などが2018年6月、通常国会に提出した。同年7月に衆院憲法審で趣旨説明を行ったが、質疑は行われないまま、計7国会にわたって継続審議となっていた。

この日は質疑に先立ち、改正案などをテーマに今国会2度目となる自由討議を行った。自民党の小林鷹之氏は、改正案について「投票環境を向上させるもので、速やかに実現させることが適切だ。憲法本体のあり方の議論も進めていく必要がある」と述べ、早期の採決を求めた。

日本維新の会の馬場幹事長は「(改正案という)当たり前の宿題はさっさと片づけて、肝心の憲法の中身に関する議論を粛々と進めるべきだ」と同調した。

一方、立憲民主党は改正案の内容に異論はないとしているが、テレビCMやインターネット広告の規制を優先して議論すべきだと主張している。立民の辻元清美副代表は、CM規制について、「先送りになるのではないか。国民投票法を改正をする機会を捉えて議論をしっかりするべきだ」と主張した。(読売新聞デジタル版、2020年11月26日12時091分配信)


追記(2021年3月22日)
共同通信(2021年3月21日)は「菅首相は、憲法改正手続きに関する国民投票法改正案について『与野党で今国会において何らかの結論を得ることで合意している。まずは第一歩として改正案の成立を目指していきたい』と語った」と報じた。その結果、「#国民投票法改正案に抗議します」とのタグつきツイートがツイッターのトレンドとなった。一例をあげると、盛田隆二氏は次のようにツイート。

#国民投票法改正案に抗議します
「菅首相「国民投票法改正案、今国会成立目指す」
――企業が新商品のテレビCMを大量投下するように、政府自民党は憲法改正のCMを大量投下して国民投票へ誘導しようと画策してます。CM規制がない現状では電通仕切りで国の形が変えられてしまいます


追記(2021年4月22日)
NHKニュース(2021年4月22日)は「憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案をめぐり、自民党は、大型連休明けの5月6日に採決したいと提案したのに対し、立憲民主党は、さらなる審議が必要だと主張し、引き続き、与野党で協議することになりました」と報じた。

国民投票法の改正案をめぐっては、去年(2020年)、衆議院憲法審査会で実質的に審議入りした際、自民党と立憲民主党の幹事長が、今の国会で「何らかの結論」を得ることで合意していて、その取り扱いが焦点となっています。

(2021年4月)22日は今の国会で2回目となる衆議院憲法審査会が開かれ、改正案の審議と自由討議が行われるとともに、これに先立って開かれた幹事会では、今後の日程について与野党が協議しました。

自民党は当初、22日の審査会で改正案を採決したいとしていましたが、立憲民主党が見送るよう求めていたことから、大型連休明けの5月6日に改めて審査会を開き、改正案の審議と採決を行いたいと提案しました。

これに対し、立憲民主党は、5月6日の審査会の開催には応じるものの、広告規制などを含め、さらなる審議が必要で採決は時期尚早だと主張し、引き続き与野党で協議することになりました。


追記(2021年5月5日)

産経新聞デジタル版(「国民投票法改正案で与党幹事長、立民の修正案受け入れを確認」、2021年5月5日配信)は「自民党の二階俊博、公明党の石井啓一両幹事長は(5月)5日、東京都内で会談し、憲法改正手続きに関する国民投票法改正案について、立憲民主党から提示された修正案を受け入れる方針を確認した。8国会にわたって継続審議となっていた改正案は6日の衆院憲法審査会で修正、可決された上で、衆院を通過し、今国会で成立する見通しとなった」と報じた。

会談には、自民の森山裕国対委員長らも同席。森山氏は会談後、昨年(2020年)12月に二階氏と立民の福山哲郎幹事長が今国会で改正案に関する「何らかの結論を得る」と合意していることを踏まえ、「与野党として国民に約束をしており、一定の結論を出せるようにするということだ」と記者団に述べた。また、森山氏は同日、与党側の考えを立民の安住淳国対委員長にも伝えた。

