Nice One!! @goo

観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』 (2013) / イタリア・フランス

2014-08-26 | 洋画(ら行)


原題: Sacro GRA
監督: ジャンフランコ・ロージ
鑑賞劇場: ヒューマントラストシネマ有楽町

公式サイトはこちら。

イタリアの首都ローマを囲む環状高速道路GRAに沿って建てられたモダンなアパートに住む老紳士とその娘、シュロの木に寄生した害虫の世界に没頭する植物学者、果てしない交通事故の知らせに休む間もない救急隊員、後継者がいないことに悩むウナギ漁師、年老いたソープオペラの俳優、夢と名声を追う若者など、GRA周辺部に住む人々の暮らしをとらえ、その風景の中からイタリアの光と影や欲望と混沌、そこに生きる人々の息づかいを伝える。(映画.comより)


この夏はローマをテーマにした映画が多く日本公開になっている。このチケットを買う時に、窓口で思わず『グレート・ビューティー 追憶のローマ』と言っていたのには苦笑い。どちらも今年のイタリア映画祭で上映があったものだけど、夏に公開になるので映画祭では見送った作品。当然行く。



ローマを取り巻く環状道路の周辺から見えてくる人間模様。
何組もの人々が登場し、ある者はそれぞれに、またある者は自分語りを始める。
主だったところは以下の人々。

木の中の「音」世界を研究し続ける植物学者
ブルジョアを装い偽りの今を生きる没落貴人
不釣り合いなモダンな建物に移り住み、あてもなくお喋りしながら暮らす老紳士とその娘
事故現場で人命救助を行い、その合間を縫って年老いた母親の面倒をみる救急隊員
伝統を守りつつ後継者がいないことを憂うウナギ漁師
子守唄を口ずさむ両性具有の車上生活者

誰もが皆、脚光を浴びて生きているというよりは社会の裏側に生きていたり、下支えをしていたり、ひっそりと目立たぬように生きている。
一体、木の中の音を研究するってどんなもの? と、およそ想像がつかないようなことに生き甲斐を感じているような、そんな人々。
何かを目指してひたすらに、がむしゃらに走り抜けるというよりは、日々訪れる出来事をそのまま受け止めてケ・セラ・セラ風に暮らす。普通の生き方なんてそんなもんじゃないだろうか。

ローマと言えば一般的には観光地として憧れられたり、歴史の一端を担ってきた重要都市のイメージだけど、観光客目線だけがその都市じゃないってことは当然で、どこにでもその土地に生きる人々は存在する。普通に暮らす人々にスポットを当てるということは、確かに派手なことや面白みには欠けるかもしれないが、そこには生きているという確かな実像がある。生きることは楽しいことばかりではなく、むしろ心を苛んだり、悩んだり、どうにもならないことを繰り返し考えたり、逆に何も考えなかったりと、そちらの時間の方が多いのではないだろうか。本作では敢えてその「何でもない時間」を映し出している。

ごく普通の日常を切り取ったような映像が続き、それぞれに明確な相関関係はないため、ともすると狙いがわからないように見えるが、恐らくは本作の目指す所は、「何が」「何を」というものではないのだと思う。
あくまでもローマに生きる人々をピックアップして、生き様を通じてローマという都市を考えることに立ち返る。一見脈絡のないように見える数々のモチーフだし、内容もごく普通の会話だったりつぶやきだったりするが、何故か見ていて心地よさを感じさせている。この心地よさはどこから来るのだろう。人に密着すると同時に、環状線や都市の俯瞰した風景も入れてみる。日常を主体とした映像で都市を描くことに徹している姿勢がいい。


★★★☆ 3.5/5点





最新の画像もっと見る

4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは (ノラネコ)
2014-09-03 21:35:21
人間の営みなんて、多くはなんでもない時間。
でもそれが積み重なって世界は出来ているんですよね。
映像を使って、そんな世界を表現するハーモニーを作り上げるという、かなりとんでもない映画でした。
返信する
ノラネコさん (rose_chocolat)
2014-09-05 06:15:57
>映像を使って、そんな世界を表現するハーモニーを作り上げるという、かなりとんでもない映画
これもそうだし、『グレート・ビューティー・・』も結構そんなとこあって。
どう書いてよいのやらという気もしなくもないんだけどね。
何を持ってきても成立しちゃうから。
返信する
ふむ (とらねこ)
2014-10-01 13:15:14
私、こちらの方を見過ごしちゃったんですよ。
是非見に行こうと大分前から思っていたのに、忙しい間に終わっちゃってました…。
ので、roseさんの感想読ませていただきました。
なんだか最近、群像劇って割と飽き気味かも。ま、個人的な嗜好ですが。
でも、ソフト化したら見ようと思います。
返信する
とらねこさん (rose_chocolat)
2014-10-01 17:50:28
単館に近い公開だと、見逃しますよね。
私は岩波でやってる『ローマの教室で ~我らの佳き日々~』になかなか行けなくて。あと『大いなる沈黙』も。
近くの二番館上映を待ちます。

さてこちらはちょうどよく行けたんですよね。
群像劇でも、よくTIFFでかかるような雰囲気だったね。
自然と人と都市の営み、みたいな感じ。悪くはないです。
DVDでどうぞ~
返信する

post a comment