働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

厚労省の研究会で経団連と連合からヒアリング-つながらない権利 法制化

2024年05月10日 | つながらない権利
本日(2024年5月10日)開催される厚生労働省労働基準局の有識者会議(労働基準関係法制研究会)において労使団体ヒアリングとして経団連と連合からヒアリングが実施されますが、連合は「つながらない権利」立法化(法制化)要望。

労働基準関係法制研究会とは
労働基準関係法制研究会は厚生労総省(労働基準局)有識者会議になり、目的は「今後の労働基準関係法制について包括的かつ中長期的な検討を行うとともに、働き方改革関連法附則第12条に基づく労働基準法等の見直しについて、具体的な検討を行うこと」とされています。

また、労働基準関係法制研究会の検討事項は「『新しい時代の働き方に関する研究会』報告書を踏まえた、今後の労働基準関係法制の法的論点の整理」と「働き方改革関連法の施行状況を踏まえた、労働基準法等」とされています。

そして労働基準関係法制研究会のメンバー(構成員)は、荒木尚志・東京大学大学院法学政治学研究科教授(座長)、安藤至大・日本大学経済学部教授、石﨑由希子・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授、神吉知郁子・東京大学大学院法学政治学研究科教授、黒田玲子・東京大学環境安全本部准教授、島田裕子・京都大学大学院法学研究科教授、首藤若菜・立教大学経済学部教授、水島郁子・大阪大学理事(兼)副学長、水町勇一郎・東京大学社会科学研究所比較現代法部門教授、山川隆一・明治大学法学部教授 (五十音順)。

第7回 労働基準関係法制研究会
本日(2024年5月10日)午後4時から労働基準関係法制研究会の第7回研究会が開催され、議題は「労使団体ヒアリング」とされています。

その内容は労働者側団体として労働組合「連合」、また使用者側団体として「経団連」からヒアリングが実施されます。ヒアリング資料(経団連と連合が提出したヒアリング準備資料)は既に厚生労働省のサイトで公開されています。

経団連ヒアリング資料のポイント
経団連ヒアリング資料は「今後の労働基準関係法制に経済界として求めること」と題されていますが、労働基準関係法制の見直しにあたり経済界として求めることとして次のような要望が資料には記載されています。

(1)労働時間制度
副業・兼業の推進に向けた割増賃金規制について「真に自発的な本人同意があり、健康確保を適切に行っている場合は、副業・兼業を行う労働者の割増賃金を計算するにあたって、本業と副業・兼業それぞれの事業場での労働時間を通算しないこととすべき」と要望されています。

また、深夜労働の割増賃金規制について、「 真に自発的な本人の同意や適切な健康確保措置を条件に、自律的に働く裁量労働制やフレックスタイム制適用者が在宅勤務を行う際には、回数制限など一定の要件のもとで深夜割増賃金規制を適用しないこと等とすべき」と記載されています。

(2)労働基準法における「事業場」の考え方
経団連の資料には「現在の事業場単位の規制は見直すべき」「企業単位の届出手続きの範囲拡大に止まらず、就業規則など統一的扱いが求められるものを中心に、意見聴取や労使協定締結の手続きについても企業単位を認めるべき」と記載されています。

(3)労働基準法の「労働者」について
経団連の資料には「業務委託契約を締結して就労している方々の労働者性が判断しやすい、支援・相談体制の強化が重要」「個人事業者に対する保護強化については、労災特別加入制度の対象業務拡大、個人事業者に対する労働安全衛生上の対策、フリーランス新法など、適宜、必要な措置を講ずるアプローチが有効」と記載されています。

(4)過半数労働者代表者制度の見直しについて
経団連の資料には「複数人選出義務化等は反対」「まずは、意見集約のためのメール利用等、過半数代表者への便宜供与措置の実施を前提に、労働者から意見聴取する仕組みを優先して検討すべき」と記載されています。

経団連ヒアリング資料(PDF)

連合ヒアリング資料のポイント
連合が提出した資料は「労働基準関係法制のあり方に関する連合の考え方」と題されています。

まず、連合が「追加すべき」と考える主な検討課題として、非正規雇用の課題(労働基準法「等」であるならば、有期労働契約について無期転換逃れ等の対応や入口規制を含め労働契約法も検討対象とすべきであり、「働き方改革関連法の施行状況を踏まえ」れば、パート有期法の検証は必須)、ジェンダー平等の問題(性別にかかわりなく誰もが安心して働くことができることが重要であるにもかかわらず、ジェンダー平等に関するテーマは、所管部局が異なるなどという縦割り行政によって、労働法制の中心課題から抜け落ちがちで、実効的な法整備が阻害されてきた側面がある)、ハラスメントの問題(労働者が職場で抱える最大のトラブル要因の1つがハラスメントであるにもかかわらず、「新しい時代」の働き方として検討されないのはなぜか。より実効的かつ包括的なハラスメント規制法の制定に向けて、本研究会での検討が必要)の3点が要望されています。

そして個別論点としては、次のように要望が連合の資料には記載されています。

(1)労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇等
連合の資料には「時間外労働の上限は、原則部分を原則として扱い、例外は法所定の「通常予見することができない」「臨時的」な場合に限定すべき」と記載されています。また「裁量労働制・高度プロフェッショナル制度の拡大は行うべきではない」「管理監督者の不適切な運用実態は是正すべき」「テレワーク等については、適切な労働時間管理を徹底することが不可欠
」「すべての労働者を対象に勤務間インターバル規制を導入すべき」「法定休日にかかる不適切な実態は是正すべき」「いわゆる『つながらない権利』の立法化を検討すべき」と記載されています。

(2)労働基準法の「労働者」
連合の資料には「労働者性が認められる者は、労働関係法令の適用を徹底すべき」と記載されています。また「労働者概念を社会実態にあわせて見直すべき」「『曖昧な雇用』で働く者の個別論点毎に保護の必要性について検討すべき」と記載されています。

(3)労使コミュニケーション
連合の資料には「労使コミュニケーションの中核的役割の担い手は労働組合であるべき」「まずは過半数代表者の適正化も含めた過半数代表制の整備・見直しが必要」「労働組合の組織拡大や過半数代表制の整備等の取り組みを徹底した上で、次なる段階として労働者代表制の法整備を検討すべき」「法定手続は事業場単位であるべき」と記載されています。

「つながらない権利」立法化(法制化)
連合は本日(2024年5月10日)開催の労働基準関係法制研究会の労使団体ヒアリングでの資料において「いわゆる『つながらない権利』の立法化を検討すべき」と「つながらない権利」の立法化(法制化)を要望していますが、連合は資料の中に「労働者は勤務時間外であれば仕事に関わる義務は当然にないが、連合調査によれば、『勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくることがある』と回答した者が7割に及んでいる」「 労働者の休息の確保のために使用者からの連絡の遮断を『権利』として認め、そのための権利行使の方法を労使において具体化したり、使用者に一定の対応を義務づける、いわゆる『つながらない権利』の立法化を検討すべきである」と記載しています。

連合ヒアリング資料(PDF)

追記:経団連・連合ヒアリングに関する報道
労働基準関係法制研究会(第7回)での労使団体(経団連と連合)ヒアリングに関する記事を朝日新聞デジタルが報じていますが、有料記事のため一部しか読むことができません。

経団連と連合、働き方の規制めぐり溝 厚労省研究会で意見表明(朝日新聞デジタル)


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