また、朝日新聞デジタル版(「国民投票法、立憲の修正案を受け入れ 自民・公明が会談」、2020年5月5日配信)も「憲法改正の手続きを定める国民投票法改正案について、自民、公明両党は5日、立憲民主党が提示していた修正案を受け入れることを決めた。今国会中の成立をめざす与党は、6日にも衆院憲法審査会で採決する方針だ」と報じた

自民党の二階俊博幹事長と公明党の石井啓一幹事長が5日、都内のホテルで会談。与党幹部によると、両氏は立憲の修正案を受け入れることで一致した。

立憲はこれまで、テレビやラジオのCM規制について法案に盛り込む必要性を訴えてきた。「(改正案の)施行後3年を目途に必要な法制上の措置を講ずる」とした付則を加えた修正案を先月末に与党側に示し、与党側が対応を協議していた。

改正案は、大型商業施設への共通投票所の設置など7項目が盛り込まれる内容で、2018年に提出された。しかし、安倍前政権が意欲をみせてきた改憲に警戒感をもつ野党が、改憲への環境が整うことになる同法案への慎重姿勢を崩さず、8国会にわたって継続審議となっていた。

ただ、安倍晋三氏が首相を退いたことや、次期衆院選で共闘関係をめざす国民民主党が採決に前向きなことなどから、立憲内にも「潮時だ」との声が強まった。自民と立憲は昨年末に、今国会中に「何らかの結論を得る」ことで合意。4月から憲法審での議論を再開していた。


なお、産経新聞デジタル版(「立民、国民投票法修正を提案、採決賛成へ 付則にCM規制」、2021年4月28日配信)は立憲民主党の国民投票法改正案・修正案について「修正案は、国民投票の公正性を確保するため、有料の放送CMやインターネット広告の制限、資金規制について『検討を加え、必要な措置を講ずるものとする』と明記した。その期限は、現在審議中の改正案の施行後『3年を目途』とした」と報じた。

資金規制とは、特定の外国が投票結果に影響力を及ぼすのを防ぐため、外国人寄付などを規制する内容を想定している。

改正案の採決後、立民は衆院憲法審で、CM・資金規制に関する議論を優先するよう求める方針だ。枝野幸男代表は(4月)28日の記者会見で、CM規制が規定されていない国民投票法は「欠陥法」だと主張。「レールが敷かれていないのにどういう列車を走らせるか議論しても意味がない」と述べ、投票法にCM規制を盛り込む再改正を行わない限り、憲法改正に向けた議論を本格化させるべきではないとの考えを示した。


追記(2021年5月6日)
時事ドットコムニュース(「国民投票法、今国会成立へ 衆院憲法審で修正可決」、2121年5月6日配信)は「自民、立憲民主両党は(5月)6日、憲法改正国民投票の利便性を高める国民投票法改正案を修正し、CM規制や外国人寄付規制の検討を付則に明記することで合意した。これを受け、2018年から9国会にわたって採決が先延ばしされてきた改正案は、同日の衆院憲法審査会で修正、可決された。11日にも衆院を通過し、今国会で成立する見通しだ」と報じた。

審査会に先立ち、自民、立憲両党の幹事長、国対委員長が国会内で会談し、改正案の修正、今国会成立を盛り込んだ文書に署名した。

この後、自民党の森山裕国対委員長は記者団に「各党の一致点を見いだすことが大事だ。いい形で結論が出せた」と強調。立憲の福山哲郎幹事長は「与党がわが党の提案を全面的に受け入れたことを評価する。改正案に賛成し、今国会成立を約束する」と明言した。

改正案の修正は、先月28日に立憲が求めた。CM規制や外国人寄付規制について、付則に「改正法施行後3年をめどに検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」と盛り込む内容。自民、公明両党の幹事長らが5日、受け入れを確認した。


