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第2弾:蒼い時のドリームキャッチャー28話

2022-12-16 14:16:45 | 第2弾:蒼い時のドリームキャッチャー


近くのビル内の会社に一日30軒ほど出前をすればするほど直也に笑顔が戻っていきます。出前先の会社員が、たまには食べに来るが直也の評判は良かったようです。
「なんだろうね、直ちゃん来てから前よりも美味しくなったような気がするんだよね」
叔母は、お客からその話をきくたび涙目になって喜んでいました。叔父は直也を春樹のように思い仕込みに力も入り決して味付けを変えることはなかったのですが直也が出前をするようになってから味付けにも拘るようになっていたのです。
「あんた春樹が戻ってきたようだよ。春樹にそっくりじゃないの」
「馬鹿やろ直也だろうが、馬鹿たれ、いいかげんにしろ!二人で決めたろが!」
叔父と叔母のそんな会話を直也は耳にします。笑顔を取り戻した直也の姿に叔母はいつも声をかけ、まるで本当の家族のように見られるほどでした。高校生になって2ヵ月通って3週間の停学処分。この3週間で直也は変わっていくチャンスでした。直也が変わることになるのは真一や叔父の存在と典子の存在があったからこそでした。
「直也、もうじき学校に戻るが周りがお前を見る目は冷たいかもしれないぞ人は皆同じ考えは持っていないからな覚悟して学校へ行け、そして卒業するんだぞ」
直也は叔父に言われる前に自分自身で覚悟を決めていました。学校へ行けば色んな目で見られることを知っています。中学のあの頃のように歪んだ感情は、もうなくなり怒りや憎しみは直也にはなくなりつつありましたが2通の手紙がもとの直也に戻そうとします。停学を終え学校へ行く前日に春樹の机で目の前にあるアルバムを見て懐かしさを感じていたが、その時には直也と春樹だけの写真のフォトスタンドが気になったのです。フォトスタンドを持つと厚みがあることに気がついた直也はフォトスタンドを開けると2通の封筒があったのです。1通は久美子の手紙で久美子が踏み切り事故にあう一週間前の消印。もう1通の手紙には宛名もない封筒で開けてみると春樹が久美子宛に書いた手紙が入っていました。直也は久美子の手紙と春樹の手紙を読みます。
久美子の手紙は「直にぃは元気で仲間君たちといつも一緒で自由に頑張っている。今度春ちゃんと会えるときはあるのかな。お守りをつくったので身に付けてください。直にぃをよろしく守ってね」
春樹の手紙は「週末に直也に会いに行くけど」で止まっていました。
ここにも久美子がいたんだと直也は思います。春樹の手紙が途中で止まっていたのは久美子が事故死したことを知ったからだろうと直也は思います。春樹が事故死したのは久美子が事故死してからだったのです。この時の直也は悲しみに包まれ溢れる涙を流していました。何度もタオルで拭きますが止まりません。ベランダに出て外の風景を見ていると、しばらくして気分も落ち着きますが直也は思います。
「俺と関わると、皆、死んでいく、大切なものを全てを奪っていくんだ」
3週間の間に春樹の都市伝説に直也の存在が大きくなり再び学生たちの中で噂が流れていきます。真一は聞かれても知らないという態度で仲間たちに接していました。直也は、この話は知らない、でも直也は知ってしまった時どうなるのか真一は典子と話し合います。真一は情報屋の学生に対して、この話を直也に知られないようにするよう話し典子はクラスで直也のことを話し合いながら同級生に流れてる噂を最小限にしようと動いていました。しかし尊王寺学園だけではないこと松陰高等学校や崔高等学校の他校の学生達のことを気にしていたのです。直也は前夜に叔父に2通の手紙を見せます。どう考えていいのかわからなかったのです。
「それがどうした直也、過ぎたことだが、お前にとっては違うよな」
「どう考えていいのかわからねぇんだよ、叔父さん」
