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ポリシーレジェンド2話

2015-05-30 07:07:28 | 小説ポリシーレジェンド

糸で編む


カメレオンのようにって何だ。ワンダーランド?何かの始まりなのか、何かに気付き何かを感じてた、けど、はっきりと理解するには、僕にはまだ、時間がかかりそうだ。あっという間に消えてきった、あの親子は駅の待合室に何をしに来たのだろうか。小粒の雨が降る中、ただ、絵本や週刊誌を見に来ていたのだろうか。そうだ、傘も差さずに僕の前にいた、そして空を見上げたあと、親子は傘を差さずに消えたはずだった。これは僕の妄想だったのか。でも、目の前のベンチの上に絵本は置いてある。絵本を片付けるために、親子が座っていた前のベンチで正座をして後ろ向きに本棚を整理し、そのベンチに座った。まあ、深く考える事もないか。しかし改札口が目の前にある景色に変わり独りでベンチに座っているのは憂鬱なものだった。横になったり、起き上がったり繰り返していた。外の雨は本降りになった、風も強くなった。そんな時、下りの電車が駅に到着し会社員や学生、家族、色々な人達が駅の改札口からゾロゾロと歩いて傘を差し駅を出て行く。
「こんな田舎町に帰ってくる人っているんだな」と思った。
この時の僕は駅の改札口を出る時には新しい生き方が見つけられると信じていた。
「バーガーでも喰うべか」待合室にいるのも暇だった。駅の出入り口の屋根の下で見る景色は、左側に交番があり右側にはハンバーガー店がある。
あの頃の以前にバーガー店から見た景色は左側に駅があり、右側には交番があった、これが当たり前の景色だった。少しずつ変わっていくのかもしれないと少しだけ希望か期待するような思いを感じた。空を見上げれば、まだ雨が止む気配はない。ハンバーガー店を見つめていると店内には黒服の学生達が陣取っていた。
「この時間帯って俺らだべ」
いつも仲間達とバーガーを食べシェイクを飲みながら先輩達から身を守る事ばかり話し合っていたのを思い出していた。
「もしやして?」
目を凝らして店内を見ると、あの横顔、あの髪型、あの癖、俺らの仲間だと思った。そして、いつも僕が座っていた場所には、メガネっ子のユウコ(優子)が座っているのに気がついた。そんな光景を見ていると、足がすくみハンバーガーを食べに行く事を避け、また本棚を後ろにしてベンチに座った。
「俺は何してんだべ」
仲間達や保育園から一緒のユウコに会えば自分の気持ちが変わってしまうと思った。
「暇だ、暇だ、暇だ」そう思っている時だった。
また幻聴、幻覚か妄想が始まったのか?改札口の横、5分前に僕が座っていたベンチには子供の母親らしき女性が座り週刊誌を見ている。そして子供は絵本を開きながら、置きっぱなしたペッチャンコの黒いカバンをチラチラ見て、絵本をベンチに置いてカバンを持ってきた。
待合室にいる、消えたはずの子供から声をかけられた。
「にいちゃん、これなに?」
「あっああ」
子供はカバン付いているアクセサリーが気になっていたようだ。
「大切な、お守りなんだ」
「お守り?変なお守り、羽が付いてる」
僕は少しイラっとしたが、興味津々の子供の姿を見れば、どんなに短気な僕でも子供に怒鳴る事は出来なかった。母親は週刊誌を読むのに熱中していたが、子供の声が聞こえると僕の方を向いた。
「あら、ごめんなさい」と母親は言った。
また誤るだけだった。僕は子供にお母さんの方へ行くよう声をかけたが何かと色々な質問してきた。それに答えていると前方に座る母親は口に手をあてて笑っていた。最後に言われた言葉がある。
「お兄ちゃんは不良なの?」
僕は答える事は出来なかった。
短ラン学生服を着て薄いカバンの装いは皆、不良だからねと教える親もいた。
「ごめんなさい」子供の母親は、また謝るだけだった。
「このお兄ちゃんは不良じゃないからね」
母親は子供に伝えてくれた事で僕はホッとした。週刊誌を見終わると目の前にいた親子は今度は傘を差し駅を後にした。
「なんだべ、幻想け?」
いつも喧嘩から逃れようとしていたり喧嘩に勝つ事を考えていた僕には不思議な出来事だった。この親子との出会いは僕の視界は目を覚まし幅広い視野を与えてくれたのかもしれない。
僕は変れるのかな、カメレオンか。でもな無理だべ。でも変れるのかな、カメレオンか?
少しの希望は、また少し僕の更なる希望となり心の糸は結ばれていくのかもしれない。5センチか10センチか、赤色の糸、オレンジ色の糸、黄色い糸、緑色の糸、紫色の糸、青色の糸、黒色の糸、白色の糸、様々な糸は誰もが持っているものかも。その糸を結び付けていけば一本の糸になり、様々な糸が結びついていけば、それはきっと良き経験として心に刻まれ心の成長になるのだろうか。しかし、その糸を結びつける事が出来ない誰かもいると思うが、人と出会い、人と話し、助け合う事に気づければ、その糸で必ず編む事も出来ると思った。
僕は幼少期の頃は、図鑑を見ながら母のそばに居た。そして・・・
「いろんな色の糸と糸を結んでいくとね・・・」と、毛糸を編む隣にいる母が僕に良く呟いていた。
毛糸で編まれ作られたマフラーやセーターを着る事によって、僕は大人になれるのか。僕が何故そんな事を考えるのか、それは手編みのマフラーやセーターを母が幼い頃から僕に着せた時の暖かさからだった。
「めっちゃ恥ずかしかった、でもポカポカして暖かかったし、ハハハ」
待合室の中また独りになった僕は、カバンの中にある卒業アルバムを取り出した。アルバムの中には教室ごとにクラスメイトの写真があり、この顔は知ってる知らないと思いながらページをめくった。そして最後のページの添え書きを見ていると、女子生徒全員の添え書きとクラスの仲間達6人の添え書きだけだった。しかし、見ていて気になる事があった。そしてもう1つのイニシャルだ。
「いったい誰なんだべ?」
女子ではオバタユウコだけしか名前では覚えていなかった。他の女子生徒はアダ名やお前と読んでいた事に気がついた。僕はクラスメイトの写真あるページを開き見返し、顔と名前を照らし合わせていた。
「イライラするべ、文字が小さすぎる、面倒くせえ!」
アルバムにある写真の下にある名前の文字は、教科書の文字よりも小さく苛立つ僕だった。
そんな時、聞きなれた声。
「遅刻はするし、電車にも間に合わなかったのね」
ふと頭を上げると顔を傘で隠したセーラー服姿の女性の声がした。
「君は誰?」


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