追記(2021年5月7日)
報道によると、国民投票法改正案(正式名称「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」)は2021年5月7日に衆議院憲法審査会で修正、可決され、5月11日にも衆議院を通過する見通しとのことだが、衆議院ホームページでは提出時法律案と要綱だけが公開されている。衆議院憲法審査会で修正された法律案については現時点(5月7日午前5時)では未公開。

「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(国民投票法改正案)」経過(衆議院)
・衆議院付託年月日:令和3年(2021年)1月18日
・衆議院付託委員会:憲法審査会
・衆議院審査終了年月日:令和3年(2021年)5月6日
・衆議院審査結果:修正
・衆議院審議終了年月日:令和 3年(2021年)5月11日
・衆議院審議結果:修正
・衆議院審議時会派態度:多数
・衆議院審議時賛成会派:自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、公明党、日本維新の会・無所属の会、国民民主党・無所属クラブ
・衆議院審議時反対会派:日本共産党
*赤字については2021年5月12日に追記。

「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(国民投票法改正案)」本文(衆議院)

「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(国民投票法改正案)」提出時法律案(衆議院)

「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(国民投票法改正案)」要綱(衆議院)

追記(2021年5月11日)
読売新聞オンライン(「国民投票法と高齢者2割負担、改正案が衆院通過へ」、2021年5月11日配信)は「75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を所得に応じて現行の1割から2割に引き上げる高齢者医療確保法改正案と、憲法改正の国民投票の利便性を高める国民投票法改正案はそれぞれ、(5月)11日午後の衆院本会議で与党などの賛成多数で可決され、参院に送付される」と報じた。

高齢者医療確保法改正案は、単身世帯で年収200万円以上、夫婦ともに75歳以上の世帯で年収計320万円以上の人を引き上げ対象とし、約370万人が該当する。これにより、後期高齢者医療制度での現役世代の負担は年720億円程度軽減される計算だ。

政府・与党は今国会での成立を目指している。実施時期は、2022年10月から23年3月の間で成立後に政令で定めるとしている。実施から3年間は、負担増を月3000円以内に抑える緩和措置を講じる。

国民投票法改正案は、憲法改正の国民投票の際、商業施設に共通投票所を設けることなどが柱だ。立憲民主党が求めた国民投票運動中のCM規制や外国人寄付規制に関し、「法律の施行後3年をめどに検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」と付則に明記する修正を行い、6日の衆院憲法審査会で可決された。自民、立民両党は今国会での成立で合意している。


追記(2021年5月12日)
時事ドットコムニュースは「憲法改正国民投票の利便性を高める国民投票法改正案は(5月)11日の衆院本会議で、自民、公明、立憲民主各党などの賛成多数で可決され、衆院を通過した」と報じた。

改正案は与野党の修正合意により、CM規制の検討などを付則に明記。2018年の提出から3年を経て、今国会で成立する見通しだ。

参院では、早ければ19日の憲法審査会で審議入り。本会議での採決は6月16日の今国会会期末近くになる見込みだ。成立すれば、自民党は「本丸」の改憲論議に着手したい考えで、立憲など野党との駆け引きが激しくなりそうだ。

改正案は、公職選挙法の規定に合わせ、(1)駅や大型商業施設に共通投票所を設置(2)洋上投票を航海実習中の学生らに拡大(3)投票所に同伴できる子どもの対象年齢を拡大―する内容。与党が日本維新の会などと18年6月に提出したが、採決が行われないまま9国会目を迎えていた。


追記(2021年6月9日)
読売新聞は「憲法改正の国民投票の利便性を高める国民投票法改正案は(6月)9日、参院憲法審査会で自民、公明両党などの賛成多数で可決された。自民、立民両党は今国会で改正案を成立させることで合意しており、(6月)11日の参院本会議で可決、成立する見通しだ」と報じた。

改正案には国民投票の際、商業施設や駅などで投票できる「共通投票所」を設けることや、洋上投票を航海実習中の学生らに拡大することなどが盛り込まれている。(読売新聞、2021年6月9日配信)


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