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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『八日目の蝉』 (2011) / 日本

2011-04-29 | 邦画(や・ら・わ行)




監督: 成島出
出演: 井上真央 、永作博美 、小池栄子 、森口瑤子 、田中哲司

公式サイトはこちら。


原作読了しています。
もともと読売新聞連載小説でしたが、途中でついていけなくなり、挫折。f^^;
ですのでこれは一気に読みたかったし、そして映画化も非常に興味がありました。
永作さんと真央ちゃんという演技派を取り揃えて来てますので、公開日に早々と行って参りました。


何と言ってもこれは「母」のお話、でしょう。
「母」に「 」がついているのは、「血を分けてないけど母親」を自認しているという意味も含めています。
この話に登場する3人の「母」たち。
普通の気持ちで、と言ったら語弊があるかもしれないけど、
きちんと最初から穏やかな気持ちで向き合うことができなかった「母」たち。
そして社会的には、この「母」たち自体の設定を受け入れることが難しい方もおられるかもしれません。
ただ、このような事件は似たような話もあったような気がするけど、
ニュースで見てしまうと一方的に「あの人が悪い」「いやこっちの方が悪い」と、どちらかのサイドについてしまいがちなんですが、
こうやって事細かに、成り行きを見ていると、どっちがどうと言い切れない。 
原因はお互いさまというところでもあるのでしょう。
この場合、希和子にも秋山夫妻にも、原因の余地は十分あるねえ・・・ と思えてしまう。
罪に問われるのはもちろん誘拐犯ですが、こういうケースの場合のマスコミのほじくり出し方は
必ず相手にも及んで、そしてやはり原因が出てきます。
ですので、「空っぽのがらんどう」と言い放った恵津子にも報いはやってきてしまう。


希和子にとっては薫が全てだった。
そして恵津子にとっても恵理菜はかけがえのないものだった。
しかしながら、恵理菜(=薫)にとっては、やはり希和子の無償の愛が原点だったのだと思う。
それほどまでに幼少期に母親が子に与える影響は大きいものであるし。
恵津子は幼い恵理菜が希和子を忘れられないことと、そして希和子の罪そのものの両方を憎み、
恵理菜に対する愛情が屈折したものになっていってしまう。
ここで恵津子が乗り越えられたなら、恵理菜の家族への想いもまた違ったものになっていったであろうが、
現実はそう綺麗にはいかない。


希和子にとっても、薫は愛すべき男の子ども(と同時に憎むべき愛人の妻の子どもでもある)だから、
本来憎むべき対象のはずなのに、愛情を抱いてしまう設定自体がもう、
赤子を目の前にした女性が本能的に抱く感情を優先させている訳です。
「謝罪は?」と問われた希和子が、自分にはもう叶わない子育てをさせてくれてありがとう、
と秋山夫妻に言いたかった気持ちも、
映画の中で希和子がどれだけ薫を愛していたかを見てしまうと、罪人であってもその心情は察するに余りある。


恵理菜は自分自身が希和子になりたくないという想いと、
そして自分にいろいろなものを見せてくれて、思い出をくれた希和子への思慕とがない交ぜになってしまう。
例え許されない「母子関係」であったとしても、本当の母親じゃなかったとしても、
自分にくれた無償の愛の日々は確実に恵理菜の中に残されてしまっている。
その葛藤の中での恵理菜の決心。
自分は「がらんどう」ではない、そして希和子も「がらんどう」ではなかった、と、
恵理菜は感じていったんだと思いました。


ラストですが、
あの場面で終わっちゃったのは何となく残念ですねー。 
原作のネタを使っていただきたかった。 
原作は実はかなり重要な終わり方をしています。 (ネタバレここから→小豆島のフェリー乗り場で、恵理菜たちが刑期を終えた希和子とすれ違うというものです←ここまで。)
とは言っても尺の問題もあるからしょうがないんでしょうけどね。
薫の言葉に集約されているようにも思いますし、場面としては盛り上がっちゃうから
しょうがないかなー。
でもね、あの場所で・・・という終わり方も悪くはなかったかも。
写真館があれだけ丁寧になってしまった(これはこれでよかったんですが)から、致し方ないかな。
あと、逃避行中のエピソードが2つほどカットされてますが、
余計なところ、モタモタしたところはカットしたので、かなりすっきりしたけど。


ここには3人の「母親」が出てきます。
そして3人とも自分の至らなさ、届かなさを痛感しているし、罪悪感もある。
けどそれでも「母」に対しての想いというのは永遠なんだなと感じました。
ただ単に「母」への単純な想いだけではない、女としての業のようなものも垣間見せられて、
難しい話でしたが、それだけに複雑な心境も時折語るシーンもあってよかった。



