【FILMeX_2011】『東京プレイボーイクラブ』 (2011) / 日本

監督：奥田庸介
出演：大森南朋　、光石研　、臼田あさ美　、淵上泰史

第12回東京フィルメックス『東京プレイボーイクラブ』ページはこちら。

公式サイトはこちら。　（2012年2月4日公開）


すごく遅くなってしまいましたがフィルメックスでも勢いのあった作品なんで一応書いておこうかなと。


一言で言ってしまうならば、本作は一貫してバイオレンスということ。
そもそも設定からしてチンピラと喧嘩して、誰かが死んで、追われて破壊して殺して・・・　的な感じなんで、鑑賞前にある程度は想像はしてたんだけど、バイオレンスがどちらかと言うと苦手な私としては何とも感想がつけにくくもあり。
基本的にこういうジャンルは、筋がどうのこうのというよりも、パワーだとか勢いだとかで見せていく作品だと思うんですね。　セオリーもバイオレンスの中に感じ取って下さいと言った方が正確かもしれません。
しかしながらこの作品、とにかく勢いで引っ張る力があるというか、それはそのまま若き奥田監督のフィーリングが反映されていると言っても過言ではなく、彼の感性、ワールドを表現したらこうなりました的な魅力がある。　大森さん扮する勝利はその鏡なんでしょう。　「理屈でどうのこうのじゃない、相手がそう出てくるから俺はこうするまで」という出たとこ勝負な展開はまさにそのもの。

エレカシの「パワー・イン・ザ・ワールド」は、本作のエンディングテーマであると共に映画そのものの柱になっていることは間違いない。　もしかしたら最初にこの曲がありきで本作ができたのかとも思えなくもない。
何度目の太陽だ、何度目の月だ、・・・　　いくつもの月日が流れても何も変わらない、目指すものはだんだん遠ざかっているようにも感じる人生。　そんな日々がじれったくもあり、破壊して別の世界にも行きたくもあり・・・　どこへ流れていくかわからない不安をパワーでやり過ごす登場人物たちの生き様を謳うにはやはりこの曲なのでしょう。




この日は上映前舞台挨拶、そして上映後にQ&Aがありました。

奥田監督は25歳（確かに若いね。）、自主映画で評価されて本作が商業デビューという経歴の持ち主。
舞台挨拶、Q&Aにも参加されましたけど独特の語り口？　が持ち味。　若いということを十分に売りにしてるというか、それが他の俳優さんたちからも愛されているような雰囲気で見ていて面白い（笑）
本作のキャストを見てもわかるように堂々とベテラン勢がご出演ということで、若い監督のワイルドさをベテラン勢も吸収し、そして監督もベテラン達に育てられているようないい関係があるように思う。

そしてハッキリ言って今回フィルメックスに行こうと思ったのは他でもない、生の大森南朋さんが見たかった訳なんで（笑）、そちらも十分（遠目だったけど。）目的を果たしました。
割と役柄としては悪人キャラが多い大森さんですけど、この日は全くの善人で、ぼそっと撮影現場のお話をしたり、若い奥田監督を優しく指導したりと、なんかいいなー的な感じ。
共演の光石さんについて、「光石さんってもう随分長いおつきあいなんですけど、自分の中ではすごいこう何と言うか、ツボなんですよねー」と、仲の良い様子が伺えて、それが映画の中に阿吽の呼吸を醸し出していた要素なんだなと改めて思う。
そしてこの監督の持っているエネルギーがこれからどのように展開されていくのかも大いに楽しみ。　その期待を十分感じさせてくれる作品でした。


★★★★　4/5点