「お前しだいだと言ったはずだ、答えを出すのはお前自身だからな、答えは今はないかもしれないが、ゆっくり時間をかけて答えを出してみたらどうだ?一つの課題だと思ってな」
「うん、わかったよ」
「そうか明日は学校行くんだろ、お前には仲間がいるはずだ仲間が答えを持っていることもあるし一つのことに拘ると答えは見えないかもな」
「仲間?」
「もう休んだ方がいいぞ、また遅刻すると何かと面倒だからな」
直也は叔父の言うとおり布団に入り眠りにつきますが出前の仕事をしていたときのことです。6月の3週間が過ぎ学校へ行く前日に担任の金森が店に来たのです。ちょうど直也が出前から帰ってきたときクラス担任の金森はカウンターに座りラーメンを食べています。
「なんで金森がいるんだよ」
「おー元気だったか直也、お前変わったな、明日は学校でまってるぞ。ホームルームが楽しみだ、遅刻はしないようにな」
担任の金森は直也に声をかけると、またラーメンを食べはじめます。金森と叔父や叔母は前からの知り合いのような感じで話していました。ラーメンを食べはじめてから金森は直也に声をかけることはありません。食べ終わった金森は代金を支払い直也の顔すら見ずにそのまま店を一言で出て行きました。
「待ってるぞってか。それだけかよ。いつかはしめなきゃな金森の野郎!」
叔父と金森は3週間で電話で連絡をとりあいながら金森は直也の様子を見に来ていたのです。
「いい先生じゃねぇか、なぁ直也もう心配かけるんじゃねぇぞ、なかなかあんな先生はいねぇなぁ」
叔父は直也に声をかけ裏口から仕込みのために出て行きました。いよいよ明日には直也は学校へ行くことになります。
叔母は直也の学生服をクリーニングに出しビニールがかかったまま直也の部屋にかけていました。次の日には直也は学生服に着替え停学中の間で新しく作ったドリームキャッチャーをカバンに縛り付けます。
「いってくるよ!」と直也は叔父と叔母に声をかけ駅へ向かいます。
「ちょっとあんた、直也が、行ってくるよっていってったよ、初めてだよねぇ、ねぇ、あんたさぁ」
「うるせぇなー、ババー、こっちは仕事してんだぞ」
「なにさぁ、あんただって思ってるんでしょ、なに照れちゃってさぁ」
「あぁ、あぁ、うるせぇなー、しゃべる時間があんなら仕事しろ」
「夜のご飯は、すき焼きにしよう、典子ちゃんとこの焼肉の肉、買ってこようかねぇ」
叔母は、よほど嬉しかったらしく店を出て学校へ向かう後ろ姿を見送ります。
「気をつけて行って来るんだよ学校終わったらまっすぐ帰ってきなよ喧嘩なんかするんじゃないよ」
叔父は仕事をしながら心の中では頑張って行ってこいと思っていました。
直也は駅の改札口で定期券を買いホームへ向かいます。電車は来てるが何故か直也はただ呆然として電車には乗らずホームの椅子に座り考えごとをしていました。直也は停学3週間の出来事を思い出しています。しばらく下を向きながら動くことはありませんでしたが直也の目の前に「カツンッカツンッ」と革靴の金具の足音が止まりました。この頃の学生の革靴には殆どの学生が靴の踵のところに金具をつけています。直也は、ゆっくり前を見上げると真一が目の前に後ろ向きで立っていました。
「よーっ、3週間は寂しかったなぁ、お前の叔父さんこえぇなぁ、ところで、お前ここで何やってんの?もう遅刻じゃねぇかよ」
「真一、お前も遅刻じゃねぇの」
「馬鹿言うなよ、お前も一緒だろ」
「おっ新しいの作ったんか?俺もつくっかな」
「勝手に一人で作れよ、俺には関係ねぇから、作ってくれって言うなよ」
「誰が言うか!次の電車で行きますか?大島直也君よ!」
「俺の名前、全部言うなよ!加藤真一君よー」
直也と真一は、そんな会話をしながら昔のように2人で笑いはじめます。周りにいた電車待ちの人達は不思議な顔しながら2人を見ていました。


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