永作さん、小池さん、森口さん、真央ちゃん、女性陣がとにかくよかったです。
それぞれに課せられた使命というものをきちんと理解して演じていたように思います。
赤ちゃんは撮影大変だったでしょうね。 と思ったら、
双子ちゃんを使ったそうです。 




★★★★ 4/5点









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28 Comments

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Unknown (KLY)
2011-04-30 23:52:31
確かにどっちがどうのと言いきれませんよね。強いて言うなら不倫して避妊しない旦那がアウトだろっ!ってなもんですが…。
精神的なショックだけじゃなくて体も傷つく可能性があるのは女性だし。

原作は是非読んでみようと思うのですが、NHKで連ドラでやってたそうで、そっちを是非みたいなぁ。時間もたっぷりあるだろうからroseさんの言う最後もキチンと描かれているかもしれないしね。
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なかなか・・・ (ぴくるす)
2011-05-01 01:11:03
 原作を読んだら映画は観ない。
映画を観たら、原作は読まない、ですかね~。
私のバアイ。
いろいろな意味で、その方がストレスがないのです。
もちろん両方みる場合もありますけど。

 この映画化は、終わりって結構重要かも知れません。
ご意見、分かれることでしょう
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KLYさん (rose_chocolat)
2011-05-02 01:27:30
そういう意味じゃ、旦那が最も罪は重たいかもしれないよね。

お時間あったら原作は読んでみてもいいんじゃないかな?
カットされているところも含めて、いろいろ考えて映画化されているのがよくわかります。
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原作の終わりかた (まてぃ)
2011-05-02 01:29:48
こんばんは。
原作のラストはそうなんですか?そのシーンが入っていたらどうなったんだろう、と想像が膨らみます。
映画のスパッとした終わりかたは、あれはあれでありだと思うんだけど、もう少し余韻にひたりたかった感じもあります。
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ぴくるすさん (rose_chocolat)
2011-05-02 01:30:03
どっちか、って前にも仰せでしたもんね。

>この映画化は、終わりって結構重要かも
ですね。
ただこれ、ブロガーさんでは映画のみ鑑賞の方が多いようなので、
私のこの問題提起はあまり必要じゃないのかもしれないですよね。
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まてぃさん (rose_chocolat)
2011-05-02 01:32:51
そうなんです。
なので映画は、え、そこで終わる!? って感じだったんですよね。
ただし2時間半の尺になってしまったので、その関係もあったと思いました。

このシーンなかなかよかっただけにねー。
もしかしたらラストは数パターン用意されてたかもしれません。
ただし映画のラストは、希和子の存在をクローズアップさせていますので、これはこれで悪くはなかったんですけどね。
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最初から最後まで良かった (ナドレック)
2011-05-02 12:50:31
コメントありがとうございました。rose_chocolatさんのコメントを受けて、ちょっとだけブログの本文を修正しました。

>赤子を目の前にした女性が本能的に抱く感情

そういうものがあると、作り手も信じたいのだと思います。
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ナドレックさん (rose_chocolat)
2011-05-02 15:14:48
おお!
それはそれは、大丈夫なんですか? 修正して。
どこ直されたのかしら。

女性は本能的に赤ちゃんが気になる動物なんだそうですね。
今回は複雑な設定だけど、この特徴が生きていました。
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希和子。 (BC)
2011-05-06 22:19:08
rose_chocolatさん、こんばんは。

ホント、男女関係ってどっちがどうとは言いきれないものがありますよね。
ただ、子供にとっての“母親”は
物心ついた頃に傍に居てくれた一人で充分なのかもしれない。
それだけにこういうケースは複雑ですね・・・。

最初、希和子が“謝罪”ではなく“感謝”と言った時は・・・という感じだったけど、
最後まで観るとそれが希和子のありのままの純粋な気持ちだったんだろうなと思えました。
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BC。さん (rose_chocolat)
2011-05-08 08:01:12
>子供にとっての“母親”は
>物心ついた頃に傍に居てくれた一人で充分

幼い時に刷り込まれた記憶って強いんですよね。
まして恵津子が自分を無償で愛してくれなかったという想いを持つ恵理菜にしてみたら、
希和子を忘れられないのは無理もない話だと思いました。

子育ては大変ですし苦労も多いですが、
それでも振り返ると、たくさんの感謝があります。
普通でもこうなんですから、特殊な状況で、二度と子育てができないとわかっていた希和子にとっては、
感謝の一言しかなかったんだと思いました。
ただし裏返すと、秋山夫妻にとってはとどめの一言にしかならない。
複雑な設定でした。
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